
vol.307
INTERVIEW
『チョコレート』『ネバー・ランド』…感動ドラマの名監督が、超人気コメディー俳優とタッグを組んだ!!
『主人公は僕だった』監督
マーク・フォースター
喜劇か悲劇か…人生だって最後までは分からない。
「最初にこの原案を知ったとき、本当にバカバカしいコメディー映画になりすぎても、逆に、物語が深刻になりすぎてもいけない、と感じた。コメディーとトラジディーのバランスをとらないといけなかったんだ」
『チョコレート』ではハル・ベリーにアカデミー賞主演女優賞をもたらし、ジョニー・デップ主演の『ネバーランド』も同賞7部門ノミネート。マーク・フォースターの名は、感動のヒューマンドラマを生み出す名監督として知られている。そんなフォースター監督が、なんと最新作ではコメディー俳優として大人気のウィル・フェレルを主人公に起用。ある日自分が、小説家が書いている作品の主人公だったと気づくという“世にも数奇な”物語だ。しかも、どうやら彼の“物語”を書いている作家は、主人公である彼を物語の最後で死なせてしまうつもりらしく…。
「とにかく、この物語はハロルド・クリックという主人公にかかっていたと言える。観客が彼に感情移入できれば、彼に生きていてほしいという気持ちになってくれるからね。そうすれば彼もきっとハッピーだろうし(笑)。今回、ウィル・フェレルをキャスティングした理由もそこにあるんだよ。彼はとても好かれる人物だし、ごく普通の人間で、人柄も優しい。そういう優しさが伝われば、観客もきっとハロルドに感情移入してくれると思った。いうなれば、ハロルドは、これまでの人生を“生きて”いない。“死”の直前に、本当の恋をし、人生を楽しむことを知る。そこに感動するんだ」
アメリカでは超人気コメディー俳優のウィル。『ズーランダー』や『プロデューサーズ』の怪演や『奥さまは魔女』などの明るいラブコメで知られる彼だが、今回は冒頭から雰囲気が違う。
「そう、彼が演じるハロルドは、自分のアパートにいるときでさえ何かを計算しているような男なんだ。ウィル本人はとっても謙虚で、有名俳優のエゴは全く無い人物だよ。ハロルドは、最初のうちは非人間的で、ただ仕事をこなしているだけで、とても孤独な男。死に直面して、ようやく人生に目覚めるんだ。歯を磨く回数を数えるのをやめたり、友人の突飛な夢に感激したり(笑)。その変化が感動的になるよう、ウィルとは話し合った」
ウィルは、コミカルな役でないことで苦労していた様子は?
「いや、そんなことは全くなかったよ。彼としても、いつもとは違う側面を見せたい、というつもりでいたしね。でも彼は、抑えた演技の中でも、ちゃんとコミカルさを出しているよ(笑)」
相手役は『セクレタリー』でブレイクしたマギー・ギレンホール。
「彼女は本当に家族思いだね。ご両親や弟さん(ご存じ、ジェイク・ギレンホール)、パートナーのことをいつも大事にしてた。アナを演じるにあたって、僕が彼女にお願いしたのは、実際にケーキ作りをしておいてほしい、ということ。彼女はコロンビア大学出身でとても知性派なのは知っているけど、やっぱり、ちゃんと体が作り方を覚えていないと、アナの雰囲気が出ないと思ったからね。彼女は実際にそうしてくれて、たくさんクッキーを焼いて現場でも振る舞っていたよ。すごくおいしかったって。…僕は食べてないんだけど(笑)」
本作は、ほとんど無名の新人脚本家ザック・ヘルムのユニークなアイデアからスタートしている。
「彼は最初、誰かがナレーションしている声が聞こえる男の話を書きたかったらしい。でもそれだけじゃドラマにならないからね(笑)。そこで、主人公がその声に、死ぬと予言されたことにした。もしかしたら彼も、自分の人生が悲劇なのか喜劇なのか…なんて考えてたのかも(笑)」
ヒューマンドラマの名手として知られる監督の興味を引いた理由は。
「この物語で一番興味を持ったのは、私たちの運命はすでに定められていて変えられないものなのか、もしくは我々が書き直せるものなのか、という部分。実は僕もときどき、そういうことを考えたことがあったから(笑)」
一見コメディーなのかシリアスな結末で終わるドラマなのかが、読み取れない構成が見事。
「でも、ウチの家族は“これは本当にコメディーなの? それとも違うの!?”って批判的だったよ(笑)。いつもそうなんだ。『ネバーランド』のときなんて、母は音楽がうるさすぎる、兄は照明が明るすぎ、って(笑)。ま、家族だからね」
自分の人生が、他の存在によって文字通り“書かれた”ものであることを知ったハロルド。彼は小説の内容=自分の運命を変えようとするが…。監督自身は、運命は変えられないと思う?
「僕はいろんな意味で人生は自分自身で書きなおせるものだと思うよ(笑)!」
ウィルの運命は、そしてこの映画が悲劇なのか、喜劇なのかは最後まで分からない。監督は茶目っ気たっぷりに、こう言って笑う。
「人生だってそうでしょ(笑)?」

(本紙・秋吉布由子)