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撮影・加藤大毅/スタイリスト・土屋詩童/ヘアメイク・ hanjee
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vol.344
『チーム・バチスタの栄光』
阿部寛
また楽しみな推理エンターテインメント映画が誕生した。現役医師でもある海堂尊による原作を、豪華キャストで映画化した『チーム・バチスタの栄光』。厚生労働省のキレモノ役人という、かなりユニークな謎解き役を任されたのはもちろんこの人、阿部寛!
「観客が映画を見ながらいろいと推理してくれて…犯人が当たらないといいな、と思ってるんです(笑)。僕も、最初に脚本を読んだときには最後まで犯人が分かりませんでしたからね。それに、中村義洋監督の前作『アヒルと鴨のコインロッカー』も、ストーリーを先読みできなくて、最後にどんでん返しがあって…あの作品を撮った監督だから、そこも期待していたんですよ。本作のような題材だと、普通はエンターテインメント性ばかりが強くなりがちなんですけど、中村監督なら『アヒルと――』のような、ちょっと変わった作品に仕上げてくれているんじゃないかと(笑)」
阿部にそこまで期待させる中村監督とは、どんな人?
「監督はね…現場ではかなりの“S”でした(笑)! 僕だけじゃなく役者全員に対して、公平に “ここはそうじゃないんです。こういう感じで”って言うんですよ。パターンの演技をしても、まずOKは出ない。どう演じるかという相談をしてから撮影に入るんですけど、そこでも妥協しない。つまりそれだけ、監督は丁寧な演出をしてくれていたんです。演技者として、新しい作品を作るときにはどういうふうに演じようかと迷いながら入っていく。むしろ、そこが固められていると面白くないんですよ。現場で起こる化学反応が、面白かったりするんですよね。そこを、中村監督は協力して一緒に作ってくれる。これはありがたいことです。だから、監督に対する役者たちの信頼も本当に強かったんですよ」
台本でもリハーサルでも伺い知れない、撮影現場での“化学反応”を、プロフェッショナルな役者同士がどうさばくのか―推理小説に劣らずエキサイトしそう。その化学反応の妙を感じたのは、やはり白鳥の“相棒”田口公子役・竹内結子との演技シーン。
「白鳥という男は一方的にしゃべり倒しながら相手の様子を伺い、ペースをつかんでしまう男。当然、僕もそういう感じでセリフを言うわけですが、そのセリフに対して(竹内さんは)こう返してくれるんだろうな…と予め予想していると、そう返ってこないんです(笑)。“ちょっと何かやりづらいな”…と思っていたら、実は監督が竹内さんにそう指示を出してたんですよ(笑)。逆に竹内さんも、僕がこうしてくれるだろうと考えていたことがあったと思うんですが、監督が僕のほうだけに“ここではこうしてください”と演出してくる。だから最初のうち、お互いにギクシャクしちゃって(笑)。でも実は、そこに化学反応が起きていて、すごくリアルなものが生まれていたんです」
つまり、キレモノの白鳥に振り回されているようで翻弄されない田口…という構図のための演出だった…?
「田口は意外と個性が強い人物で、他の人のように白鳥に翻弄されるタイプじゃないんですよね。“こう言ったらこう返して”と思っているところで待たされたりすると、僕は竹内さんのことを凝視するわけですよ。そこに“間の芝居”というようなものができてくる。そこを“S”の監督は楽しんでいたんじゃないのかな…笑ってましたから(笑)」
そんな白鳥・田口コンビが挑むのは、バチスタ手術のために集められた精鋭集団。演じるのは、それこそ“精鋭”の役者たちだ。チームを率いる天才外科医・桐生を、アーティストでもある吉川晃司が演じているのも話題の1つ。
「吉川さんは優秀な外科医という役どころなんですが、すごく真面目に取り組んでいて、完全に役の世界を作り上げていましたね。現場でちょっと緊張されている様子で、そんな吉川さんを見て僕はすごくびっくりした。役に対して、本当に集中して挑まれる方なんです。そういう姿勢を見せられると、うれしいですよね。役作りというのは安易にはできないもの。1つの役を本当に誠実に作ろうとしたら緊張するんです。僕は “その場の雰囲気”によってダラダラと作っていく現場が嫌いなんですけど、吉川さんもそういうものにとらわれずに役に入れる方なんだな、と思いました。今回は、監督は人の演技を見ながら笑っているような人でしたけど(笑)、こだわるところは“S”ですからバランスが取れていて、和気あいあいとやりながらも緊張感と集中力があって、すごく空気のいい現場でしたよ」
それにしても、役者歴だけでなく出演作の多さを考えると、阿部という役者のスタミナと引き出しの多さを再認識する。
「昔、モデル出身からこの世界に入ったときには“よくて3年だよ”なんて言われても、そんなことない、と聞く耳を持たなかった。でも今思うと…よく残ってるな、と(笑)。ただ、どんな役でも以前にやった役とは絶対に違うように演じてきた。微々たるものかもしれない、自分の自己満足かもしれないけど、とにかく自分の1つの貯金にしていこう、と思って続けてきたんです」
今回に限らず、これまでにも色の濃いキャラクターを度々演じてきだが、そのつど新たな驚きで観客を楽しませる。
「ドラマで6番手・7番手の役をよくやっていた時期があったんですが、そのあたりの役って、7話目くらいから常軌を逸してくるんですよ(笑)。そんな役が続くと、だんだん防衛本能が働いて分かるようになるんです… “これは絶対、7話か8話で変なキャラクターになるぞ!”って(笑)。そのときに、視聴者に見捨てられない人物像を作っていかなければならないと学んだんです。最初からちょっと変わったエッセンスを入れてみたり、いろいろ工夫しましたね。それで、かえって変わった役が得意になったという…やむを得ずの手段だったんですよ(笑)」
物語の中で、人物像を動物に例えて把握するエピソードがあるが、阿部自身を動物に例えると…?
「うーん、やはりタヌキでしょうね。自分のペースでないようでありながらも、自分をしっかり保っていて。ただ、自分自身でも自分のことをつかみきれない…得体が知れない、というか(笑)」
変幻自在なタヌキとは、役者のあるべき姿かも? そんなタヌキたちとの推理合戦、罠にはまるのは当然、観客のほう。
(本紙・秋吉布由子)