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かねしろ・かずき……1998年『レヴォリューション NO.3』でデビュー。『GO』で直木賞受賞(2000年)。ちなみに、今までで一番衝撃を受けた短編小説は、「小松左京さんの『召集令状』。ものすっごい切れ味で、読み終わった時びっくりしてしまって。自分はこんな短編を書けるかなって、不安になるぐらいでした」。希代の読書家、映画通、音楽ファンでもある。
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vol.318
INTERVIEW
最新作『映画篇』で切り拓く新境地
“ページ・ターナー”の冒険
金城一紀
7月26日に発売された金城一紀最新作『映画篇』。すでに手に取った方も多いだろう。そして、いつも通り夢中でページを繰り、いつも通り爽快な読後感に満足のため息をついたのではないだろうか。そして、今までとは違う手触りに、ハタとヒザを打ってしまったに違いない。
「すべての作品を書き上げた時に今までとはちょっと違う手ごたえを感じたし、初めて“出版までは死にたくない”って思いました。支持をされるにしろされないにしろ、読者の反応をきちんと確かめてから死ねればと(笑)」
本作は、5つの短編からなるオムニバス形式の小説。『太陽がいっぱい』『ドラゴン怒りの鉄拳』『恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス』『ペイルライダー』『愛の泉』と、そのすべてが映画作品の名を冠するがゆえの『映画篇』。『太陽が〜』では“僕”と親友の映画遍歴と物語誕生の逸話が語られ、『ドラゴン〜』では、夫を失った妻の哀しみと勇気を取り戻す物語が、『フランキーとジョニー〜』では過去に縛られた若い男女がある犯罪に手を染め、未来へと走り出すさまが語られる。
「物語を思いつく方法はだいたい2パターンで、たまたま目についた面白い単語や映像からイメージが広がるパターンと、現実に起きたことを“こう変えたら面白いかな”って脚色するパターン。例えば『フランキーとジョニー〜』のストーリーは、ニュースで、“A被告が1億円の保釈金を支払って釈放されました”っていうのを聞いて、保釈金てどうやって支払うのかな、って思ったのがきっかけでした。それからいろいろと保釈金に関して調べ始めていくうちに、自然とそれにまつわるストーリーが出来上がっていったんです。エンターテインメント作品というのは情報量が大切なので、保釈金に関する新しい知識を読者に提供できた時点で、面白い作品になる始めの一歩は踏み出せたはずですね」
と語る金城は、やはり生粋のエンターテイナーだ。「犬の散歩をしているすっげぇパンチパーマのおばちゃんを見て、あのおばちゃんが最強だったら面白いなって思って」広がった『ペイルライダー』。漆黒のハーレーに乗る最強のおばちゃんの過去と夏の1日が、幼い少年の目を通して語られる。
「実は『ペイルライダー』は、万人に受けるタイプの物語じゃないかも、と思いながら書いたものでした。でも、『映画篇』には僕が持っている要素をすべて詰め込もうと思ったので、受けなくてもいいから書いておこうと。実際には僕の予想に反して、とても人気があるみたいですが(笑)」
と話す金城。冒頭でも言ったように、この作品では新しい段階へ登ろうとしているようだ。
「昔はただ小説を書きたい、人を感動させたいという思いだけでした。でも今は、歳をとったというのもあると思いますけど、人を救いたいと思うようになったんです。もちろんそれは、大上段に構えて救うだなんておこがましいことじゃなくて、日常の中の些細なことで力になれたらいいな、ということ。僕自身、成長したというか、人間に幅ができて、以前は書けなかったものも書けるようになってきましたし」
その“新しい金城”がひときわ見えてくるのが本作のトリの『愛の泉』。鳥越家を陰で支えるおばあちゃんのために、孫たちが“思い出の映画”の上映会を開催しようと密かに計画を進めるのだ。「多分、昔だったら書けなかった」というおばあちゃんの心情や過去、孫たちそれぞれのエピソードが軽妙に綴られる。軽妙な語り口なのだが、その情感はしっとりと胸に落ちてくるから不思議だ。
「よく言うんですけど、僕は“ページターナー”になりたいんです。ページをめくる手が止まらなくなるような物語の書き手をそう呼ぶんです。だから難しい言葉は書きたくないし、文章も読みやすいものを書きたい。そして、そういう物語で人を救いたい。ただの紙に書かれた文字が、読んだ人の中で化学反応を起こして、やがては感動になったり希望になったりする…。そんなふうに考えると、自分の仕事が意義のあるものだと思えてきて、やる気が湧いてきますね」
5つの物語は、そうやってたくさんの感動と笑いを振りまきながら『愛の泉』の中の“思い出の映画”の上映会に向かって集約していく。ひとつひとつが独立しながらも、複雑にリンクしている5つの物語には、ほかにも映画にちなんだ数多くの楽しい仕掛けが満ち溢れている。それが何かは語るまい。あなた自身の目で見つけてほしい。
「これからのライバルは、『国境なき医師団』と総合格闘家(笑)。両方ともプロとして命懸けで闘っているので、僕も彼らに負けないように必死に闘いながら書いていきたいな、と。とにかく、プロとして恥ずかしくないものを生み出していきたいですね」
と語る金城。本作は、新しい段階へと進む金城一紀の記念碑的作品とも言えそうだ。“ページターナー”金城一紀の新しい冒険が、ここから始まる。
(本紙・小池龍之)
『映画篇』(集英社・1470円)
互いに関連した5つのストーリーが映画をモチーフに展開する。『対話篇』などの過去作品も併せて読むのもオススメ。さらに大きな物語世界が見えてくる。
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物語世界が甦る『金城一紀シネマナイト』開催!
『映画篇』発刊記念期間限定公式サイトへ!
9月30日までの期間限定で、発刊記念の公式サイトがオープンしている。金城自身による『映画日記』『映画Q&A』などコンテンツも盛りだくさん。また、8月31日に開催予定の『金城一紀シネマナイト』への参加申し込みもサイトから(8月10日締め切り)。
【URL】http://www.shueisha.co.jp/kaneshiro/
集英社携帯マガジン『hippopo』では、映画コラム『ワンダフルフレーズ イン シネマ』を連載中(9月27日まで)。こちらも要チェックだ。【URL】http://hippopo.jp/ ※QRコードはこちらから→
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