今週のTOKYO HEADLINE
vol.331
(2007.11/05-11/11)
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MOVIE vol.331

三木聡 × 小泉今日子
映画『転々』スペシャル対談

 東京を散歩すれば借金はチャラ、おまけに報酬100万円!? ドラマ「時効警察」の三木聡監督が挑む新境地、映画『転々』がついに公開。本作の個性派キャストの1人・小泉今日子と、監督・三木聡が東京散歩をテーマに初対談です!

『転々』は、奇妙な縁で東京を一緒に散歩することになった大学8年生・文哉(オダギリジョー)と借金取り・福原(三浦友和)、そして旅の途中で出会う個性的な面々が織り成す、笑いと切なさと温かさが交差する物語だ 。井の頭公園、裏新宿、谷根千界隈と、秋の風情とノスタルジックな昭和テイストを湛えた街の顔も道すがら登場。東京の魅力に溢れた一編でもある。

小泉今日子(以下:小泉)「どうしようもないふたりの男がなぜか歩き出し、どこへ向かうんだろう。台本はそんな興味で読んでいたので、出来上がった映画で初めて、東京を散歩する感覚を味わいました」

三木聡(以下:三木)「脚本にはどんな風景かまでは書いてませんからね。今回の東京のイメージは、歩きながらのロケハン作業のなかで、出てきたものなんですよ」

小泉「私、神奈川出身なのもあって、作品に出てくる下町には行ったことがなかったんです。中央線の街にも70年代のイメージで憧れていたり(笑)。フォークソングや小説の若者が、恋してる、同棲してる、っていうね」

三木「西日のあたるアパートで、ですよね(笑)。『転々』に映し出された東京像は、新しいものに変わるときに中途半端に残っているもの、“なんでこんなところにこんなものが”というのを、僕が好きなのもあるんですよ」

小泉「東京の街って、進化しないとしようがないところもあるんだと思うけど、残っていくものもちゃんと守れたらいいのに、とも思いますよね。こんな街も、そんな街もあればいいって」

三木「そうそう、雑多な人がそれぞれに雑多なことをやっているのが面白いように、街も統一されすぎず、いろいろあったほうが楽しい。それが今の東京はビルの建て替えや取り壊しが増えて、街自体が一期一会の状態なんですよ。この作品に映ってる場所も、いくつかなくなってます。たった1年足らずでね。文哉が福原を必死に追いかけて見つけるシーンの、伊勢丹前の地下鉄の入り口もそう。あのカットは今じゃもう撮れないんですよ」

ゆるくてリアルな人物像と強くて確かな役者の存在感

 

 小泉今日子演じる麻紀子は、旅の途中の文哉と福原を、臆面もなく自宅に逗留させるあっけらかんとした女性。物語のおもむきを、てくてく歩く男ふたりのロードムービーから、一挙にとぼけた味わいのあるホームコメディーへと転調させる、存在感のある役柄だ。

小泉「麻紀子さんは不動の人。自分は決して動かず、いろんな人が通過していくの。そんな気がします。感情だって、どこまで動くか分からないところがある。“あ、そうなの”って、通過していくものを景色として楽しめる人なんじゃないかな、何でも」

三木「まわりを流れていく人はいいけど、麻紀子さんを動かそうと思う男の人は大変でしょうね(笑)。考えてみるといいかげんだし。姪のふふみ(吉高由里子)に福原のことを船長だとか言ってるでしょ。嘘というより、ただ言っただけという感じで」

小泉「私ね、夜、タクシーで“六本木まで”とか言うと、運転手さんに“これからご出勤ですか?”って聞かれることがあるんだけど、そのまま思うがままに演じようと、最後までやりとおしたりするの(笑)。たぶん麻紀子もふふみに聞かれて、“じゃあ、当ててみ”と言ったら10個目ぐらいに“船長”って返ってきたから“そうそう”となったんじゃないかな。私にはそんなイメージがありましたね」

三木「素晴らしい解釈ですね。映画は意味を求められるものなんですが、実際に嘘をつくきっかけって、思いつきや話の流れでってことが多々ある。人間は思うほど厳密じゃないんです」

小泉「あと麻紀子さんの素敵なのは、“文哉も座って食べなさい”って、唐突なことでも説明を入れずに、当然のように言えてしまうところかな」

三木「あのひと言で、文哉と福原の環境を変えるという、麻紀子さん登場の物語上の機能を見事に果たしていただきましたね。あそこで関係がぱっとシフトして、三浦さんもオダギリさんも瞬時に反応してくださった。あれはもう演出を超えた範疇です。どんなに煎じ詰めてつくっても、映像にはドキュメンタリーな部分、つまり俳優のみなさんの肌触りが残りますからね」

小泉「映画って、風が吹いたり、猫が飛びだしたりっていう、“偶然”が映りやすい部分もありますよね」

三木 だから、雰囲気を引き出せる、役者の強さが大きい。小泉さんの花やしきのシーンでも、いちばんいい表情のときに、後ろの回転塔がうまい具合に回って光が差したでしょ。“この役者さんはツキがある”と思いましたね。そんな絶妙な瞬間を映像に収められる監督ってのは、本当に幸せ者です(笑)。




(取材・文/八幡谷真弓)

『転々―てんてん―』 監督・脚本:三木聡 出演:オダギリ ジョー、三浦友和、小泉今日子他 スタイルジャム配給/1時間41分/11月10日より渋谷アミューズCQN、テアトル新宿他にてロードショー http://tokyosanpo.jp/


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