
vol.322
タイソン・ゲイが「最速男」に
大会の花形である男子100m決勝は26日に行われ、アメリカのタイソン・ゲイが9秒85のタイムで初優勝を飾った。
「この瞬間を待ちに待っていた。すばらしいレースだった」。勝負は60m過ぎに訪れた。スタートから飛び出したライバルのアサファ・パウエルを、ゲイが驚異的な加速でつかまえた。世界記録保持者を破った新王者は高らかに勝利を宣言した。
戦前からパウエルとの一騎打ちムードだったが、昨年は5戦全敗。世界記録保持者にまったく歯が立たなかった。それでも今回は自信があった。向かい風0.5メートルの条件下、9秒85の好タイム。世界最強に加え、最速をも狙える力を見せつけた。
初めての世界大会だった05年世界選手権は200mメートルで4位。優勝したジャスティン・ガトリンを筆頭に、上位4人を米国勢が独占する快挙を演じた中、ゲイだけがメダルなしに終わり、レース後にひとり落胆した。
「あの経験が、僕のモチベーションになっている」。それ以降、競技に対する姿勢は見違えた。冬季練習では、週に1回しかしなかったウエートトレーニングを週3回に変え、苦手なスタートも劇的に改善した。
183センチ、73キロのゲイは、決してパワーで押し切る走りではない。上下動の少ないフォームで驚異の加速を見せた新星は、大阪の地で名実ともに男子短距離界のヒーローになった。