今週のTOKYO HEADLINE
vol.298
(2007.03/19-03/25)
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Photo by Hiroshi Nirei
Showbiz vol.298

ベストアルバム『BEST OF SKA 1998-2007』リリース
ロードムービー『SMILE〜人が人を愛する旅〜』公開記念スペシャル

東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラ“10人のサムライ”の軌跡
ドキュメンタリーを超えた真実のSTORY

SMILE〜人が人を愛する旅〜
3.31 シネセゾン渋谷 他で全国公開!

「元気? どうしてんの? 最近は? 仕事は? 奥さんは? 子供はどう?」
 車庫に引き込まれて行き止まりになった線路の上に腰を下ろし、谷中は問いかける。スクリーンの向こうでは、どんな会話が交わされているのか。なぜ、こんな問いかけをするのか。それより何より、いったい誰に向かって話しかけようとしているのだろうか。そして、どんな気持ちでそれを言っているのか。想像をかき立てる。
 インパクトのあるオープニングで始まる、映画『SMILE〜人が人を愛する旅〜』は、東京スカパラダイスオーケストラが2006年に敢行した半年間のツアーを記録した、ロードムービーだ。欧州ツアーでは、男10人が楽器を抱え、寝台付バスで国境を越え、街から街へと移動する。ツアーが続く約3週間のあいだ、メンバーの毎日はバスとステージの往復だ。移動し、楽器を自分たちで搬入する。熱の入ったリハーサルを経て、沸騰するようなライブを繰り広げると、メンバーはそのままバスに飛び乗って次の街へと移動する。それがずっと続く。果てしない旅だ。深夜静かになったバスのなかでは、眠れないメンバーが、とりとめのない会話を交わす。長い時間、同じバンドにいて、一緒に最高の音楽をプレーしてきたというのに、ポツリポツリと語られる言葉のなかに知らなかった一面を見たりもする。
 タイトル『SMILE』は、作品のテーマでもある。 「2003年のツアーを撮影した前作では、メンバーも僕もハピネスというゴールがあって、そこに向かってただ進んでいるんだと信じていたんです。でも実はそんなゴールはなかった。ハピネスっていうのは毎日のなかで『あ〜、幸せだな』ってふと思うその瞬間だけ現れて、パッと消えてしまうもので、ゴールにはなりえないものだって。じゃあ、ゴールはどこだ、なぜ自分たちは進んでるんだって考えると、結局は、全力で前に進むしかないって気づいて。そういうときにモチベーションになるのが、“スマイル”なんだと思うんです。スマイルを見つけるために進んだり、スマイルしながら進んだり、困難にぶつかったときに立ち戻るところもスマイルで。だから、これは、音楽というのを超えたところで一生懸命生きている人間たちを描いた映画なんです。人間なら誰でも感じていることを、スカパラというミュージシャンという時間で生きている普通の人間たちを通して、伝えたい。一緒に働く人たちだとか、身近にいる人たちとキチンと向き合って生きているか、それを確かめてもらえればいいと思います」(牧野監督)
 監督は撮影のためにスカパラのツアーに完全同行。寝食を共にし、10キロあるカメラを常に背負ってメンバーやメンバーの見る風景をファインダーに収めた。ライブ映像がステージからの視線に限定されているのもそのためだ。インタビューにしても、答えを先導するわけでも誘導するのでもなく、あるがままの状態を取り続けた。「完全に裸だよね」と、谷中も言っている。
 仲間と向き合い、自分自身と向き合い、音楽と向き合う。一生懸命生きる人間の姿が、この作品を見る人をアジテートする。スカパラファンも、例えそうでない人も、大切な何かを確認することができる1本だ。

『SMILE〜人が人を愛する旅〜』
監督:牧野耕一 出演:谷中敦、NARGO、北原雅彦、GAMO、沖祐市、川上つよし、加藤隆志、大森はじめ、茂木欣一、冷牟田竜之 音楽:東京スカパラダイスオーケストラ エイベックス・エンタテインメント配給/1時間29分/3月31日(土)よりシネセゾン渋谷 他にてレイトショー公開/http://www.skapara-movie.com ※劇場窓口にて鑑賞券を購入すると"SMILE"ポストカードをプレゼント中(数量限定)。※公開中にメンバーによる舞台挨拶やトークショーを予定
ステージは聖域。
聞こえる音も流れる時間も空気も違う。
牧野耕一 監督


 この作品のキーとなる瞬間は、ツアーが半分終わったぐらいのところでやってきました。場所はスイス。冒頭で谷中さんが問いかけるシーンを撮ったところです。あの朝、あの街に着いたときから何かがあると感じていました。2人で線路に沿って歩いていたら、記憶の話になって、急に谷中さんが黙り込んだんです。しばらく沈黙のあと、急に「元気?」って。「キタッ!」っていう瞬間でした。なぜこんなことを言い出すのかと思う一方で、「これを言える限り正常だ」と感じました。それに、最近この言葉を自分も言ってない、聞くこともないなって。その瞬間から、僕はラストに向けて走るだけでした。

 音楽、お客さん、周囲の人、そして自分。メンバーに“真剣に向き合うこと”について聞いていくなかで見えてきたのは、音楽を超えちゃって、一生懸命に生きている人間たちの姿でした。スカパラはスゴい存在だけれど、考えていることは毎日会社や学校に行ってる人たちとあまり変わらない。でも、スゴい。だからこの映画は、スカパラファン“だけ”を楽しませるもので終わっていないんだと思いますね。

 とはいえ、ファンの人も楽しめるように僕なりのサービスもしたつもりで、ライブシーンはバンドの視線を体感してもらえるかなと思います。ステージって聖域で、聞こえる音も流れる時間も空気も違う。それが映ってくれればと思って撮影したので。他にも……メンバーの裸とか(笑)。それを見てというわけではないですが、まあそれでもいいんだけど、見てくれた人が、スマイルで家路につけたり、親や友達、好きな人に会いに行きたくなってくれたとしたら、最高だと思います。

【プロフィル】人と向き合うことに命を懸ける、“戦う映像作家”。日本大学芸術学部在学中から映像業界を志し、PVやテレビドラマ、ドキュメンタリーなど数多くの作品に携わる。代表作品に、『CATCH THE RAINBOW』、『GARAGE on the PLANET! 〜2002 ガレッジセール アムステルダムへゆく〜』、『MACHIGAINAI』(AIドキュメンタリー作品)などがある。1973年生まれ。岐阜県出身。


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