
vol.344
JT・日清食品が冷食事業の統合白紙 ギョーザ中毒事件が波紋
日本たばこ産業(JT)と日清食品は6日、JTが買収した加ト吉に冷凍食品事業を集約する統合計画を白紙撤回すると発表した。JTの冷食事業子会社が輸入販売した中国製ギョーザによる中毒事件の影響で、統合をめぐる意見の食い違いが生じたことなどが原因。両社の社長がそれぞれ記者会見し明らかにした。
事件発覚後初めて会見したJTの木村宏社長は「生活の基本である食の安全について、多大なるご心配をおかけし衷心よりおわび申し上げます」と陳謝。「今果たすべきなのは解決に向けて取り組むことだ」として、引責辞任を否定した。一方、日清の安藤宏基社長は「食に対する安全性の考え方に違いがあった」と述べ、JTの対応に不満を示した。
JTでは、食品事業をたばこに次ぐ柱に育てる成長戦略への打撃にとどまらず、経営責任問題に波及する可能性がある。日清は、米系投資ファンドによる株式の大量保有問題を抱えており、早急な戦略の練り直しを迫られるのは確実だ。
白紙撤回は、事件で「事業見通しが不透明になった」(木村社長)ことに加え、日清がJT主導では「中途半端になる」(安藤社長)と不安を覚えたことが原因だ。だが、根底には、加ト吉をめぐる「主導権争い」があったとみられる。
中国製ギョーザ中毒事件は、中国製食品や中国産食材の輸入代行を手掛ける大手商社のビジネスモデルにも大きな影響を及ぼしそうだ。各社とも、原材料の調達に加え、流通企業への資本参加により、「川上」から「川下」までを手掛け、食品事業を強化してきた。事件を受け、各社は調達先の変更などの検討に乗り出したが、食品ビジネスは今や“中国抜き”では成り立たないのが実情だ。
天洋食品からの輸入を代行していた双日の子会社、双日食料の昨年の輸入量は中国を中心に約2000トンに上る。全世界に300社強の取引先があり、安全管理を徹底するよう指導する文書を発送するなど対応に追われている。
中国食品の問題が相次ぐなか、各社とも調達先分散を模索してきた。ただ、「中国は広大な面積を持ち、気候も日本に似ていて通年で生鮮野菜を生産できる。加工工場も含め他の地域への移行は簡単ではない」(日本貿易振興機構)との指摘は多く、対応に苦慮している。
(ビジネスアイ)