
vol.332
司法が初判断「混合診療にも保険適用」
保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を受けると、医療費の全額に保険が適用されないのは違法として、腎臓がんの男性が、保険が適用されることの確認を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であった。
定塚誠裁判長は「保険が適用されない法的な根拠はない」と述べ、男性の請求を認めた。混合診療の保険適用を容認する司法判断は初めて。
訴えていたのは神奈川県藤沢市の団体職員、清郷(きよさと)伸人さん(60)。訴訟では、保険適用外治療を併用することで、本来は保険が適用されるべき治療まで適用外になる法的根拠は何か−が争われた。
定塚裁判長は、健康保険法が、保険適用となるケースについては「診察」「薬剤」「治療」などを挙げるだけで、具体的な内容は定めていないと指摘。「保険診療に、それ以外の診療を併用した場合、保険が適用されなくなると解釈できる根拠はおよそ見いだせない」と判断した。
その上で「受けた診療に保険が適用されるかどうかについては、併用した診療すべてを一体として判断するのではなく、個別の診療ごとに判断すべきだ」と述べ、「清郷さんには保険診療であるインターフェロン治療を受ける権利がある以上、それ以外の診療を併用しても保険を受ける権利がある」と結論付け、国の主張を退けた。
国は「保険は、安全性や有効性、普及性などの水準が保証された医療行為に適用される」とした上で、「保険診療とそれ以外の診療が併用された場合は一体の医療行為と見るべきであり、保険診療には該当しなくなることから、患者の全額負担となる」と主張していた。
清郷さんは判決後、「厚生労働省は全面解禁すべきだ」とし、「全額自己負担になることで、望む医療を受けられず、命を落とすこともある。生存権の侵害に当たるのではないか」と、混合診療を禁止する厚労省への憤りを隠さなかった。
一方、厚労省は「解禁の予定はない」と反発。混合診療には反対の立場の日本医師会も「お金のある人はより高度な医療を受けられるようになるが、貧しい人は限られた医療しか受けられなくなる」と主張した。
患者側からは、特にがん治療で混合診療解禁を求める声が強く上がっているが、有効性がまったく不明な民間療法のような診療にまで混合診療を認めることになりかねず「無原則に認めるのは問題」との声も上がっている。