
vol.305
INTERVIEW
ソロ10周年のreborn、そして新しいこだわり
河村隆一が歌う、ありのまま。
河村隆一が、再生(reborn)宣言だ。ソロ活動10周年を迎えた今年、シンガーとして音楽家として、“生”と“リアル”にこだわって、新しいスタートを切る。「捨てられるものは捨てちゃって、変わる場所は変わっちゃっていいんだよ」。まもなく不惑を迎えるシンガーに聞いた。
ソロ10周年を迎え、シンガー、河村隆一が動き出した。先日、ソロシングル『誰の為でもなく君に…』をリリース。未来や永遠を信じられるこのバラードで、河村は、毎日の暮らしのなかにある暖かさや優しさを飾らない言葉で綴っている。
「幸せなら幸せなまま、なんの変哲もない言葉を選んで書きたいなと思ったんです。なぜかっていうと…、これはあくまで後付けなんだけれど、10〜20代前半ぐらいまでは、体制とか、大人たちとか社会とかっていう仮想の敵があって、そういう存在から自分が守りたい君がいるみたいに、ネガティブな要素をどこかに置くことによってポジティブな要素を輝かせる詞が多かったんですよ。でも、年を経るに従って、この街は醜いとか欲の塊って歌っても、自分もその社会を構成している一部であって、想像していた敵はSFやアニメのなかにはいるけど現実にはいないことも分かる。そうすると、汚い詞を書けなくなったというか……。これからそういう話を書くことがあったとしても、その時は夢の話とか、リアリティーと分けるようになるんじゃないかな。そうしないと居心地が悪くなっちゃったんですよ」
「頭の中で現実逃避し、リアリティーを作るのを避ける」ことができなくなったのは、「循環」を考えるようになったからだという。
「全部自分に回ってくる、ってことですよね。僕は子供のころからサーフィンをしているんだけど、大人になって多少お金が使えるようになって(笑)、きれいな海を見たら、今まで入っていた海がいかに汚れているか分かった。磨けばきれいになる家の風呂とは違って、どんなにゴミ拾いをしても海はきれいにならないことにも気づいて、ようやくこの原因は自分たちにあることが理解できたんです。なぜこんな話をするかというと、僕ら音楽家は豊かな文化の上にあるってこと。みんなが不幸せで食べるものにも困っているような社会だったら、ボランティアはできるかもしれないけれど、僕らがやっているような音楽は成り立たない。杞憂だよって言われちゃうかもしれないけれど、“君と眺めている青い空”だとか“青い海”とかいう歌詞があるとする。歌、とくにいい歌なら100年ぐらいは残っていくわけで、その時に“あの時代には海で泳いだんですって?”なんて言われちゃう未来だったとしたら、自分たちの音楽にはもうポピュラリティーがないことになる。そういう意味でも、自分たちが守らなければいけないことっていっぱいあるし、音楽家としてできることもあると思うんです。僕はラブソングを作る。あくまでも後付けで、自分が誰かを好きになったからラブソングを歌っただけなんだけれども、ラブソングなら聞いてくれる人たちが、恋をしたいなとか、誰かを好きでいたいなとか、友情も含めての大きな愛に触れていられると思うんです。そうすると、わざわざ人を妬む時間とか人を傷つけようと想像する時間は減っていくんじゃないかなって思うんだよね」
飾らない、ありのまま、そして「循環」は、河村の新しい攻め。しなやかな強さを持った穏やかなアプローチ。
「確かに、20代前半ぐらいまで、持っていた勢いみたいなものは、良くも悪くもなくなったと思うよ。でもなんか、そういうのはなくなっていいかなって気もしていて……。それだったら、思い切って正々堂々なくしちゃえ、みたいなところもある。変わらないでいてほしいっていう人たちはいると思うし、自分自身もそこにしがみついていたいような、いたくないような複雑な心境だけれど、年を重ねていくってことをポジティブに感じていくことが必要かな、と思ってます。今から10年経つと僕は47になる。その時にカッコいい大人の男の枯れていく姿というか、色気を持っていたいから。生まれ変わるつもりで、デヴィット・ボウイでもミック・ジャガーでもいいけど、カッコいいシンガーのあり方を考えていけば、やり方や行きたい場所って見つかるんじゃないかと思うんです。今回のシングルでも、声の響く場所を深くしてみたり、ドラムやピアノやベースも同時に一発録りしたり、実験もした。楽器が演奏できなくても音楽ができあがってしまうそういう時代だからこそ、あえて自分がプレーできること、自分がちゃんと歌えるものを届けたいと思ったからね。そしたら、想像できなかったことがいろいろ起きて、なんか、“くる”作品になったんです。これから10年間で、どのくらいこだわれるかなって思うけど、人間の根っこになるもの、情熱とか熱とか、深層心理でもいいけど、感じてるものすべてが表に出てくる曲を作っていけば、河村隆一のソロの世界を作っていけるんじゃないかなって思ってます」
6月にはニューアルバム『ORANGE』をリリース。全国ツアーもスタートする。新しい河村隆一が次々に飛び出していく。

(本紙・酒井紫野)
 ■ALBUM 『ORANGE』コロムビア 6月20日(水)発売 3150円(税込)
■RK 10th Anniversary Action #2 Tour 2007 6月14日スタート
関東での公演は、6/14(木) 和光市サンアゼリア(埼玉)、6/24(日) 武蔵村山市民会館 (東京)、 7/8(日)三郷市文化会館(埼玉)、7/24(火) 北とぴあ・さくらホール(東京) 、8/6(月) 東京 厚生年金会館 (東京)。チケット料金6300円(税込)。問い合わせはBACKSTAGE PROJECT 03-3357-8080
■初めての絵本『空を見上げたブルー』(ランダムハウス講談社、1500円・税込)も発売中
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