
vol.308
INTERVIEW
ニューシングル「雨夜の月に」で愛のもどかしさを歌う
工藤静香
数々の楽曲でいろいろな愛のかたちを歌ってきた工藤静香が、今年の第1弾シングルとなる「雨夜の月に」をリリースした。この曲で歌うのは「会いたくても、会えない」という恋愛にはつきものの状況。工藤静香ならではの繊細な恋愛世界が広がる。
――ソロシングル40枚目、そしてソロ20周年第1弾となる「雨夜の月に」がリリースされました。
工藤:ドラマのお話(フジテレビ系で放送中のドラマ「麗わしき鬼」の主題歌になっている)を頂いて書き下ろしました。内容はとにかくドロドロしてるって聞いて、曲を400曲ぐらい集めたんです。
――とても多く感じるんですが…。
工藤:人って、「もっと!もっと!」って思うじゃないですか? そのくらいあると、げんなりしつつもやる気が出るんじゃないかなと思います。聞く作業は大変になるけど、いい曲っていうのは引き立ってくるものだし。それで、今回に関しては、ドラマティックなラインで、ミディアムなテンポのものをチョイスしていって、最終的にこの曲になりました。
――工藤さんが作詞されていますね。
工藤:ドラマのテーマに寄り添いすぎると、怖い言葉ばかりになっちゃうから、救いになる存在になればいいなと思って、会いたくても会えないという、恋愛にはつきもののもどかしい気持ちを強く書こうと思いました。そしたら、「雨夜の月に」という歌詞も浮かんできて…
――工藤さんにとって、もどかしい気持ち=雨夜の月、なんですか?
工藤:雨の日に月は見えない。星でも良かったんですけれど、私は月のほうが好きだから。たまたまですけど、これを書いている途中、高速道路ですごく激しく雨が降った時があって。夜だったんですけど、紫っぽい光の中で、ヘッドライトに照らされた雨が銀色に見えて。激しい雨、ちょっと怒っている雨は銀色に見えるんだなあって。それがそのまま歌詞になっています。
――「抱きしめていたい」「キスして」「包みたい」。ストレートですね。
工藤:もっとストレートに気持ちを出してというリクエストがあったので。最近、ストレートに感情を出す詞を書いてなかったんで、え〜!って思ったけど、「相手にどうしてください!っていう歌詞はこれ以上無理」っていうラインぎりぎりで書いたんです。これでもくどいって思って出したところがあるけれど、今見ると良かったって思います。
――ストレートに感情を出すというのは、工藤さんの世界には合わない?
工藤:そんなことはないですよ。20歳過ぎ、20代半ばぐらいは、もっとストレートで、ガツンという言葉を書いていたりしたけど、それはアップテンポの曲だったんです。今、ストレートな言葉になれないのは、自分に合ったアップテンポの曲とあまり出会えていないからじゃないかな、と思います。年齢もあると思うんですけど、なかなか出会えないんですよ。自分に合っているのであれば、どんな曲でも、アップテンポだとかバラードだとか、ジャンルも関係なく、この歌おもしろいなと興味を持てる曲なら歌いたいと思ってるんですけどね。自分の気持ちが揺れる感じが一番楽しいので。
――今だから聞けるアップテンポの曲、あってもいいですよね。
工藤:そうですね。でも私、昔の曲もどんどん歌いますよ。振り返ってみても、歌いたくない曲ってなくて、今でも全然歌える。ただ、これを歌うなら他の曲を歌いたいってものもあるけど……「MUGO・ん…色っぽい」とか(笑)。
――歌いすぎて?(笑)話を戻すと、カップリングの「存在」も名曲です。
工藤:この曲は、じわじわ来たんです。松井五郎さんに作詞をお願いしました。松井さんとは少し前のアルバムでも一緒にお仕事をしたんですけど、懐かしいのに古臭くない、「存在」というタイトルもありそうでないし。最初、男女の曲かなと思っていたんですけれど、レコーディング中に、松井さんが親子の愛、母と子としても歌える歌だって話してくれたんです。ただ、母の視線でものごとを考えたり歌ったりすると、自然と強くなっちゃって。それは、ちょっと違うかなあと思って、歌い方は変えました。今は、母の気持ちで聞いたりもしますね。
――いい曲も集まってくる状況があって、お子さんも大きくなられてきたし、そろそろ歌手の活動を増やしたりってことは考えていらっしゃいますか?
工藤:まだしばらくは自分のペースに合わせて。自分の一日を考えてみると、あとどのくらい余裕があるんだろうって思うことが多いんです。でも、やろうと思えばできなくないし、いくらパツパツなスケジュールのなかでやったとしても苦しさとかを出さずにできちゃうと思います。こういう業界で20年以上やってきたなかで、何でも器用に乗り越える術は身についているから。でも、必ずどこかにしわ寄せは来ちゃうものだから、今はちょっと物足りない感じ? 腹八分目でいいのかなって思ってますね。

(本紙・酒井紫野)
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