
vol.311
年金記録入力ミスのサンプル調査でまた“隠蔽”
年金記録紛失問題で、マイクロフィルム化された国民年金の手書き台帳の記録のうち3090件を抽出し、コンピューターの記録と照合するサンプル調査で、11日にそのうち4件に不一致があったことが分かった。12日に公表された。手書き台帳の記録をコンピューターに入力した際のミスとみられる。これを基礎年金番号に未統合の記録約5000万件に当てはめると約6万5000件のミスがある計算となるが、13日にはこの4件以外にも氏名の読み間違いや生年月日、住所に関する5件の入力ミスがあったことが分かった。柳沢伯夫厚生労働相が衆院厚生労働委員会で認めた。柳沢氏は「本人特定に支障がなかったため公表しなかった」としているが、名前の入力ミスなどが大量の年金記録紛失の主要因であるだけに、野党側は「情報隠し」と批判を強めた。
柳沢氏は5件の入力ミスを把握していながら12日に公表しなかった理由について「(年金加入者)本人の特定に支障がなく、不一致ということで、あえて申し上げるに至らないと認識した」と説明した。村瀬清司社保庁長官は「5件以外に間違いはない」と答弁した。社会保険庁は「5件は、年金給付に影響がないので、公表する必要はないと判断した」(幹部)としている。ただ、12日に公表されたサンプル調査結果には「氏名、生年月日などの本人の特定に関する記載に食い違いのある事例はいずれもなかった」と明記。柳沢氏も同日の参院厚生労働委員会で、入力ミスは4件のみと答弁しており、5件については存在そのものを伏せていた。社保庁は「個人を特定できたので、食い違いのある事例には該当しない」と、問題はないとの立場を示している。一方、民主党は「新たな入力ミスは23件ある」(山井和則衆院議員)としている。
入力ミスは昭和30年代から!?
年金記録紛失問題で、年金記録が大量に不明になった主要因とされる手書きデータの入力ミスが昭和30年代から起きていたことが12日、社会保険庁の資料から明らかになった。これまで政府・与党は問題の原因が平成9年の基礎年金番号統合にあったとみて、統合を閣議決定した当時の厚相だった菅直人民主党代表代行を念頭に、菅氏以降の歴代厚相らの責任を追及する構えだった。しかし、今回明らかになった事実によって、原因究明と責任追及の方向性を見直さざるを得なくなりそうだ。
年金記録はかつては手書き台帳で管理されてきたが、将来的な電算処理を可能にするため昭和32年から段階的に、手書き台帳での管理とともに磁気ファイルへの入力作業を開始した。
作業は社会保険業務センターが担当し、全国の社会保険事務所から送られてくる手書き記録をもとに入力した。ただ、手書き記録の氏名は漢字のみだったのに対し、当時の磁気ファイルはカタカナ入力しかできなかったため、氏名の漢字の読みを不正確に入力。さらに、保険料納付期間を未納期間や免除と打ち間違えたケースもあった。
一方、社保庁は昭和50年代に磁気ファイルのデータをオンラインシステムに移行する作業を始めたが、この移行作業はコンピューター上で機械的に行われたため「誤入力は起きない仕組み」(社会保険業務センター)。
5000万件もの記録が基礎年金番号に統合されず宙に浮いたままになっている背景には、データ入力におけるミスが指摘されているが、こうした経緯を考えると、データ入力ミスはオンライン化を進める前の昭和30、40年代に相当数あったと考えられる。
政府・与党は基礎年金番号導入の閣議決定時に厚相だった菅氏の責任を徹底追及する方針だった。しかし、大量の不明年金記録が発生した原因が昭和30年代からの入力ミス、確認態勢の不備にあり、菅氏の厚相時代のミスの遠因にもなっている可能性が強まった。
小泉前首相の給与も召し上げ!?
自民党の中川秀直幹事長は13日夜、年金記録紛失の責任問題について「歴代社会保険庁長官の退職金は全部召し上げないと、国民は納得しない」と述べ、歴代社保庁長官に自主的な退職金返還を求める考えを表明。さらに「場合によっては歴代厚相、首相も給与召し上げなどで責任を取ってもらわなければならない」との見解を示した。自民党の二階俊博国対委員長、武部勤前幹事長らとの会合で語った。
同席した小泉純一郎前首相は、「おれにはそんな金はない」と切り返した。