
vol.305
「イラク撤退法案」にブッシュ大統領拒否権
来年3月までにイラク駐留米軍を撤退させるとした米民主党の法案に対し、ブッシュ大統領は1日、「撤退期限の設定は敗北の日を決めるものだ」として拒否権を行使した。民主党側は「イラク戦争の方向を変える取り組みを拒否権で止められると思ったら間違いだ」(リード上院院内総務)と対決姿勢を崩していない。
民主党は、イラク戦争での組織的な戦闘終結をブッシュ大統領が米艦上で宣言してから4周年になるこの日を選んで法案を大統領のもとに送った。イラクでの米兵戦死者は4月には今年の月間最悪の104人に達した。
拒否権行使後、ブッシュ大統領はホワイトハウスで声明を発表し、「政治家の見解を指揮官の判断にすりかえる法案だ」と批判。撤退の日取りを敵に教えるのはナンセンス▽撤退条件は指揮官にとって実現不可能だ−として撤退期限の設定を拒む決意を改めて示した。
今回の拒否権行使によって、ブッシュ政権が承認を求めてきたイラクなどでの戦費1240億ドルも当分、執行できなくなってしまった。大統領は声明で「わが軍は装備の新規調達や補修を手控えざるを得ない」と語り、責任は民主党にあるとの姿勢を強調した。
民主党もリード上院院内総務、ペロシ下院議長が拒否権行使を非難する談話を発表。ペロシ議長は「大統領は白地小切手をお望みのようだが、下院に求めるのはお門違い」と語った。事態打開に向けた協力について「目下のところ、大統領と私たちの隔たりはあまりに大きい」と述べた。
ブッシュ米大統領は30日行われたドイツのメルケル首相とバローゾ欧州委員長との共同記者会見で、「民主党議員の多くはできるだけ早急にイラク戦費を調達する必要があることを承知していると思う」と述べ、合意に達することは可能との楽観的な見方を示していた。
ブッシュ政権の拒否権行使は、胚性幹細胞(ES細胞)の研究推進法案の拒絶に続いて2件目。