今週のTOKYO HEADLINE
vol.332
(2007.11/12-11/18)
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MOVIE vol.332

別所哲也

『キャッツ』『オペラ座の怪人』『エビータ』などの作品で知られる作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバーの新作ミュージカル『ウーマン・イン・ホワイト』が、日本人キャストにより日本初上演される。初演は2004年のロンドン・ウエストエンド。続く2005年にはニューヨーク・ブロードウェイでも絶賛を浴びた。その話題作に出演する別所哲也は、今、静かな闘志を燃やしている。

「幸せだからこそ分からなくなってる感情の動きが、演劇的な体験で揺り動かされる。それが僕にとっては大切なことなんです」

 都内の稽古場で、青年画家ハートライト役を演じる別所哲也は、今作への高まる興奮を内に秘めながら静かに口を開いた。

「アンドリュー・ロイド=ウェバーのミュージカルが素晴らしいのは、忘れられないメロディーがあることはもちろん、作品が持っている力を音楽そのもので表現しきっているところなんですよ。ひとつの音や休符やリズムの変化にも全部意味があって、それを今、考古学者のように掘り起こして“どういう意味だろう?”って話し合いながら稽古してるのが楽しいですね。でも、歌は本当に難しいです。ウェバーのような天才音楽家っていうのは、限界を超えようとしていくところがあって、今回の音楽はそれだけ音域も広いし、音が端から端まで飛んだりする。ある意味挑戦状を叩きつけられてるというか、この地平線がどこまで続いているのかを開拓してる感じはありますね」

 ミュージカルは総合芸術。その音楽と俳優たちの表現力がひとつの高みで融合したとき、歌は単なる音符の羅列を超え、劇場に魔法が舞い降りるのだ。

「そうだと思いますね。だんだんプレッシャーを感じてきましたが(笑)」

 意外に思う人は多いかもしれないが、別所哲也のルーツは舞台にある。大学時代から芝居を手がけ、プロの俳優として初めて出演した舞台は『ファンタスティックス』というミュージカルだった。

「僕は中学、高校と体育会系でバレーボール部にいたんで、人の前で歌って踊ることにはすごく違和感があったんですよ。そんなちゃらちゃらしたことができるか的な感じでね。でも、いざ取り組んでみると、ミュージカルには非常に精密な考え方やコンセプトがあったり、セリフの裏側を考える上にもうひとつ楽譜という設計図があって、音符の先にあることを考えたりもするんです。僕は子供のときにピアノをやっていたんですけど、そのころから音楽の向こう側を想像することがすごく楽しくて、それでミュージカルにのめり込んでいったんですよ」

 いち観客としても、今までたくさんのミュージカルを観てきた。心揺さぶられた作品を数えたらキリがない。

「人って、気分がいいときに思わず鼻歌を歌いながら料理を作ったり、ドライブしながら歌ったりするじゃないですか。人間には、食べるとかの基本的欲求以外に、いかに楽しく生きるかとか、生きてる意味を考えるとかっていう本質的な人間らしさがあって、踊るとか歌っちゃうのは、泣くとか笑うことに直結してる気がするんですよ。僕らの日常って、特に平和な日本で生きてると、良くも悪くも感情が溢れ出るようなことは少ないですよね。でも、幸せだからこそ分からなくなってる感情の動きが、演劇的な体験で揺り動かされる。それがすごく僕にとっては大切なことなんですよ」

 11月18日の初日まであと1週間。稽古は大詰めを迎えている。

「今回は、笹本玲奈ちゃんと神田沙也加ちゃんと共演なんですが、その異父姉妹の貴族の娘2人が、どうしてそういう環境にあるのかを解き明かしていくミステリー。階級の違う者同士の悲恋も描かれるし、かと思うと非常にコミカルな部分もある。あまり話すとネタバレになっちゃうけど、冒頭と最後で何かがつながってハッとさせられるというか、人間の不思議な第六感的なものが刺激されるストーリーのように思いますね」

 それにしても、87年のデビューからあっという間に20年。『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』に代表されるように、今や別所哲也はミュージカル俳優として揺るぎない存在感を見せている。

「30代まではいろいろ葛藤もありましたけど、今、40代に入って、すごく気持ちがいいですね。もう少し歳を重ねたくらいで止まってくれたら一番いいかな。ちょいワルな感じで(笑)」

 ちょいワルというより、今も好青年のイメージが強く残るが…。

「じゃ、これが最後の好青年役ということで(笑)」

 そう言うと彼は、大人の余裕を感じさせる笑顔を見せた。

「僕はとにかく、自分に何のルールも作らず、大雑把で、鈍感力で生きていきたいんですよ。センシティブなことをやるには鈍感じゃないとダメなときもあって、こんなにお客様が来てくださってるのに、オレはここであんパンなんか食ってていいんだろうか?とか考えちゃうと何もできなくなる。体のことは最低限考えるけど、何にでも反応できるようなリラックスした状態にいられるのが俳優としてもベスト。それでこういう作品と出会えて、まだまだ超えなきゃいけないことに挑戦できる。だからおもしろいし、だから俳優は一生の仕事なんでしょうね」




(取材・文/幸野敦子)

ミュージカル『ウーマン・イン・ホワイト』
東京公演:11月18日(日)〜12月2日(日)
【会場】青山劇場
【料金】S席1万2000円、A席 完売、B席 完売
*チケット取り扱い:ホリプロチケットセンター 03-3490-4949 ほか http://www.hpot.jp/wiw/


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