
vol.339
INTERVIEW
本当の大人は、走り続ける。
『SS-エスエス-』遠藤憲一
新年を迎えて抱いた、新たな目標や抱負。青春時代を過ぎた大人たちには、その熱い気持ちがなかなか持続できないもの…。しかし、本当にカッコいい大人だけは、その情熱を深く静かに抱き続ける――。
“一芸”しかないから、逃げられないんだ(笑)。
プロラリードライバーとしての夢をあきらめた男が、再起にかける姿を描く“大人カッコいい”青春映画『SS―エスエス―』。主人公は夢を実現させることなく、人生の半分を生きた男。俳優・遠藤憲一が演じるのは、主人公ダイブツ役・哀川翔のライバルにして盟友という役どころ。中年の男たちの夢と友情がテーマとなるわけだが、こういう設定のキャラクターを演じると、改めて感じずにはいられない。俳優・遠藤憲一は、つくづく、年齢設定の要らない役者だと。
「いや、もう46になりましたから(笑)。自分としては何も変わらないんですけどね。…最近気づき始めたんだけど、飲むと翌日残るというくらいかな(笑)。三池崇史さんの舞台「座頭市」なんて立ち回りが多いから、体を鍛えないといけなくて。飲みに行く回数を減らしたりはしているんだけどね(笑)」
その舞台でも好敵手役として共演している哀川翔とは、長年の“共演仲間”。
「翔さんとは敵役としての共演が多かったから、そういう意味ではこの作品は新鮮だったね。物語の冒頭では反発し合っているんだけど、最後には互いが昔の気持ちに戻っていくという、友情がテーマに絡んでくるんだ。相反したまま終わってしまうより、再び向き合うことでさらにドラマが生まれたのがよかったね」
哀川演じる主人公・ダイブツと、遠藤憲一演じるライバル・栗原は、かつて共に同じ夢を追った仲間。しかしその夢は破れ、2人は袂を別ち十数年が過ぎる。栗原はドライバーという夢を捨て去り、車の評論家として成功していたが、偶然にもダイブツの“走り”を見てしまう…。
「挫折した人は、素朴になるか、逆に自分を大きく見せようとするか。栗原も自分をごまかしていたけれど、ダイブツのおかげで本当の自分を見つけられた、ラッキーな男なんだ。最初はダイブツへの反発で車を走らせて、彼に迫るタイムを出す。でも次に走ったときは、果たしてこの生き方でよかったのかという迷いとともに走っている。最後には、ダイブツと競いながらも一緒の瞬間を生きている。お互い、突き抜けた表情でね。同じ運転シーンでも、そこに込めた栗原の感情を感じてもらえたらうれしいね」
大人の男の必需アイテムともいえる車だが、自身の愛車は…?
「ウチはファミリー向けのコンパクト車。それも女房が欲しいというから買った(笑)。実は俺、車ってほとんど運転しないし、興味もないんだよ。この車が欲しいとか、そういうのもなくてね。普通、男って車が好きなのにね。俺は撮影現場にも電車で行ったりするし(笑)。車の映画に出るのに、その辺のギャップはどうなのかな、と思って不安だったんだよ。こんなこと言ったら、車好きの人にガッカリされちゃうかな。でもウソをついてもしようがないしね(笑)」
そこが才能ある役者のおもしろさ。ハンドルのさばき方から目線、ギアチェンジ…ダンディーなルックスを含め、彼が車に興味ないと気づく者はいないのでは。
「一応、プロの指導は受けたから…ギアチェンジの速さとか(笑)」
すると、車以外の、大人の趣味がある?
「翔さんは本当に趣味をいっぱい持っているんだけど、俺は唯一趣味といえるのはカメラくらいでね。でも、写真はスチール(静止画)だけど、映画という仕事と続いている要素もあるじゃない。だから自分でも一芸しかない野郎だな、って思うんだけど(笑)」
人生の半分を生きた男たちの夢と迷い…。同じ世代としてどうみる?
「俺たちの世代というのは、どうしても1度立ち止まる時期だからね。人生の半分以上を生きてきて、“こんなものかな”とも思うだろうし、“このままなのか、これでよかったのか”と立ち止まっちゃう時期だとも思う。でも、20、30代に散々悩んできて、40、50代になってまた悩みたくないじゃない。だから “これでいいんだ”ってあきらめるか、そこをもう一度悩み苦しんで熱を取り戻すか。昔やっていたことをもう一度始めるとか、そういうこととはまた違うんだ。熱情、というのかな。惰性に入ったところから、突き抜けるには、もう一度悩まないといけないのかもしれない。若いころの熱が冷めてからが、本当の戦いかもしれないね」
20代の人にも、40代の人にも、深く伝わるだろう言葉。
「俺だって、どこかでやったような役だなと思っても、それをなぞり出したらもう終わり。新たなものを見つけていくのは苦しいけど、思い続けることが大事なんだよね。この映画に出て、そんなことを改めて思ったな。周りにもいるよ、同じ俳優で俺よりちょっと年下なのに、なにか飽きはじめてしまっているようなヤツがね。でもその気持ちはよく分かる。何十本も作品に出ている俳優なら誰でもぶつかる壁なんだ。そうするとね、違うことをやり始めるんだよね。そりゃそれで気分転換になればいいけど、逃げに走ったら怖いよ。あとは片手間で仕事をするようになってしまう。そうはなりたくない…というか俺、他になにもできないしね(笑)。だから、それはラッキーだったなって思うよ。器用な人間であれもコレもできたとしたら、楽しいほうを選ぶでしょ。でも他にできることがないから、逃げようがない(笑)」
1983年のドラマデビューから24年。
「うれしいのは、当時仕事をした同世代の仲間と何年ぶりに仕事して、認め合えたときだよね」
デビューした年にドラマで出会った佐藤浩市と、昨年、時代劇で再共演した。
「より深くなってたね。そうしたら向こうもそう言ってくれて、うれしかったな。表現の立場や置き所は違うんだけど、お互い第一線で生き続けてこられたこともうれしくて、ウチらの世代って強いな、なんて言ってさ。昭和35〜36年生まれ。翔さんもそう。この世代の人ってケンカっ早かったりもするんだけど、バカがつくくらい生真面目なところもあるんだ。でも俺、今の若い世代も好きだよ。小栗旬君とか高岡蒼甫君とか…。彼らは爽やかに真剣。ウチらのはアクがいっぱいついた真剣だけど(笑)。1回飲みに行くといつのまにか俺のほうが後輩みたいになる。知らないことが多いから、同じ目線で居られるせいかな(笑)」
“逃げ”“守り”“驕り”…本当にカッコいい大人は、そんなものを振り切って走り続けるものなのだ。
(本紙・秋吉布由子)
| 『SS-エスエス-』
監督:小林義則 原作:東本昌平 出演:哀川翔、遠藤憲一、酒井法子、MEGUMI他 リベロ配給/1時間40分/1月12日より新宿トーア、シネマート六本木他にて全国ロードショー http://specialstage.net/
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