
vol.318
キュアー 23年ぶり来日で「また、23年後に会いましょう」?
元祖夏フェスのフジロックフェスティバルが7月27日から3日間、新潟・苗場スキー場で開催された。英国のカリスマ的ロックバンドのキュアーや、おなじみイギー・ポップ、ケミカルブラザーズらが出演し、12万7000人のミュージックラバーをエキサイトさせた。キュアーは初日の27日、最も大きいグリーンステージのトリで登場。23年ぶりとなる日本のステージは、荘厳なインストルメンタルミュージックが流れるなか、ボーカルのロバート・スミスが紫色の照明に妖しく照らされながら登場してスタート。「23年間待ち続けていた」ファンたちが笑顔と下腹に響くような歓声で迎えた。前日のリハーサルではベスト盤を思わせる曲をプレーしていたという彼らは、「friday i'm in love」、「the kiss」など本番では2回のアンコールを含め全24曲を2時間を軽く超えてプレー。最後の最後に「boys don't cry」をプレーし終えたときにはすでに午前0時を回っていた。「また23年後に…いや、もっと早くね」と、ジョークも忘れなかった。
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| ↑フジロックの大トリを務めたケミカル・ブラザーズ。95年のデビュー以来、クラブとロックを結びつけた王者として君臨している彼ら。12年の間にトムの頭は寂しくなったが、彼らのサウンドは常に最盛期。最高のプレーに加えて、彼らの笑顔がさらにハッピーな気持ちにさせてくれた
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| ↑フジロックにビースティ?とさまざまな意見もあったが、ステージにあがればさすがエンターテイナー。苗場は彼らのホームになった。マゼルトフ!
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3日間踊り続けるロックフェス!
3日間、前夜祭を含めれば4日間をとにかく踊り倒す―。今年のフジロックには「踊れるロック」や「ロックするダンスミュージック」を鳴らすアーティストが国内外から勢ぞろいした。
フェスティバルの最終日に大トリとして登場したのはケミカル・ブラザーズ。90年代後半から数々のロックボーカルをフィーチャリングして、クラブミュージックとロックサウンドを融合させてきた張本人だ。セットは、最新アルバム『WE ARE THE NIGHT』からのトラックを中心にしていたが、冒頭から「Do It Again」→「Get Yourself High」→「Hey Boy Hey Girl」の流れでオーディエンスは何度も絶頂を迎える。ステージ両サイドのビジョンとステージ奥に備えられた巨大ビジョンに映し出される映像が、グリーンステージにあふれる高揚感をさらに高める。ヒートアップした観客に煽られるように、体をうねらせながらミキシングに精を出すトム、両手を挙げて歓声に答えるエド。彼らの姿からは、お気に入りだった苗場プリンスホテル裏のラーメン屋が潰れていたことへの落胆は、少しも見られなかった。
2日目のトリを飾ったビースティボーイズは、スーツでクールに登場。MCAがぬいぐるみを抱えて登場し、ステージ中央でそのぬいぐるみを歩かせたりという意味不明な演出もまた彼ららしかった。セットは、バンドセットを織り交ぜながらのフェス仕様。「フジロック、ビックシット!(すごいやばい)ビック、ビック、シットだぜ!」とステージを駆け巡りながら、「Super Disco Breakin」「Sure Shot」。会場はアゲアゲだ。さらにアガっていたのは、前日はソロで、ビースティボーイズの数時間前にはオマー・ロドリゲス・ロペス・グループでキーボードとしてホワイトステージに上がっていた、マニー・マーク。ロック飛び、ステージをのた打ちまわり、キーボードにダイブ! 今年のフジロックのベストプレイヤーは彼に決定だ。ビースティはアンコールで「Sabotage」をプレーし、最高潮に盛り上がるフェスティバル中日を締めくくった。
