
vol.333
アコーディオン弾き語りで注目度上昇中
中山うり
アコーディオンで弾き語りをする中山うりが、ニューアルバム『エトランゼ』をリリースする。今年5月にファーストアルバム「DoReMiFa」を発表したばかりで、実に中6カ月でのセカンド。時間を忘れてしまいそうなサウンドとは違い、勢いづいた感のある中山。とはいえ、インタビューはまったりで…。
ピアノやギターの弾き語りはあるけど、アコーディオンは聞いたことがない。
あなた似合うし、いいんじゃないの?って(笑)。
中山うりのデビューはピリリとスパイシーだった。CDを1枚出すこともなくフジロックフェスティバルに出演し、iTunes Storeではダウンロード数歴代2位を獲得。デビューに至って彼女を紹介した雑誌の数は50を越えた。
「同じことはやりたくなかったし、違うテイストの曲を書こう書こうと思って。その結果、違ったものができたかなと思いますね」
前作からわずか6カ月でリリースされるセカンドアルバムについて聞くと、中山は、ゆったりとした雰囲気でさらりと答えた。
「1作目の『DoReMiFa』は、“中山うりとは”っていう自己紹介的な作品でした。メロディーラインは、どちらかというと懐かしい感じのものが多くて、歌詞の内容も過去を振り返っているものや、夢のなかでの出来事だとか、心境というか心の中を歌っている曲が多かったですね。そのせいか、ノスタルジーとか言われることが多かったです。今作は、等身大の自分がいて、その自分が旅をしたり、夢を見たり、目標を追いかけているうちに道に迷ったりして、冒険している。アウトドアなイメージです。メロディーラインも日本のものとはかけ離れたエキゾチックな感じになりました。色んなにおいがあると思います」
一般的に、多くのアーティストはそれまでのすべてをファーストアルバムで絞りきり、セカンドでは生みの苦しみを味わう。「あっという間でした」という中山からはそんな苦労は微塵も感じられない。やっぱり、何かが違う。
音楽を始めたのはありふれた理由からだ。両親からエレクトーンを買い与えられ、近所に住む友人たちとスクールに通った。どちらかというと、受け身だった。しかし、小学校高学年になって地域で盛んだった金管バンドに参加。エレクトーンと違い、「音楽がやりたかった」と自ら進んで足を踏み入れた。担当した楽器はトランペット。全日本吹奏楽コンクール、高校の部で金賞を受賞した。
が、しかし、そのままストレートに音楽の道を進んではこなかった。音楽はストップして、美容師の道へ。
「2年間、音楽から離れていたんです。そしたら、ぽっかり穴が開いちゃった感があって。“また、なんでもいいんで音楽をやりたいな”って気持ちになったんです。美容師1本でやっていったらなんとなく自分でバランスがとれなくなってきた時だったし、気楽に音楽をやったら、生活の潤滑油じゃないけど、気晴らしになるかなって、程度の気持ちだったんです。それで、これまでいろいろなことをやってきたんですけど、まだ歌は歌ってなかったな、それじゃあ歌でも歌ってみるかなって(笑)。そこからいきなり、曲も歌詞も自分で書きたいって思うようになって書き出して。じゃ、ライブ決めようと思って、ライブを決めて(笑)。行動派でしたね」
本気になった。「ライブを重ねるたびにもっと音楽に時間が費やせれば、曲もかけるし、練習もできるし、時間がないゆえにもどかしいなっていう感情が出てきた」。美容師としても、アシスタントからスタイリストとなり、充実を感じ始めたとき、「音楽をちゃんとやろう」と決心。“奇跡の新人”のストーリーがスタートした。
今でこそ、中山うり=アコーディオンというイメージも広まりつつあるが、アコーディオンを始めたのは「賭けでした」と本人。
「見た目がかわいいなとか、持ったら似合うかもしれないとか。もちろん、音色は好きだったんですけどね。それで、アコーディオンのcobaさんのお父さんが経営されているショップにいって、いろいろ話を聞いたんです。“弾きながら歌いたいんです”って話したら、“ピアノやギターの弾き語りはあるけど、(アコーディオンは)聞いたことない。あなた似合うし、いいんじゃないの?”って(笑)。アコーディオンって可能性がある楽器だ、限界っていうプレーはないし、いろんな奏法がある。使い方によってはいろんなプレーや表現ができるというような話もあったんですけどね」
中山は、フランスのミュゼットや、タンゴ、ジプシースウィングなどのエッセンスを抽出して自分の音楽に反映させる。ニューアルバム『エトランゼ』でもそれが聞ける。アコーディオンの可能性を最大限に生かしている。
「なんかしら残るようなもの、夢を見られるようなものを作りたいと思っているんです。今回の旅もそうですけど。それが大恋愛でもいいし、そうじゃなくてもいい。もっと内面的なことだとか、これから自分がどうなっていきたいのかだとか、そういったこと一つひとつが短編映画のようになっているんです。アルバムになれば、その一つひとつがつながっていないようで、つながっていて、中山うりワールドになっている。アルバムは、そんなふうになってればいいのかなと思います」
アーティストとしてどうありたいかと聞いた時に「ちょっと変で、間が抜けてて、でもかっこいい。カッコいいんだかかっこ悪いんだか分からない、そういうギリギリなところを狙っていきたい」と答えた。抜群のセンスでアコーディオンをピックアップした彼女。今度は誰もやっていない音楽を聞かせてくれる。
(本紙・酒井紫野)