
vol.321
TOKYO ATHLETE FILE EXTRA
ラグビー日本代表
いよいよ第6回ラグビーW杯が目前に迫ってきた。フランスの地で行われるラグビーの祭典で、我らがジャパンは過去最高の「2勝」を狙っている。今回はそんな決戦直前のジャパンを徹底特集。ジョン・カーワンHCらの熱い言葉で、W杯モードをさらに盛り上げよう!
ジョン・カーワン(日本代表ヘッドコーチ)
「サムライ精神をW杯に持って行く」
過去5大会のラグビーW杯で、ジャパンが残した成績は「1勝15敗」。
世界はこれまで、あまりにも遠かった。第6回W杯は9月に迫っているが、惨敗の記憶は簡単に払拭できるはずもなく、世間的な期待度は決して高いとはいえないのが現状だ。
しかし1人の男が、日本ラグビーに希望を与えようとしている。
「日本に足りないものは自信だ」
今年1月のヘッドコーチ就任以来、「JK」ことジョン・カーワンはこう言い続けている。第1回W杯にトライ王を獲得したオールブラックスの英雄が、自身のプレー経験を踏まえて語るのだから、“JKの言葉”に選手が奮起しないはずがない。
「現役時代にはスピードのあるDFに苦労させられたことを覚えている。ジャパンの持ち味は『スピード』『アジリティー』、そして『インテリジェンス』。W杯では国民が“ジャパンスタイル”に誇りを持てるような試合をしたい」
日本文化にも造詣が深いカーワンHCは、「サムライ精神をW杯へ持って行く」と抱負を述べている。他国の模倣ではない独自のスタイルを表現するため、指揮官は半年間の“突貫工事”を行った。代表合宿では鬼軍曹のようにチームを鼓舞し、クラシック・オールブラックスをはじめとした強豪との強化試合を組み、徹底的にジャパンを戦闘集団に鍛え上げた。
わずか半年にして、ジャパンには大きな変化が起きたようだ。箕内拓郎キャプテンは、「このチームには可能性を感じる。ひとつでも多く試合をしたい」と語る。パシフィックネーションズ杯(最下位)などで「勝利」という分かりやすい結果を示すことはできなかったものの、ジャパンは大きな手ごたえを胸にフランスの地へ向かう。
カーワンHCはこうも語っている。
「宮本武蔵は“相手の手の内を知れ”と説いている。もちろん体は使うが、頭を使うことも重要。対戦相手の分析は既に済んでいる」
手の内を知ることと同等に、手の内を明かさないのも武蔵流。カーワンHCは具体的な作戦は語らず、“秘策”を胸に最終合宿地のイタリアへ飛んだ。
日本ラグビー界の大目標は、W杯の舞台で2勝を挙げること。予選プールで激突するオーストラリア、フィジー、ウェールズ、カナダは世界ランキング的には格上の存在だ。ジャパンにとっては激闘が続くことになるが、カーワンHCは「世界を驚かせる」と自信に満ちあふれている。
「目標は2勝? なぜ2勝しかできないと思うんだ」
9月8日のオーストラリア戦から、W杯の舞台に立つ「JKジャパン」。桜のジャージーをまとう男たちからは、かつてないほどに“奇跡”が起こる予感が漂っている。
■ラグビーワールドカップ2007 日本代表スケジュール
9月8日(土)=日本vsオーストラリア(リヨン) 12日(水)=日本vsフィジー(トゥールーズ) 20日(木)=日本vsウェールズ(カーディフ) 25日(火)=日本vsカナダ(ボルドー) ※予選プール2位以内で決勝トーナメント進出。3位までの12チームが次回大会の出場権獲得。
■決勝トーナメント日程
準々決勝=10月6、7日(土、日) 準決勝=13、14日(土、日) 3位決定戦=19日(金) 決勝=20日(土)
■ラグビーワールドカップ2007 フランス大会特設HP
http://www.rugby-japan.jp/hm/wc/
|

小野晃征(SO)
「日本のために体を張ります」
今年に入るまで、「小野晃征」という名前はメディアの中でもほとんど知る者はいなかった。
小学生時代にニュージーランドに移住し、ラグビーの本場で着実に力をつけてきたジャパンの逸材は、カーワンHCに見出されてW杯の舞台に立つことになった。
「カーワンHCは小さいころから見ていた選手で、ニュージーランドではヒーローです。代表ではそんなすごい人に指導していただけているので、すごくうれしいですよ」
SOを務める小野の持ち味は「ゲームコントロールとキックパス」。10日に行われたアジア・バーバリアンズとの壮行試合で先発した小野は試合開始早々、見事なキックパスを大畑につなげて復帰戦トライをアシストしていた。
そのプレーも「最初はパスを回すサインが出ていたんですが、DFラインが寄ってきたのでキックに変えました」というから、そのキックの正確性と判断力の高さは並みではない。
「W杯では日本のために体を張って、できるだけ試合で持ち味を出していきたいと思います」
果たして弱冠20歳の“リーサル・ウェポン”がフランスで潜在能力を開花させることができるか。ジャパンの行方と同程度に、小野のプレーからも目を離さないでいてほしい。

大畑大介(WTB)
「これ以上、忘れ物はしたくない」
フランスW杯に臨むジャパンは、2人の主力を欠くという大きな悩みを抱えていた。1人は5月のクラシック・オールブラックス戦で左足を骨折したSOアレジ、そしてもう1人は今年1月、右アキレス腱を断裂したWTB大畑大介だ。
ジャパンのウイングを務めて10年。さわやかなルックスと軽快な関西弁トークでラグビーのイメージを一新した男には、キャリア最後のW杯を前にして特大級の試練が待っていた。負傷の翌日の報道は、そろって「W杯絶望」。快足で世界と戦ってきた大畑にとっては致命傷ともいえる。しかし「4年に一度しか見られない自分が出てくる」W杯へ向けて、必死のリハビリが実った。
ジャパンが日本を立つ前日に行われた10日のアジア・バーバリアンズ戦。ついに大畑は208日ぶりに実戦復帰を果たす。大畑の“ショー”は早くも前半3分に訪れる。SO小野のキックパスを受けたファーストタッチで先制トライ。試合後には「やっぱりモノが違うな」と語り、自らも劇的な復帰戦に酔った。
もちろん復帰が目標ではない。これまで2大会に出場したW杯では未勝利。エースとして臨んだ世界の舞台で味わった屈辱は計り知れないものがある。
「これ以上、忘れ物はしたくないんです」
通算テストマッチでのトライ記録は世界一。WTBのキャリアとしては、これ以上輝かしいものはない。しかし大畑が本当に欲しいものは、桜のジャージーをまとって世界を打ち破ることだ。
「W杯に来られない選手もいる。その人たちの分まで背負って、ラグビー人生を飾れる形にしたい」
自らも「次はない」と、最後のW杯であることは分かっている。奥に秘めた眼光の鋭さはカーワンHCの言う“サムライ”そのものだ。いまだ足の痛みは抱えており、コンディション面では不安を残す。しかし幾度となく修羅場をくぐってきた大畑の言葉は力強い。
「最後は気持ちですよ」
ラグビーファンを沸かせ続けてきたトライゲッターは、JKジャパンの“奇跡”を後押しする。