
vol.319
渋谷の短大生遺体切断裁判 精神鑑定へ
東京都渋谷区の短大生、武藤亜澄さん=当時(20)=が自宅で殺害、切断された事件で、殺人と死体損壊の罪に問われた次兄の元予備校生、勇貴被告(22)の公判が8日、東京地裁(秋葉康弘裁判長)で開かれ、勇貴被告への被告人質問が行われた。勇貴被告は亜澄さん殺害時の感情を「ドライな感じ」と供述。検察側の「亜澄さんの言葉に怒りを爆発させた」との主張を否定した。弁護側の主尋問で、勇貴被告は、亜澄さん殺害の直前の感情を「怒りの爆発ではなく、自分でも理解できない」と供述。
検察側は「勇君が歯医者になるのはパパとママのまねじゃないか」などといわれたことを見下されたと感じ、「この口を黙らせるには、もう殺すしかない」と殺害を決意したと主張している。勇貴被告は、亜澄さんにこのようなことを言われたことは「そのように思います」と述べて認めたが、殺害の引き金となったとされる会話について「燃え上がる怒りでも、ねちっこくという感じでもなく、通常の口調」と説明。直前の“口論”が殺害動機ではないとした。
亜澄さん殺害後、遺体を切断した状況も一部の場面を除いて「ほとんど覚えていない」とし、亜澄さんを切断した理由については「まったく分からない」と供述した。
一方で、現在の心境を勇貴被告は「妹に本当にかわいそうなことをした。それ以前に、(妹のことを)理解してあげられなかったことも謝罪したい」と述べた。
検察側の反対尋問で、検察官は「理由もなく、ただ木刀で殴ったのか」「遺体を切断したのは、隠すためではないのか」などと追及したが、勇貴被告は「分からない」「覚えていない」と繰り返すばかりだった。
秋葉裁判長は、弁護人から請求のあった勇貴被告の精神鑑定の採用を決定。鑑定期間中は公判は停止されることになった。弁護側は被告人質問を通じて、勇貴被告がこれほどの重大事件を起こしていながら犯行状況をほとんど覚えていないことや、動機らしい動機がなかったことを強調、勇貴被告の刑事責任能力への疑問を浮かび上がらせた。この法廷戦術が、東京地裁に「精神鑑定が必要」と判断させる一因になったともいえる。
弁護人は勇貴被告が起訴される前の今年1月から受任し、接見を続けている。勇貴被告は当初、弁護人にも「亜澄さんに言われた言葉でカッとなって殺害した」などと話していたという。
しかし、8日の被告人質問終了後に会見した弁護人は「勇貴被告は、遺体を切断した後に肉厚のカツサンドを食べたり、遺体を隠した部屋で普通に寝るなど、通常人では考えられないようなことをやっている」などと話し、精神鑑定の必要性に理解を求めた。
鑑定には数カ月かかると予想され、結果が出るのは年末ごろになる見込みだという。