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vol.312
(2007.06/25-07/02)
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写真;加藤大毅
MOVIE vol.312

INTERVIEW
映画『人間椅子』

板尾創路

妖しく、異質で、エロティック…。江戸川乱歩が、そのシュールなエロスを最大限に発揮させたともいえる異形の傑作「人間椅子」。見どころは、乱歩ワールドをいきいきと闊歩する?才人・板尾創路だ。

板尾創路とかけて、香港の夜景ととく。そのこころは…

 美しき女流作家の部屋に置かれた、黒革の椅子。その椅子に座った担当の女性編集者は、皮の下に“人間”を感じた―。    江戸川乱歩の作品の中でも、乱歩作品の“変態”ぶりをたっぷりと味わえる小説「人間椅子」。それを原作としたこの映画も、物語から登場人物まで“変態的”。

「そうですね、それ以外何もない映画ですからね」

 第一声から言い切った!

「でもこの映画を見たら、今となってはそんなに珍しいことではないんかな、と思いましたけど。だって今、猟奇的なことがいくらでもあるじゃないですか、現実に。親子でどうの、中学生がどうのって、よく理由も分からんような、ねえ。まだこっちのほうが理由というか、コトとしだいによったらあるかも…みたいな気がして、まだマトモかなと思ったり。でも乱歩がこの『人間椅子』を書き下ろした時代はドヘンタイというか飛びすぎてた存在だったでしょうね」

 この原作と出会ったのはいつ?

「原作は大人になってから読みましたけど。僕は小説を読み出したのが小学校5年生くらいで、江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズを毎回楽しみにして、図書館で借りて読んでましたからね。挿絵も、ちょっとこう…読んではいけないものを読んでいるような、ちょっと背伸びしたような雰囲気で、ドキドキしながら読んでました。今考えてみれば、そんなこともありましたね」

 当然、板尾さんにも子供時代があったわけで…。どんな子供だったのか。

「や、普通でしたけど? いじめっ子でもイジメられっ子でもなく。すごく勉強ができたわけではないんですが、だいたい学級委員に選ばれてましたね。自分でも不思議だったんですけど」

 不思議といえば、自らの日記をエッセーとして出版した「板尾日記」シリーズは、“読めば読むほど本人のことが分からなくなる日記”として人気である。

「よく言われますね。たぶん、持って生まれたもんやと思いますけどね。誰やったかな、昔、カラーコーディネーターの先生に“(板尾さんは)香港の夜景みたいなイメージです”って言われまして」

 100万ドルの輝き…。

「いや。“怪しい”ってことで」

 本作で彼が演じるのも、どこか怪しい編集長・小原という役どころ。

「訳もなく怪しい人なんですが、まあ僕は淡々と演じようと思って淡々とやったんですけどね…淡々とやりすぎたかなと思うところもあるんですけど…。そんなに、芝居するぞという感じでもなく…ええ、淡々とやってました」

 それにしても、板尾演じる小原編集長の“理由無き怪しさ”は絶品だ。

「この物語は、いわゆるコントですもん。編集や音の入れ方によっては(笑いが)どっかんどっかん、なるでしょ」

 コント『人間椅子』。…いけそうだ。

「よう言いますけどね、笑いと怪奇は紙一重って。まさにそうじゃないですかね、乱歩は。視点を変えればすごく笑える。佐藤圭作監督は、そういうところを残しつつ撮ってますよね。もちろんきちんと不気味に仕上げてますけど、本質的にはおもしろいんですよ。僕のキャラクターがまずそうですよね。出ているだけで、なんか笑えるところがあるんじゃないですか。僕がこの映画に出演させて頂いたのは、そういう部分のせいでもあるんじゃないですかね。でなければ、もっと演技のうまい俳優はいっぱいいますしね」

 かもしれない。ただ、笑いと怪奇を同時にかもし出せる役者が稀なのだ。映画デビューから5年、出演作は20本強。

「ほんまのことを言うとね、映画デビュー作は吉本新喜劇の映画なんですよ。ちゃんと公開もされてないし、大阪で1日だけ上映してビデオとかになったんじゃないですかね。タイトルはなんだったかな。『マネージャーの掟』とか。でもそれはほんのちょっとしか出てないですよ。いまだに本編も見てないですし…忘れてましたもん。…ひょっとしたらビデオテープをもらったかも分かりませんけど、覚えてないですね、はい。でも一応それが映画デビュー作なんですよ」

 デビュー作のことを忘れる俳優がいたとは。それ以前に、まだ見てないって…。

「たぶんあんまり、“映画やから”ってスイッチを切り替えたりしてないからでしょうけどね。しょせん自分のできることなんて大したことないと思ってますから、張り切ったらできるというもんでもないと。もともとスゴイ才能を持っているわけでもないんで、頑張ってやりすぎて“それやったら違う人がよかった”って言われるのも何なんで…」

 普通、言わないと思われる。

「自分のできる範囲では、全力でやってるんですけどね」

 淡々と、全力で、持ち味を生かしつつ、一瞬でもスクリーンに登場すれば無視できない存在感を放つ俳優・板尾創路。乱歩の迷路に迷い込んだ観客をさらに迷わせるのが、この男なのだ。




(本紙・秋吉布由子)

「これを機会に、もっと江戸川乱歩の世界を楽しんでほしいですね。とくに若い人に…あ、これ中学生も見られるんですよね?」ハイ、R指定はありません(PGー12)。「ああいうのも、親が決めればいいと思うんですけどね。親のハンコとか持ってくれば見れる、みたいな」。ナイスアイデア…かな。
『人間椅子』 原作:江戸川乱歩 監督:佐藤圭作 出演:宮地真緒、小沢真珠、板尾創路他 アートポート配給/1時間16分/6月30日〜7月6日・7月14〜20日、シアターN渋谷にて公開 ※週替わりレイトショー「エロチック乱歩」(6月30日〜7月27日まで『人間椅子』と『屋根裏の散歩者』を交互に上映)http://www.artport.co.jp/movie/rampo/


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