今週のTOKYO HEADLINE
vol.321
(2007.08/27-09/02)
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MOVIE vol.320

『デス・プルーフ in グラインドハウス』
クエンティン・タランティーノ

タラちゃんことクエンティン・タランティーノ監督の最新作は、監督のB級指向をさらにパワーアップさせた感のあるスラッシャー・ムービー。しかしその中には、監督らしい遊び心がたくさん詰まっていたのだった。

「でも、ただのスラッシャーじゃつまらない。
そうだ!『レザボア・ドックス』と同じことをしようと思ったんだ」

 監督のインタビュートークを伝える前に、まずは今回の映画用語をおさらいしよう。映画のタイトルは『デス・プルーフ in グラインドハウス』だが、グラインドハウスとは、かつてアメリカの大都市周辺に数多く存在した、刺激的なインディーズ映画の2本立てを専門に上映していた映画館のこと。そこには、セックス、カンフー、カーチェイスなど、知恵と気合を駆使した刺激てんこ盛りのB級作品がずらりと勢ぞろいしていた。若いころ、そんな映画を見まくっていたのが、誰あろうタラちゃん。そして彼からそのジャンルの英才教育を受けたロバート・ロドリゲス監督と、「お互いに1本ずつ作って2本立て上映の映画にしよう!」とスタートしたのが今回の新作。日本ではそのロングバージョンが、1本上映で封切られることになったのだ。

「2本立てで映画を作ろうとロバート・ロドリゲスと話していたとき、やっぱりグラインドハウスだから両方ともホラーにしようと決めていたんだ。で、どうしようか考えたとき、ちょうど僕の中でスラッシャー映画ブームがきていたからスラッシャーにしようと思ったけど、実はスラッシャーものって殺人者や武器は変わっても基本の形は全部同じだから、それじゃおもしろくない。で、考えたんだ。そうだ!『レザボア・ドックス』と同じことをやろうって。あの映画も、強盗ものというジャンルに、かなりクレージーで風変わりな“自分なりの強盗もの”を注ぎ込んだ作品だったからね。そこでひらめいたのは、8年前にある人から聞いた言葉。僕はそのころちょうど車を買おうと考えていて、安全性が高いボルボにしようと思っていたんだ。そうしたらある映画業界人から、“基本的にどんな車を買ったとしても、映画のスタントチームに1万ドルくらい払えば“デス・プルーフ(耐死仕様)”にして返してくれるよ。そのほうが安全性はバッチリだよ”って言われたんだ。もちろんそんな言葉は忘れていたけど、自分の中の物書きの部分が覚えていて、8年後にやっと実がなったという感じだね。デス・プルーフの車に乗っている、ちょっと頭のおかしいスタントマンが、女の子たちのストーカーになる。車を女の子にぶつけたい衝動は、彼にとっては性行為と同じだというメタファーも使えるし、なかなかおもしろいな。こんな映画見たことないな、これでいける!と思ったんだ」

 作品に出てくる女子たちは2組。それぞれ、事件が起きないうちは、恋バナや男の品定めトークを繰り広げるのだが、このダイアローグも監督が書いたのかと思うほど、超リアルなガールズトークも楽しめる。

「今回セリフを書いていておもしろかったのは、彼女たちが実際最悪な状況に置かれたとき、リアルに立ち向かっていける女性たちってどんなだろうって考えたことなんだ。彼女たちは、自分の性別のためにプレッシャーをかけられたり、怖い思いをしたりする。でもそれをうまく生きのびると、なぜ私は女性だからこういう目に遭わなきゃいけないの!って、強くなってくる。それをこの映画では描いているんだ。僕はもともと強い女性が大好きだし、人間の質としても、基本的に強い人に惹かれる傾向がある。まあそれは、僕がシングルマザーに育てられたせいかもしれないけどね。彼女は、それほど恵まれない環境から、ビジネスの世界でエグゼクティブになって成功を収めた人だから、女性であることを言い訳にすることに一切忍耐のない人だったんだ。男性も女性も基本的には同じことをできると彼女に教わったっていうのもあるし、自分でもそう思ってるからね」

 映画作りに関しては、「俺が映画を作るってときは、完全に映画を生きることになる。他のことは一切考えず、やるとなったら、映画、映画、映画。それが終わったら、ただの映画ファンに戻って映画を観まくる。この年は映画を作るぞ。で、次の年は映画を観るぞ、って感じさ」とアメリカでのインタビューで答えていた監督。大作かB級かなんか関係なし。映画を楽しみたいという“映画愛”は誰にも負けないタラちゃんなのであった。




(取材・文 幸野敦子)

ここが見所-1  スタントウーマン役で本名で登場するゾーイ・ベルは、『キル・ビル』シリーズでユマ・サーマンのスタントを務めた女優。驚異のカースタントを披露するが、「CGIは一切使っていない」とのこと。カメラのスピードも一切いじらず、安全策のために時々体にケーブルをつけただけ。

ここが見所-2  「俺はもちろん足フェチさ」と自認する監督。冒頭からやたらと女優の美脚が写し出される。その足がどうなるのかは…観てのお楽しみ

ここが見所−3  コアな映画ファンが大喜びしたという、車に付けられたダックの飾り。サム・ペキンパーの『コンボイ』で主人公のラバー・ダックがつけていたものと似ている。「ネットで調べたら、同じ型で作ったものを売っていたんだ。それで作ってもらったんだよ」
『デス・プルーフ in グラインドハウス』 脚本・監督:クエンティン・タランティーノ/出演:カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、ロザリオ・ドーソン、トレイシ−・トムズ他/1時間53分/ブロードメディア・スタジオ配給/9月1日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ、日比谷みゆき座系にてロードショー公開


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