
vol.308
INTERVIEW
戦争を描いた舞台「ノー・マンズ・ランド」で国連軍を熱演!
浅野温子
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下のノー・マンズ・ランド(中間地帯)で起こったドラマを描いた舞台「ノー・マンズ・ランド」。ボスニア兵チキ(坂本昌行)とセルビア兵ニノ(内田滋)、そして体の下にある地雷で動くことができないボスニア兵ツェラ(市川しんぺー)。3人の兵士が一発触発のピリピリとした緊張感の中で対峙している。そこに、国連軍(浅野温子)が仲介に入るのだが…。今回はノー・マンズ・ランドで国連軍を演じている浅野温子さんにインタビューした。
戦争ドラマの緊張感の中に隠れた笑いも
時代小説家の山手樹一郎が描いた作品にハマッているという浅野温子。以前から持っていた長編時代全集を読み直している。あまりにおもしろいことが、舞台の邪魔をすることも……。
「10年以上前に買った山手樹一郎の作品集を、もう一度読み直しています。改めてこの人はスゴイんだということを思い直しているところです。おもしろいので、とても読みやすい。でもそれだと、台本を覚えられないんですよ。台本を読むか、山手樹一郎を読むか。私の中では、すごい戦いが起こっています」(笑)
そんな浅野温子が、戦争をテーマにした舞台「ノー・マンズ・ランド」で国連軍を演じている。
何のために戦争をしているの?「ノー・マンズ・ランド」が教える疑問
2001年に公開され、世界中で熱烈に支持された映画「ノー・マンズ・ランド」。好きな映画のため、出演のオファーが来たときは、わくわくしたという。
「先に映画を見ていて、すでに好きな作品になっていました。スズカツ(鈴木勝秀)さんとは、去年のダム・ショーでも一緒でしたし、快く引き受けました」
戦争のむなしさや怖さを表現した「ノー・マンズ・ランド」。誰が悪いのかを追求している作品ではない。なぜ戦争をしているのかが分からないまま戦っている兵士を描くことで、戦争自体を否定している。
「何のために戦争をしているんだろう。みんな助かりたい。ノー・マンズ・ランドに取り残された3人の会話です。でも、作品の最後は…。という感じになっています。映画を見終わって、何だか納得いかないと感じました。その納得いかない雰囲気が観客に伝わればいいと思っています。納得いかないと思ったり、感じたりすることが大事なことかな。国連軍が仲介をしようと介入してくるのですが、何もできないんです。その、もどかしさはありますね。戦争の拡大を避けるという、理念や言葉で介入するのですが、実は2つの民族同士は仲がよかったりします。恋人や先祖が敵側の民族だったり。個人同士は仲がいい。だから難しいんですよね」
好きなことをさせてくれる演出 鈴木勝秀さんのコダワリが
舞台は舞台のよさがある。映像と違って、目の前で生身の人が演じている。「ノー・マンズ・ランド」では、生の人間が演じていることを大切にしている。
「映画との一番の違いは私が出ていること。それよりもスズカツさんが脚本・演出を担当していることですね。映画の脚本家や監督とは違う、スズカツさんのメッセージも数多く入っています。また、生々しいという点でも、舞台と映画は大きく違います。市川しんぺーさん(ツェラ役)は地雷が身体の下に埋まっているという役なので、最初から最後まで転がっています。その息遣いとか心拍数をものすごく大事にされています。彼が生きているという息吹をお客さんに感じてもらいたい。それで緊迫感が生まれるんです」
鈴木勝秀さんの演出はおもしろい。好きな動きをやらせることで、芝居が毎日進化していく。
「スズカツさんは、役者に好きなことをやらせて、その中で自分の好きなことだけを選んでいく。なので、最終的にスズカツさんの好きな作品になるんです。キライというような否定的なことは言いませんが、主旨と違うからやめて、と言うことはあります。あとは、自分なりに毎日進化させてくれとも言いますね。舞台が始まっても同じです。スズカツさんは見に来れる日は全部見に来ます。舞台ごとにダメだしがあるんです。なので、最終日まで毎日進化するんです」
ユーモラスもちょっと折り込んで真面目にしないといけない緊張感の中の笑い
戦争をテーマにすると暗く重くなりがち。映画ではユーモラスな部分もあって、最後まで一気に見せてくれた。そのユーモラスも舞台では重要な部分となっている。
「本読みに始めて参加したとき、3人の会話を聞いていて、思わず"プッ"と笑っちゃったんですよ。みんな真剣なので、怒られるかなと思ったんですけど。劇場にいらっしゃる方って笑っちゃいけないと思うんだろうな。本当に"プッ"と吹き出す感じなんですけどね。緊迫感があるけど、笑ってしまう。そう、お葬式のときに足がしびれて転んだ人を見た感じ。真面目にしないとと思うので、みんなが笑いをガマンしてしまう。そういう感じが一番近いですね。みんなが生真面目にやっているのに、どうしても笑っちゃう。いわゆる真剣でシリアスな芝居です。だから、演じているほうは大変なんですよ。緊迫感を作らないといけないから。シリアスな芝居って、煙たがられる傾向があるんですが、「ノー・マンズ・ランド」は違いますね。緊迫感のある中で、一気に見れてしまう舞台だと思うんですよ。戦争モノとはジャンルが違う、新しいジャンルの作品として見ていただければうれしいです」
(本紙・南謙治)
| 浅野温子 高校在学中に「文子とはつ」(TBS)でデビュー。以降、「あぶない刑事」シリーズ(NTV)をはじめ数多くのテレビドラマや映画、舞台で活躍している。2003年に伊勢神宮で始まった語り舞台「日本神話への誘い」は、全国の神社で公演を続けている。今回の「ノー・マンズ・ランド」は、2006年「ダム・ショー」と同じ鈴木勝秀作品となる。
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| 『ノー・マンズ・ランド』
【作】ダニス・タノヴィッチ【演出・上演台本】鈴木勝秀【出演】坂本昌行、内田滋、市川しんぺー ・ 浅野温子【劇場】東京グローブ座【上演期間】6月1〜19日【料金】S席8500円、A席7500円、B席5500円【問い合わせ先】チケットスペース03-3234-9999 http://ints.co.jp
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