この他にも国内外から、今をときめくアーティストが独自のサウンドで夢のような3日間を演出した。
サンボマスター 「良かったって思ってほしい」
メインのグリーンステージで、フジロックの幕明けを飾ったのはサンボマスター。午前11時という早い時間帯とはいえ、ステージ前はファンたちでぎっしり。いつもどおりの老若男女といったバラバラな客層に、今日は外国人も混じっている。「ジャーン!」とかき鳴らされたギターの音と共に、オーディエンスは細かくジャンプ、ボーカル山口に煽られるように手を上げ、歌声も湧き上がる。「歌声よおこれ」「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」などの代表曲を次々と、フェスティバルらしくアップテンポで前のめりなロックチューンを畳み掛けるように演奏。「今年のフジロック、サンボマスターが良かったって思ってほしいんですよっ!」。山口はいつにも増したテンションで語りかけ、最高のオープニングを飾った。
BLONDE REDHEAD 浮遊する「4AD」サウンド
BLONDE REDHEADは、ニューヨーク出身の3ピースバンド。紅一点は日本人でグッと親近感が沸く。彼らが鳴らすのは「4AD」レーベルの特色でもある浮遊感のある音。中毒性がある。この日もレッドマーキーは満杯で、なかなか中に入れなかった。わずかなスキマから、ステージ上でメンバーらしき人たちの頭部が動いているのが見える程度だ。春に発売されたアルバム『23』(4AD/ベガーズジャパン)を中心に淡淡とプレーした。スバーンとストレートに利くバンドではないが、「お前はもう死んでいる!」といったジワジワと染み込んでくる魔法のような音を撒き散らしていた。
| 今や妻帯者かつ子持ちのジャービス・コッカー。日本と海外のフェスの違いについても教えてくれた
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ジャービス・コッカー 「ポカリスエットって…」
90年代に活躍した英国バンドPULPのボーカリスト、かつては女優クロエ・セヴィニーと噂になったこともあるジャービス・コッカーも、結婚して父親になった。そんな彼が、今回聞かせたのは、より人間らしいサウンド。吊るしの背広?と突っ込みを入れたくなるようなシンプルなスーツで登場し、長い髪を振り乱しながらギターをかき鳴らす。PULP時代の作られたスマートさはない。途中、「フェスって、だいたいこのあたり(足の付け根に手を置く))泥につかったり、酔っ払って歩いたりするもんだけれど、ここは違うんだね」、「ポカリスエットっていうのは英語を話す僕らにとってはとても奇妙なネーミングなんだ…スエット(汗)ってねぇ…(笑)でも、飲んでみたら意外とイケた!」と英語圏のアーティストにしてはお決まりのトーク。会場からも失笑気味の笑い声が上がり、変わらぬジャービスっぷりを見せつけた。
MUSE
フジロックには初参加。だが、彼らにとってアウェイな会場は地球上には存在しないのかもしれない。この日も、MUSETシャツを着込んだファンがぎっしりだ。煌びやかなセットに派手な照明、そこに小柄であることをまったく感じさせない威風堂々たるボーカルのマシューが現れる。かつては、ポスト・レディオヘッドと他のバンドと一緒にくくられていた彼らだが、彼らはポスト・〜の波に飲まれることなく、今に至っている。フジロックでは、硬質だがなじみ易いビートとロックサウンドを融合させて、オーラたっぷりのステージングで、オーディエンスを圧倒した。
| トレードマークのチープな半ズボン姿、ヒゲダンスでノリノリのステージを見せてくれた!!!(チック・チック・チック)。彼らのアクトが終了してからさまざまなステージで、ヒゲダンスをするオーディエンスが続出した
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!!!(チックチックチック)なヒゲダンス
