「元気? どうしてんの? 最近は? 仕事は? 奥さんは? 子供はどう?」 車庫に引き込まれて行き止まりになった線路の上に腰を下ろし、谷中は問いかける。スクリーンの向こうでは、どんな会話が交わされているのか。なぜ、こんな問いかけをするのか。それより何より、いったい誰に向かって話しかけようとしているのだろうか。そして、どんな気持ちでそれを言っているのか。想像をかき立てる。 インパクトのあるオープニングで始まる、映画『SMILE〜人が人を愛する旅〜』は、東京スカパラダイスオーケストラが2006年に敢行した半年間のツアーを記録した、ロードムービーだ。欧州ツアーでは、男10人が楽器を抱え、寝台付バスで国境を越え、街から街へと移動する。ツアーが続く約3週間のあいだ、メンバーの毎日はバスとステージの往復だ。移動し、楽器を自分たちで搬入する。熱の入ったリハーサルを経て、沸騰するようなライブを繰り広げると、メンバーはそのままバスに飛び乗って次の街へと移動する。それがずっと続く。果てしない旅だ。深夜静かになったバスのなかでは、眠れないメンバーが、とりとめのない会話を交わす。長い時間、同じバンドにいて、一緒に最高の音楽をプレーしてきたというのに、ポツリポツリと語られる言葉のなかに知らなかった一面を見たりもする。 タイトル『SMILE』は、作品のテーマでもある。 「2003年のツアーを撮影した前作では、メンバーも僕もハピネスというゴールがあって、そこに向かってただ進んでいるんだと信じていたんです。でも実はそんなゴールはなかった。ハピネスっていうのは毎日のなかで『あ〜、幸せだな』ってふと思うその瞬間だけ現れて、パッと消えてしまうもので、ゴールにはなりえないものだって。じゃあ、ゴールはどこだ、なぜ自分たちは進んでるんだって考えると、結局は、全力で前に進むしかないって気づいて。そういうときにモチベーションになるのが、“スマイル”なんだと思うんです。スマイルを見つけるために進んだり、スマイルしながら進んだり、困難にぶつかったときに立ち戻るところもスマイルで。だから、これは、音楽というのを超えたところで一生懸命生きている人間たちを描いた映画なんです。人間なら誰でも感じていることを、スカパラというミュージシャンという時間で生きている普通の人間たちを通して、伝えたい。一緒に働く人たちだとか、身近にいる人たちとキチンと向き合って生きているか、それを確かめてもらえればいいと思います」(牧野監督) 監督は撮影のためにスカパラのツアーに完全同行。寝食を共にし、10キロあるカメラを常に背負ってメンバーやメンバーの見る風景をファインダーに収めた。ライブ映像がステージからの視線に限定されているのもそのためだ。インタビューにしても、答えを先導するわけでも誘導するのでもなく、あるがままの状態を取り続けた。「完全に裸だよね」と、谷中も言っている。 仲間と向き合い、自分自身と向き合い、音楽と向き合う。一生懸命生きる人間の姿が、この作品を見る人をアジテートする。スカパラファンも、例えそうでない人も、大切な何かを確認することができる1本だ。