
vol.309
INTERVIEW
シングル『リンダ リンダ』&7月アルバムリリース!
うたう 夏木マリ
夏木マリが『リンダ リンダ』を唄っている。誰もが知っているあのブルーハーツの名曲のカバーだ。斎藤ノブを筆頭とした錚々たるミュージシャンと結成した“野獣とマリ”を意味するバンド、ジビエ・ド・マリで、粋な大人のバンドサウンドを聴かせている。
愛の歌が多いの。今年は『愛のフランス人宣言』をしてるから
六本木ヒルズにほど近い閑静な住宅街。瀟洒なマンションにある彼女のオフィスを訪ねると、ベストセラーとなった著書『カッコイイ女』そのものの、クールで大らかな夏木マリが迎えてくれた。最近お気に入りというエンポリオ・アルマーニのTシャツには、巨大な唇がプリントしてある。ローリング・ストーンズ風のモチーフに「ちょっとロックな感じでいいんじゃないと思って」と、大きく笑う。音楽も演劇も、今が一番楽しいという。シングル『リンダ リンダ』は5月16日にリリースされた。
「ニューリリースにあたり、(斎藤)ノブさんを含めみんなで40曲以上聞いたんですよ。でも、どれもぴんとくるものがなくて、『リンダ リンダ』みたいな曲があればいいねって話になって、じゃあそれを唄っちゃおうって。私もノブさんも決めるのが早いんですよ。カップリングの『ワン・ナイト・オンリー』も、ちょうどレコーディングの最中に『ドリームガールズ』の試写に行って“あっ、この歌があった”って。ひらめいたの。『リンダ リンダ』は前からいい曲だと思っていたけど、80年代の私は演劇に熱狂的になっていて、私の生活からちょっと音楽が抜けていて、改めて『リンダ リンダ』を聞いたらすごく新鮮だった。だからカバーといえばカバーなんだけど私にとっては新曲と同じで、それでシングルにしたって感じですね」
詞がいい、とマリさんは言う。「優しい歌ですよね」と。
「7月18日にはニューアルバムが出るんだけど、愛の歌を書きました。詞を書くときに、これまでの私の中にはあまりなかったシンプルな愛の言葉を選んで、私にとってそれがすごく新鮮でした。ジビエ・ド・マリというバンド自体は、今の東京にジャニス・ジョップリンがいたら?っていうコンセプトでスタートしました。イエローブルースを唄っていこうと思っているけど、ジャニスの歌も全部はがしてみるとシンプルな愛の歌なんですね。そういう意味で今回ジャニスの詞に影響されてることはあるかもしれない。今までは『印象派』の舞台でも割と硬質な言葉を選んでいたけど、このごろね、愛の歌を書く自分が新鮮なの」
そこに至る気持ちの変化を聞くと、なんと今年は「愛のフランス人宣言をしてる(笑)」ということだった。
「今まではワーカホリックみたいな生活だったのね。でも、短い人生折り返し点にきて、元気なおばあちゃんでいくには、なんか私ってラブストーリーが足りなくない?って急に思っちゃって(笑)。フランス人って、どんなときも愛が一番のプライオリティーでは? そういう変化が自分の中にも起きたので、愛の歌も唄いたくなったし、書きたくなったんじゃないかな。今まで2冊本を出してるけど、恋愛のページが極端に少なかったから。本当は忙しいほど恋愛が充実するはずなんだけど、私がそっちに向いてなかった。今ね、自分をマインドコントロールしてるところなんですよ。でも、居心地はいいみたい。オンとオフのいい感じですね」
キャリアを積み重ねたからこそ、手に入れられた軽やかさがある。「やりたいように生きてきたんだけど、この頃になってやっと何をしたいかが分かってきた感じ」とマリさんは言う。
「友達は“カメさん、カメさん”って笑うんですよ。すべてのことに気付くのが遅いって。仕事にしても、誘われるままに演劇に参加したりして、自分が本当に何をやりたいか分からないまま、現場で覚えてきた。で、いつもちょっと先に進み過ぎたり、遅れちゃったりして、世の中のテンポと合ってなかったんですね。でも、いつのまにか世の中を意識しなくなって、93年にセルフプロデュースの『印象派』を始めたんです。歌にしても、少女のころにジャニス・ジョップリンってカッコいいなと思っていたのがバンドの応援で唄えるようにもなって、またひとつ夢が叶ってる状況は幸せなことだと思います」
7月18日のアルバムリリースに続き、東京では7月31日に渋谷O-EASTでライブが行われる。
「私のライブは絶対に来なくちゃ損ですよ。ノブさんはじめ、メンバーみんなすごいから」。そのバンド、ジビエ・ド・マリに関しては、「おじいちゃんおばあちゃんになっても、今日はちょっとサロンで唄っちゃう? みたいなシチュエーションが私たちの夢で、とにかく10年は続けたいねってノブさんと話してる」ということだ。
「昔(矢沢)永ちゃんが“50になるまで唄う”って言って今も唄い続けてるけど、私は“50から唄う”でもいいでしょ? そういう意味では自分たちが納得する音楽をやりたいし、音が残っていけばいいなと思います。ライブは、今日はこのクオリティーで切り取ってという意識をノブさんに教わったことはすごい収穫で、それからは、これが今の私のジビエ・ド・マリ、これが私の『リンダ リンダ』っていう楽しみ方ができるようになった。それが自分にとって一番自然だから、すてきでしょ?」
ところで気になる“フランス人宣言”だが…。
「サルトルとボーボワールみたいな関係も大人ですね。理解し合える共通言語を持って、結婚しなくても一緒に暮らすという型もすてきです」
(取材・文/幸野敦子)
New Single『リンダ リンダ』(発売中)
【CD+DVD】1890円(税込)AVCD-31029/B 【CD】1050円(税込)AVCD-31030 ※アルバムは7月18日発売
|