最高のライブパフォーマンスを見せるバンドとして、世界中にその名を轟かせる!!!。フジロックのステージでも同じだった。壊れてしまうんじゃないかと思うほどの「カーン!」というキックの音がステージに相対するようにそそり立つ山々に反響する。「カーン!カーン!」。そして、トレードマークのペラペラした素材のチープな半ズボン姿でボーカルのニックが登場。日本人にとっては”あの”ヒゲダンスにしか見えない踊りで観客をあおる。ステージの左右目いっぱいに動き、ヒゲダンス、クロール、そして意味不明な動き。背後のとてつもなくグルーヴィーでクールなサウンドとマッチしているのが面白い。あまりのアガりっぷりにメンバーの一人が急に倒立したり……。レッド・ホット・チリ・ペッパーズにも認められたという彼ら。長くはないセットのなかで、その本領を余すところなく見せてくれた。メンバーの一人はセット終了後、ステージ脇で見ていた家族と抱き合ったり、子供と語らったり。いいパパっぷりも見せつけた。
KURA SHAKER いつになっても素敵な王子様
再結成して出演した昨年のフジロックではレッドマーキーを満杯にした。今年は一番大きなグリーンステージでロックする。英国のカリスマバンド、KURA SHAKERは90年代当時の勢いに渋みを加えて、よりハイクオリティーな演奏で観客を満足させた。昨年は悲しいかな、「Hey Dude」「Tattova」など往年の名曲をプレーしたときと最新の曲の盛り上がりとずいぶんギャップがあったが、今年はその差はわずか。オーディエンスも、再結成したKURA SHAKERではなく、現在のKURA SHAKERを見にきたという雰囲気だ。ボーカルのクリスピアンはトレードマークのジャケットで、ベースのアロンザはアメリカン・ニューシネマのようなピシッとしたスーツ姿―立っているだけで絵になっていた。
LILY ALLEN テントに降り立ったキュートなエンジェル
ゆるめのビートにのってドリーミィーボイス。多くの人がリリー・アレンにハマるツボだ。とてもキュートな彼女だが、実は相当の毒舌家かつビッグマウス。その言動にはみなが注目している人物でもある。さて、そんなリリーのパフォーマンスを一目見ようとレッドマーキーはまたもや満杯。熱気で汗が滴るが、彼女は涼しげ。なぜかと思えば、裸足! 上はワンピースなのだが、足元を見るといつものスニーカーはない。軽やかなステップで右から左でふわりふわりとステップを踏む。「フジロックにプレーできるなんてとってもうれしいわ!」と、終始笑顔だった。ちなみに、ケミカルブラザーズと同様、リリー・アレンも苗場プリンス裏のラーメン屋が潰れていたことに憤慨していたそう。
| 本紙記者のベストパフォーマンス、オマー・ロドリゲス・ロペス・グループ
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OMER RODRIGUEZ LOPEZ GROUP ジミヘン再来を夢見る!?
弊紙記者が今年ナンバーワンのアクトを挙げるとすれば、OMER RODRIGUEZ LOPEZ GROUPになる。!!!が僅差で2位というところだが…、やっぱりこのギタリストには勝てない。クレイジーでサイケデリックで、ファンキーで、ロック。MARS VOLTAの頭脳とされる、オマーのソロプロジェクトだ。卓越したテクニック、ぐるぐると湧き出すグルーヴ感、そして高揚感。どこか神々しい存在感。小柄な彼だがステージに立ってギターを手にすると、ありがちな表現だが、彼がとても大きく見えてくる。この日のステージも、他のプロジェクト同様に、緊張感が張り詰め、大方険しい表情のオマーだったが、セットも終盤になると、ときどき笑顔がこぼれた。キーボードとしてマニー・マークが参加していた。
ASH ホワイトステージに響く大合唱
ASHがはじまる前、グリーンからホワイトに向かう道は大混雑。ステージエリアにはなかなか入れなかったそうだ。彼らのステージを見、そしてフェスの後になってこの話を聞いて、ASHというのはすごいバンドだと改めて感じた。躍動感、フレッシュさ、疾走感にあふれるポップロックでシーンに現れたティーンエイジャーも、今は30歳。そうした音を鳴らすバンドはどんどん淘汰されていくのだが、今もなお彼らは新しい曲で観客を大合唱させることができる。「Kung fu」でも、「Goldfinger」でもない曲で大合唱となったとき、ボーカルのティムは両手を広げ、オーディエンスの歌声を全身で受け止めた。子犬のような目を潤ませていた表情も忘れることができない。
