今週のTOKYO HEADLINE
vol.310
(2007.06/11-06/17)
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撮影/加藤大毅 スタイリスト/田崎健太郎 ヘアメイク/石田章一
MOVIE vol.310

INTERVIEW
超話題作『キサラギ』公開直前!

小栗旬

特別な感動作や、泣けるラブストーリー、爆笑コメディーではなく、もちろん徳の高い人生の教訓もない。なのにおもしろくてたまらない作品。それが映画『キサラギ』だ。「これは僕の中の最高傑作といってもいいくらい」と言う主演の小栗旬が、その魅力について語った。

超娯楽作品でも、胸張って一生懸命やってればどこかで神様が微笑む。いい言葉だなって思いましたね。

 撮影エピソードや作品についての思いを話しながら、ついつい笑顔がこぼれる。これは稀にみる作品になるという手ごたえは、最初に台本を読んだときからあったそうだ。

「とにかくこんなに笑った台本は初めてだったんですよ。展開も早いし、次から次へと真実が出てくるけど、最終的にはその真実もどれがほんとか分からないみたいな。よく計算された本だなって、一気に読んじゃいましたね」

 映画『キサラギ』は、自殺したアイドル、キサラギミキの1周忌に、ファンサイトで知り合った男5人が集まったオフ会での数時間の出来事を描いたものだ。

「本当の自分を隠して集まれるっていうのがオフ会のおもしろさで、だから今いろんな人がオフ会をやってるんだと思うんですよ。それが今回は、そのつもりで集まった人たちがそうはいられなくなって、たかだか1時間ちょっとの間に人間の本性を全部見せてしまった。それが『キサラギ』のすべてだと思うんです」。オフ会仲間として、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅、香川照之と共演できたことも、小栗にとっては大きなことだった。

「みんなが自分たち5人だけで『12人の優しい日本人』みたいな会話劇をやれる喜びもあって集まったと思うんですけど、リハ初日の最後に、“俺たち、ちょっと大変な仕事を引き受けちゃったね”って誰かが言ったんですよ。でもそこから、本当に大変だけど、これを5人でやったら結構いいものができるんじゃない?みたいな感じで一気に結束が生まれて。一緒に何かひとつのことをやり遂げる戦友みたいな感じというか、年齢に関係なく友達みたいな関係になれたんですよ。こういう作品だったおかげだよねって、僕とか小出はよく言ってるんですけど」

 その戦友たちが集まった現場で一番大変だったのは、「おもしろすぎて笑いをこらえられなかった」こと。

「口から水を噴きましたからね(笑)。スネークさん(小出)の寄りを撮ってるとき、僕がおつきあいで前に立ってたんですよ。そしたら恵ちゃんが僕の顔を見て“小栗くんの目がすごい二重になってる!”って言うんです。本番中ですよ(笑)。疲れを通り越して目が三重くらいになってたみたいなんだけど、自分の目がおかしくなってるなんて初めて言われて笑いが止まらなくなって、ちょっと水飲んできますって外に出て、水を口に含んだら、また思い出してパーっと噴いちゃったんですよ。その1週間くらい前にも、香川さんがしゃべってる最中に水を噴いた日があったんだけど、そんなのってドラマか漫画かコントの世界以外に見たことないじゃないですか。とにかく笑いをこらえるのが一番大変な作業ではありましたね」

 もちろん楽しかっただけではない。笑いが溢れた中にも、エンターテインメント作品を作る意義を考えさせられた場面もあったそうだ。

「撮影が始まるころ、香川さんが監督に話してたことなんですけど。僕らの仕事って、果たして社会に貢献してるかといったらそんなことはなくて、一番最初になくなってもいい仕事なんじゃないかと思うところもあるって。でも、それをむちゃくちゃ一生懸命やってるときは、きっとどこかで神様からの贈り物が来るんですよねって話してたんですよ。確かにこの映画も究極の娯楽作品だから、人間が本当にしんどくなったら必要なくなるモノかもしれないし、大変な状況で生きてる人に“これを見てください”なんて言えないじゃないですか。それを考えると僕らのやってることって何なんだろうと思うけど、それに胸張って生きて、一生懸命やってれば神様が微笑むって。いい言葉だなって思ったんですよ」

 とにかくこの作品では、役者たちのハジケっぷりがすごい。

「こいつらバカだなって、これを見たらほっとできると思うんですよね。とにかく5人とも、いろんな角度でキサラギミキを愛してたんですよ。その気持ちって、普段生きてる中で誰しも愛するものがあると思うから、そこに置き換えることもできると思うんです。これを愛することは誰にも負けない、みたいなね。そういう意味では愛がいっぱい溢れてる作品だと思いますね」

 愛するあまりのどんでん返しの連続ゆえ、ネタバレ禁止で詳しいストーリーは紹介できないが、小栗が一番好きなセリフは「“虫けらだ!”って叫ぶところ」。小栗自身が「このセリフの言い方はうまくやったなと思った」のは、「プチ整形?と聞いたあとに“プチ整形”と言うところ」。その名場面はどこか、目と耳を全開にして劇場でチェックしてほしい。映画『キサラギ』は、神様が微笑んだ役者たちの名演技と、笑いとプチ感動の宝庫だ。



(取材・文/幸野敦子)

共演したユースケや香川について「いい意味で子供なんですね。すっごい遊び心があって、そういう自分をすごく楽しんでいて、だからこそ、23、24歳の僕や小出にも合わせることができて、それでいてちゃんとした社会的生活もしているっていうことが、この人たちイカレテルなって思うんですよ(笑)。でも、それは僕にとってものすごく素敵なことなんです」
『キサラギ』 監督:佐藤祐市/原作・脚本:古沢良太/出演:小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅(ドランクドラゴン)、香川照之ほか/配給:ショウゲート/1時間48分/6月16日、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか全国公開


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