
vol.333
INTERVIEW
『ミッドナイトイーグル』
竹内結子
山岳アクション大作『ミッドナイトイーグル』。西崎を憎みながらも特別な思いを寄せる義妹というヒロイン・慶子役を演じるのは、復帰して改めてその演技力と存在感を示す女優・竹内結子。
あきらかに成島出監督は、竹内結子という女優の美しさが持つ力を知っている。本作を見れば、どうしてもそう思わざるをえない。
「そういえばクランクインのとき、監督から“絶対キレイに撮ります! そこだけは必ず!”って言われました(笑)。私にとってそこは重要ではないですから…と思ったんですけど、監督がそう言ってくれるんだったら、と(笑)。実際にスクリーンで見たら、肌の調子がよさそうでした(笑)」
成島監督がそんな宣言をしたのは、監督と竹内が、慶子の心情について話し合っていたときだった。
「西崎と喫茶店で待ち合わせているというシーンについて話していたんです。西崎は、慶子の姉が死ぬまで家庭を顧みない男で、息子の優も放り出している、いわば姉のカタキ。でも監督は“会えたうれしさと何かを期待する気持ち”も持っていてほしい、という。それなら…と思っていたら突然…」
“(無理に役を)作らなくていい、僕はそういうことは何も言いませんから。でも、絶対キレイに撮りますから”。監督はそう言ったそうだ。監督の言いたかった“キレイ”がどんな美しさをさすのか、“慶子”を見れば一目りょう然。過酷な運命に立ち向かう凛とした美しさ、大切な人々を包み込む温かな美しさ、強がりの裏に悲しさや不安を押し込める切ない美しさ…。
「慶子は母でもあり、妻でもあり、妹でもある女性。義妹として思うことをズバズバ言うときもあれば、妻のように西崎の尻を叩くときもあり、甥っ子にとって母になり…そしてときには恋人のようでもあるんです」
見事に一人の女性の奥深さを表現したが、イメージがバラバラになりそうなことはなかったのか。
「そうなりそうなときには一つひとつ、監督に確認しにいきました。でも、慶子はこういう気持ちからこの言葉を言っているんですか、と尋ねると、監督は“それもありますけどね…”と答えるんです。けどね…って?(笑)」
監督はいつもそんなふうに意味深?
「意味深でした。困りました(笑)。でも任されているのが、ありがたいとも思いました。監督は、ここまでおいでよという感じで示してくれるんです。そこまでの道順をいちいち説明するのではなく、たどり着いておいで、と」
慶子を含め、登場人物たちには複雑な過去がある。しかしそれがセリフや過去場面などで語られるわけではない。
「表情で説明しなければいけないことは多かったですね。映画では細かく説明されていませんけど、西崎と慶子はもともと雑誌WISEで出会ったんです。西崎はいい兄貴分で、仕事を通して尊敬もしながら、憎まれ口もきけるような間柄だった。それがある日、ふと姉を紹介した…」
そういった、演じるキャラクターの背景は知っておきたいほう?
「そうですね。自分の話しているセリフの意味が分からないと不安になります。 今回も“スクランブルをかけた!”とか、会話に専門用語が出てくるので、自分でもいろいろ調べました(笑)」
確かにアクション映画には、独特の要素や単語が出てくるもの。
「脚本を読んだとき、見たことの無い世界だと思いました。実はどちらかというとアクションというジャンルには疎遠なほうで…。だからこそかなり新鮮でしたね。これは何だろう、どういうことだろうと、初めてのことや分からないことを楽しみにしていた部分がありました。銃を構えるときにはこう持つと“らしくみえる”、とか。そういう技があるんだ!って(笑)。銃なんて引き金一つ引くだけだと思っていたので、こういうことにもいろいろあるんだな、と思いました」
表情の幅広さ、深さゆえか、慶子は決してよくある“添え物”的なヒロインになっていない。クライマックスで西崎に向けて言い放つ、感動的で衝撃的なセリフにもそれは感じられる。
「私も、台本を読んだときからあのセリフは謎でした。どんな気持ちで言うのか、なぜあんな言葉を言うのか、そこにどんな意味が込められているのか…。監督は“すべての感情をこめてほしい”と。ひと言で!?って(笑)」
彼女は、その一言ですべてを語ったか? それは映画を見れば分かること。
「この作品は、見た人がそれぞれ感情移入する人物が違うのだと思います。アクションだけでなく、人間像にも重点を置いている作品なんですね。役者の皆さんも、セリフを言わずして何かを伝える方々ばかり。現場に入っただけで“ここ凄い!”って思いました(笑)」
そんなヒーローが揃っている以上、ヒロインにも 、一言ですべての思いを語りきる“オトコマエ”な美しさが必要。そしてそれを作らず気負わず表現できる女優が、竹内結子なのだ。
(本紙・秋吉布由子)