「サイテー」と叫んで! ギターパンダ
フジロックのなかでも一番小さなステージ…というか、ステージは丘!それも、他の部分よりも土がちょっとだけ盛り上がってる部分にしか過ぎない。でも、どのステージよりも開放的で空に近く、観客にも近い。それが、ドラゴンドラに揺られてたどり着いた山の上にある。ギターパンダはここの常連。アコースティックギターを抱えたパンダ(手だけは人間)が、曲にしたためられた大切な思いを歌う。そこには過激な内容もあり、観客は「サイテー」と合いの手を入れることを強要される。心地よい手拍子とともに山に「サイテー!サイテー!」の声が響く。さて、暑さのためか、このパンダはだんだんトランスフォームしていき今回はカルピス・プレスリーなる歌手に。その後で完全なパンダがまたキュートに踊って見せる。これもまたフジロックならではの風景だ。
MIKA 2007年のクイーン
80年代を彷ふつとさせるバンドがずいぶんと活躍しているが、そのなかでももっともハッピーで、もっともエンターテインメントで、もっともクールなバンドがMIKA(ミーカ)。海外メディアでは時代の寵児のように扱われているニューカマーがフジロックに初参戦だ。目の覚めるようなパンツに白いTシャツは体操のお兄さんを思わせる。それでステージ中を動き回り、演奏し、歌う。パンツに負けないぐらい眩しい笑顔に観客もくぎづけだ。途中、暑さからかTシャツを脱いで華奢な上半身を余すところなく見せつけたかと思えば、次の曲ではそのTシャツの裏表や前後をしっかりと確認してからもう一度着るというパフォーマンス!会場のそこここで「あ、着るんだ〜」という突っ込みが……。ハイライトはエンディング。数え切れないほどの大きな風船が会場に放たれ、紙ふぶきが舞い、カラフルな着ぐるみが登場。フレーミング・リップスのステージを思わせるハッピーな時間だった。
| グッと大人っぽくなったジョス・ストーン。言葉も出ないほどソウルフルなパフォーマンスだった
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JOSS STONE ホワイトソウルここにあり
卓越した歌唱力にミック・ジャガーも惚れこんだ。デビュー当時から注目を浴び続けてきたジョス・ストーンがフジロックのグリーンに登場だ。魂を込めて歌う姿は、ジャニス・ジョップリンがダブる。途中、フジロックで唯一の大雨に襲われるも、観客は微動だにせず彼女の歌に聞き惚れていた。
HAPPY MONDAYS ハシエンダ@苗場
映画「24 HOURS HAPPY PEOPLE」のヒットで、日本にも広く知れ渡ることになったマッドチェスター文化。英国マンチェスターの伝説的なクラブ、ハシエンダと、そのバックにあったファクトリーレコード。そして、ハシエンダでプレーした数々のバンドのなかでも中心を担ったのがハッピー・マンデーズだ。昨年はエンディングで登場した彼らは今年、大物枠で登場。年齢を経たことで渋みを見につけたベズは、マラカス片手にゆうゆうとステージを横断しオーディエンスとコミュ二ケーションを取る。ボーカルのショーン・ライダーはステージ奥に陣取って、そんなベスを笑顔で見守る。「ハレルヤ!ハレルヤ!」グリーンステージは巨大クラブになった。
東京スカパラダイスオーケストラ スカの懐の広さ
スカという音楽は何もかもを飲み込んでしまう。国境も言語の壁も、人種の壁も。そして、音楽のジャンルも容易に飛び越える。ヨーロッパツアーを終えたばかりという彼らはその勢いをそのままに苗場にやってきた。ホワイトスーツで決めた10人は楽器を振り回し、汗を飛び散らし、最高のサウンドを苗場どころか日本全土に向かって響かせる。それを見ていたオーディエンスもあっというまにその勢いに飲み込まれ、もみくちゃになりながら、スカパラの10人とともに最高の時間をシェアしようと必死だ。その様子を見ていると、彼らが1月に行ったさいたまスーパーアリーナでのライブを思い出した。スカパラは人生よりも大きい―。そんなフレーズが浮かんできた。