今週のTOKYO HEADLINE
vol.312
(2007.06/25-07/02)
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写真;加藤大毅
MOVIE vol.312

TOKYO ATHLETE FILE vol.12

波木健太郎
(アメリカンフットボール日本代表)

 アメリカンフットボールW杯日本大会で3連覇を狙う日本代表。その中でも存在感が際立っているのがQB波木健太郎という男だ。NFLヨーロッパリーグでのプレー経験を引っさげて凱旋した「世界を知るQB」は、東京生まれの東京育ち。そんな“TOKYO ATHLETE”の代表ともいえる波木が、W杯日本大会への思いを語った。

「涙が出るような試合をしたいです」

――W杯が直前に迫ってきましたが、今の心境を聞かせてください。

「とにかく自分が培ったものを全部出して、チームの勝利に貢献したいと思っています。今回は日本のホームということもありますし、アメリカンフットボールの発展を考えるうえでもW杯を成功させたい。我々の役割は『成功=勝つ』ということなので、今は日本の3連覇へ向けて、QBとして何ができるかを模索しているところです」

――代表チーム全体のムードはいかがですか?

「最初のころは人数もたくさんいたので、お互い遠慮し合っている部分はありました。けれどもメンバーが絞れてきて合宿も経験して、ようやくチームとしてのまとまりが出てきています。ただし監督のおっしゃっている『日の丸を背負う』という自覚は、自分も含めてまだ足りていないかもしれないです。うまいだけじゃないし、勝つだけじゃない。プレーだけでなく、人間としても代表にふさわしいから選ばれているという意識を今まで以上に高めていく必要はあると思っています」

――どちらかといえばアメリカンフットボールW杯というのはなじみが薄い部分がありますが、前回大会はどんな雰囲気でしたか?

「前回はドイツで大会があったのですが、開催国ドイツの試合は特にお客さんも入って盛り上がっていました。ヨーロッパでのアメリカンフットボールの知名度は、みなさんの予想以上に高いんです。自分はNFLヨーロッパも経験させていただきましたが、伝統あるチームの試合は毎回3万〜4万人のお客さんが入るのは当たり前。チームも地域密着型で作られているので、雰囲気はJリーグに近いものがありましたね」

――今大会は本場のアメリカからも学生中心のメンバーが参戦することになりました。「フラボウル」(全米大学オールスター戦)経験者の波木選手に、アメリカの学生がどんなレベルか教えてもらいたいのですが。

「彼らは…強かったですよ(苦笑)。恵まれた環境の中でプレーしているので、学生とはいえプロ意識が高い。そこは日本の野球界に似ているかもしれませんね。やはり高いレベルでやれるのはごく一部なので、大学のトップ選手は持っているものが違います。プレーだけじゃなく、風格もあるし知識もあるし、礼儀も知っている。おそらく今回来るメンバーも同じだと思うので、日本にとっては脅威だと思います」

――日本の最大のライバルといっても過言ではない?

「アメリカ人が本気になってプレーすればスゴイですから(笑)。アメリカが出てくるということだけで、まったく違う大会になると思っているので、『自分たちが前回は勝っている』という意識は絶対になくさなければいけない。ただアメリカ代表はチームを作る期間が短いので、まとまりのなさも出てくる。それを考えると他のチームが劣っているかどうかは分からないです。今回は他国も強くなっているでしょうし、甘い戦いは1試合もできない。自分たちも緊張してW杯に臨むことになると思いますし、やはり日の丸を背負う気持ちは1回味わったところで慣れてしまうものではないですよ」

――今回は高校、大学とライバル関係にあった高田選手(松下電工インパルス)と共に日の丸を背負うことにもなります。やはりいい刺激になりますか?

「もちろんそうですね。高校、大学と日本一を争ったQB同士ですし、今もお互いシルバースターと松下電工インパルスという伝統あるチームでプレーしている。そういう意味でも、自分が10年近くアメリカンフットボールをやってきた中でのライバルですし、本当の尊敬できる選手です。今回は仲間として、代表で一緒にできるのは本当にありがたいです。でも、W杯が終わればまたライバル。それは宿命のようなものです。自分は一度も彼には勝てていないですし、アイツに勝たないと引退はできないなって思っています。あ、ちなみに昔から仲はいいですからね(笑)」

――関西の名門でプレーしていた高田選手とは対照的に、波木選手はアメリカンフットボールでは無名高だった駒場学園、早大を全国区に押し上げてきました。どちらかといえばチームを一から作り上げていくほうが合っているんでしょうか?

「やっぱりメンバーがそろっているチームを負かすのは快感です(笑)。早稲田に入ってすぐのころは正直、失敗したかなと思いました。でも経験者が半分ぐらいの状態からチームを仕上げて強豪校に挑めたというのは、自分の人生やアメリカンフットボール経験の中では大きい。チームが成長する中に自分が居られたり、そこでできた仲間は素晴らしいですし、これまで後悔しないでアメリカンフットボールをやれてきたことには本当に感謝したいですね」

――ところで今回のW杯はアメリカンフットボールを日本中にアピールするチャンスだと思うのですが、ビギナーはどのように大会を楽しめばいいでしょうか?

「ルールが難しいといったイメージもありますが、自分も高校で始めて1、2年ぐらいはアメリカンフットボールの面白さを分からないまま続けていたような感じでした(笑)。もちろん試合を地道に見ていくことも必要だと思うんですけど、最初はロングパスが決まったり、激しいヒットがあったり、そういうシンプルなプレーでも十分に盛り上がれるはずです。我々がシューティングゲームというか、空中戦で面白い展開をしてどんどん点が入る試合をすれば、『スゲエ!』ってお客さんも言ってくれるでしょうし、それだけでも日本のアメリカンフットボールはひとつ前に進んだことになると思っています」

――波木選手自身の注目ポイントはどこですか?

「学生のころよりもキレがないと言われますが(笑)、ボールを持って走ることは得意だと自負しています。パスに関してはまだ自分の求める高いレベルには到達していませんが、試合では流れを変えるようなプレーをしたいといつも心がけて臨んでいます」

――たくさんの観衆がいればプレーも変わりますか?

「それはもう。お客さんがいればいるほど盛り上がりますから。日本代表の一体感、そして3連覇するという強い気持ちを伝えたいですね。結果はどうあれお客さんがエキサイティングできるプレーを見せて、そして涙が出るような試合をしたいと思っています」




(聞き手/本紙・小池龍之)

■PROFILE 1981年9月26日、東京都生まれ。駒場学園高でアメリカンフットボールを始め、早大在籍時の02、03年に関東大学リーグ最優秀選手を獲得。02年のW杯ではただ1人の学生として日本代表に選ばれる。その後、NFLヨーロッパに参加。2年目の05年シーズンには「パス成功」を記録している。現在はアサヒビール・シルバースターに所属。185cm、92kg 。
W杯日本大会は7・7開幕!!

 川崎球場、等々力陸上競技場を舞台に行われるアメリカンフットボールW杯は7月7日に開幕。3回目となる今大会は、NCAA(全米大学体育協会)1部校出身者を中心として構成されるアメリカ代表の参戦が注目されている。大会は予選ラウンドの同順位同士が順位決定戦・優勝決定戦を行うラウンド・ロビン形式で行われる。我らが日本代表が3連覇を達成できるのか注目だ。 【大会公式ホームページ】http://wc2007.info/


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