
vol.341
話題のゴシックホラーミュージカルで本領発揮!
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』監督インタビュー
ティム・バートン
ゴールデングローブ賞では、作品賞(ミュージカル/コメディー部門)と、ジョニー・デップ念願の主演男優賞(ミュージカル/コメディー部門)を受賞! 話題の新作『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』でホラー大好きという本領を発揮したティム・バートン監督を直撃!
「ジョニーの歌声なんて鼻歌でさえ聞いたことなかったんだ」
取材前、メイクさんが見せた鏡にのけぞってみせた監督。「怖いから僕に自分の顔を見せないでよ!」。相変わらずお茶目な人だ。これまでにもチャーミングなテイストでゴシックホラーの表現を作品に作品に取り入れてきた監督だが、ジョニー・デップとの最新タッグ作では、なんとR-15指定が。題材は、無実の男が復讐のため商売道具であるカミソリを手に殺人を繰り返すという、トニー賞8部門に輝く傑作ミュージカル。
「そもそも(R-15指定になることを)避けようとも思ってなかったんだ。オリジナルである舞台を見て、本当にたくさん血が流れるのは知ってたからね。だからこの作品を作る以上、そうなるのは避けられないだろうな、と当初から思っていた。以前に流血描写を避けたテイストで製作された“スウィーニー・トッド”があったんだけど、それはまったく別物になってたね。やはり何かを失ってしまっていた。実際に、このストーリーの大元となるビクトリア朝時代の表現の仕方…流血表現とかね、それがまさにこの物語のエネルギー、物語の一部なんだ。それを抜いてしまうと、意味がなくなってしまうんだよ。でも僕は、血をリアルにするより印象派的に表現したくて、実際よりも強い赤にした。赤はスクリーンで見ると実際とは違って見える色で、この赤にたどり着くまでにすごい時間がかかったよ(笑)」
“悪い子だとスウィーニー・トッドが来るよ”と怖がらせるのにピッタリなのだが。
「実際に、ロンドンではそう言って聞かせることもあるらしいよ(笑)。そもそもスウィーニー・トッドが作り話なのか実在したのか、意外にも明確にされていない部分があって、ロンドンでは伝説のようになっているものだから」
監督が子供のころに怖がった存在は?
「僕の両親(笑)」
ご両親以外には? オバケとか…
「両親以外では、先生とかドクター…大人たちが怖かったんだよ(笑)。僕はモンスター映画を愛してたから、怖がるどころかそういうものにとても興味があった。両親が言うには、僕は本当に幼いころからモンスター映画を見ていたらしいよ(笑)」
今回の作品の大きな見どころの一つが、なんといっても主人公スウィーニー・トッドを演じるジョニデと、その共犯となるミセス・ラベット役ヘレナ・ボナム=カーターの歌声。
「そうなんだ。歌手でない2人がここまで歌ってくれたということ、それが僕にとって大きなサプライズだったね。鼻歌ですら聞いたことがなかったんだから(笑)。2人ともそうなんだけど、とくにジョニーは鼻歌を口ずさむような人じゃないしね(笑)。だから彼らの歌はぜんぜん聞いたことがなくて、彼らが確かに歌えるのかどうかまったく知らなかった。でも最初に僕は、彼に歌えるかどうか尋ねたんだ。すると彼はできると思う、と答えた。ジョニーは、できないことをできると言う人間じゃない。彼は自分のことをよく分かっていて、できる可能性があれば必ず挑戦してみる人間だ。彼ができないというならあきらめたけど、そう言ってくれた以上僕は彼を信じることができた」
これほどセクシーな歌声を持っているとは、ジョニデファンでも驚くのでは。
「彼の声を最初に聞いたとき、僕もセクシーだと思ったよ(笑)。歌手ではない彼がこの作品のためにここまでしてくれたなんて。本当にジョニーは素晴らしいよ。実はこの音楽はとても難しいんだ。なのに彼はそれをただ歌うだけではなく、自分のものとして、感情を表現しながら歌っている。それにはとても驚いたね」
歌声だけでなく、バートンワールドらしいメイクもかなり似合っている2人。ちなみにこのメイク、バートン作品ではよく見かけるが“バートン映画メイク”なんて名前がついていたり…?
「とくにこのメイクに呼び名があるわけじゃないんだ。僕はこういう感じが好きだから、そう呼ばれてもぜんぜん嫌じゃないけど(笑)。もとは昔のモノクロのホラー映画からきているメイクなんだ。奇妙な話なんだが、かなり昔 “スウィーニー・トッド”のスケッチを描いてみたことがあった。そのときはまだジョニーのこともヘレナのことも知らなかったんだけど、いま見たらこれが2人にソックリなんだよ(笑)。それを見たとき、この2人こそ、って確信したよ」
では最後に読者にメッセージを!
「舞台を見たときから、この物語が非常に珍しいものだと感じていた。ミュージカルなのにホラー。どちらのジャンルのファンにも、新しい世界観を楽しんでもらえる作品だと思います!」
もともと、ティム・バートン作品は世代を問わないチャーミングさを持ちながらも、大人のために描かれた寓話のような意味深さとウィットがあった。それが最大限に発揮された作品なのかもしれない。
(本紙・秋吉布由子)