今週のTOKYO HEADLINE
vol.326
(2007.10/01-10/07)
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撮影:加藤大毅
MOVIE vol.326

INTERVIEW
氷の王国“北極”が今、消えてなくなろうとしている――

『北極のナヌー』
アダム・ラヴェッチ
サラ・ロバートソン

氷に覆われた極寒の世界、北極。しかし今、北極は地球温暖化によって、わずか30年後には消滅してしまうといわれている。ナショナル ジオグラフィック社が初めて手がけた長編劇場映画『北極のナヌー』は、今白クマたちが直面している現実、そして彼らが強く生き延びようとする姿を映し出す。

未来はまだ、定められてはいない。

 今、世界が直面している温暖化現象。それによって、あの北極が今、消滅の危機に瀕している。北極に生きる生き物たちもまた、かつてない環境の変化にさらされている。その事実を、北極の荘厳な光景とともに映し出す映画『北極のナヌー』が日本で公開となる。本作を手がけたのは、マイナス50℃の北極で15年もの間、北極を撮影し続け、北極をテーマにしたドキュメンタリーで数々の賞に輝くアダム・ラヴェッチとサラ・ロバートソン。2人は公私にわたるパートナーでもある。

サラ(以下S)「私は初めて日本に来たんだけど、まだどこも見れてないの(笑)」

アダム(以下A)「僕は以前にも日本に来たことがあるんだ。日本の料理は美味しいよね! スシ、テンプラ、サシミ、サケ…みんな好きだよ(笑)」

 そんな2人がもう一つ、日本について期待していることがある。

A「日本は、世界の国の中でも温暖化への危機意識がとても高い国だと思う。政府や企業から行動しているし、多くの人が環境について強く意識しているしね。そういう国がもっと増えて、その国同士が力を合わせていかなくてはいけないと思う。日本の皆さんなら、この映画を見れば、今起こっている状況をとてもよく理解してもらえると思います」

S「でも悲しいことに、アメリカでは“温暖化現象なんてただのうわさで、現実に起こっているかは定かではない”と信じ込んでいる人も大勢いるんです。自然について研究している人の中にも、そんな人がいるくらいで。ゆっくりと、意識は変わってきてはいますけどね」

A「きっと、これから理解が広まっていくはず。ぜひそうあってもらいたいと思うよ、僕らもアメリカ人だから(笑)」

S「この映画を見た子供たちが、親に温暖化のことを話す、ということもあったそうです。うれしいことだわ」

A「映画を見た帰り、車のエンジンをかけるのに罪悪感を感じたという人もいたらしいよ」

 北極に魅せられ、15年もの間、資金を貯めては北極に滞在し、撮影を続けてきた2人。そんな2人は、ある時から北極の異変を感じ始めた。

A「僕らが北極で撮影を始めた17年ほど前は、氷がありすぎて撮影に困るほどだったんだ(笑)。でも、しだいにそれも少なくなってきて、特に去年はひどかった。それまで氷の大地があったところを、大きなタンカー船が行き来できるなんて、信じられるかい?」

S「氷が減少してきてはいたけど、これまでは持ち直す年もあった。でもここ数年は、ずっと減少の一途をたどっているんです。こんな状況に陥ったことがないので、今後具体的にどのような影響が出るか、未知数なのです。このままだと、30年後には夏になると北極が消えるという現象が起こるでしょうけれど…」

 北極の危機に気づいた彼らは、温暖化現象が動物たちに及ぼした事態にも気づいた。それが、白クマとセイウチが本作の“主人公”になった理由だ。

A「これまで、セイウチと白クマは別々のエリアで暮らしていました。しかし北極の氷が少なくなり、面積が狭くなったことで、彼らの生活圏が重なるようになってしまっている」

S「彼らは氷の中で子供を生み、育てます。氷がないとそれができないのです。子供を生むことができても、夏に氷が無くなれば生きてはいけません。親グマは海を泳いで陸にたどり着くことができますが、小グマたちには無理でしょうね」

 さらに監督たちは驚くべき現象にも出会っている。

S「大地を求めて、陸のほうへやって来た白クマとグリズリーが交尾をして繁殖しているという現象も起こっているんです。実は、白クマはグリズリーから分かれ進化した種だと言われています。もしかしたら、将来、白クマはグリズリーに戻ってしまうかもしれませんね」

 今回の作品では、アル・ゴア元副大統領の娘であるクリスティン・ゴアがナレーション脚本に参加している。

A「彼女はもともと、コメディー作品の脚本家として知られています。『北極のナヌー』は深刻なテーマを抱えているので、ともすれば暗い作品になってしまうと思い、彼女に参加を依頼したんですよ(笑)。お父さんのアル・ゴア氏の『不都合な真実』も素晴らしい作品でしたね」

 深刻な現実を訴えるだけでなく、カメラは消え行く北極の大地で生き延びようとする、白クマの子・ナヌーと、セイウチの子・シーラの物語をイキイキと描き出す。彼らの姿は美しく、力強く、気高い。彼らは未来をあきらめてはいない。

A「未来は、定められてはいないのです。これから私たちがどうするかにかかっているんです」

S「今は、これからの地球の未来がどうなるのかが決まろうとしているとき。私たちも、決意を固めなくてはいけないと思います」

 北極のたどる運命は、我々のたどる運命だと気づいてほしい。その願いとともに、監督たちは、すべての人を北極に誘ってくれる。




(本紙・秋吉布由子)

『北極のナヌー』 監督:アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン 日本語版ナレーション:稲垣吾郎  松竹配給/10月6日よりシネマGAGA!他にて公開 http://www.nanu.jp


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