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vol.345
(2008.02/18-02/24)
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INTERVIEW vol.345

2007年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品
『4ヶ月、3週と2日』監督

クリスティアン・ムンジウ

2007年のカンヌ国際映画祭を沸かせたのは、ルーマニアの新鋭監督が手がけた『4ヶ月、3週と2日』。この謎めいたタイトルが伝えるのは、友情とスリルと“1987年のルーマニア”。

「喜びとか感動とかそういう気持ちよりも、とにかく“スピーチをしなくちゃ!”ということで頭がいっぱいでした。あの瞬間はそれほど楽しめるものではないですよ(笑)。本当の重みを、すぐに理解することができませんでしたね。この賞が世界中の人からどれだけ敬意を払われていることか…受賞したおかげで、60カ国以上で上映されることになりました。受賞の6カ月前には資金にも困っていたくらいなのに(笑)」

 本作で描かれているのは、中絶非合法だった独裁政権時代のルーマニアを舞台に、ルームメイトの中絶を手助けしようと奔走するヒロインの1日を追う物語。そう、この謎めいたタイトルは妊娠期間を表しているのだ。

「まず、僕が描きたかったのが独裁政権下時代のこと。そのルーマニアで生きた人々の姿でした。時代とは非常に抽象的で、物語があれば描くことができる。そして、あの時代を如実に物語っているのが、映画で描かれたような出来事だったのではないかと思ったのです。僕は1968年生まれで、中絶合法になったゆえに起こったベビーブームで生まれた世代なんですが、その後も当時の影響が長きに渡ってルーマニアに混乱や不安を生み続けました。映画で語られていることは、当時実際に体験した人から、僕が話を聞いたことです。非合法な中絶手術によって50万人もの人が命を落としたそうです。今振り返ってみると、子供を産むにしても中絶することにしても倫理的判断というものが無いに等しい時代でした。共産主義的教育のなしたことですね」

 しかし本作は、そんなルーマニアの負の歴史を訴える映画ではない。

「そういう時代を語ってはいますが、本当に描かれているのはあくまで普遍的なこと。これは困難な状況に陥った人たちの物語であり、恐怖が世の中にはびこっていた時代、普通の人たちがなんとか自力で生きていく姿を描いている映画でもあります。おそらく歴史的背景を知っていればまた違う見方ができるでしょう。でも、そんな知識が無くても、人間的なレベルで訴えてくるものがあると思います。2人のヒロインの姿を通して、テーマは伝わるはずです」

 親友を助けようと奔走する主人公オティリアを演じるアナマリア・マリンカと、望まぬ妊娠をしてしまった親友ガビツァ役のローラ・ヴァシリウは、ともに当時を知らない“現代っ子”。

「たくさん賞をもらいましたけど、僕が一番うれしかったのは、2人がこの映画に出るまで中絶について考えもしなかったと語ってくれたこと。2人とも、誰が相手でもオティリアのような手助けはできないと言うので、僕はその時代について説明したんです。自分たちをコントロールする国家は敵であって、人々はもっと近しかったこと。困難に対して自分たちで助け合うしかなかったこと。次の日友人に会えるかも分からなかった時代だと。でも、彼女たちには解釈しようとしちゃいけない、演技しちゃいけない、と話しました。とにかくその場の状況に反応すればいい、と。ただ台詞は完全に台本通りにと要求しました。作品はとてもシンプルに見えますよね。でもこの簡潔さに至るまではとても大変でした。映画のリアルさというのはアドリブからは生まれないと思ってます」

 結果、誰もが覚えのある“不安に翻弄されながらも、なんとかしなければいけない”状況に陥ったヒロインの物語が生まれた。ラストでは1つの終わりが描かれるが、それは解決ではない。

「この後どうなるかを語らずに、終わりますよね(笑)。これは僕の映画作りのスタイルで、僕は結論を導こうとするような終わり方が嫌いなんです。そういうのって、いかにもって感じですごく恥ずかしくなってしまうから(笑)。しかし、少なくとも主人公のオティリアはこの体験から何かを学んだことでしょうね」

 自分の信念に正直に、しかし観客と感情を分かち合える作品を作っていきたいと語る監督。その瞳の光の強さが、カンヌからまた1つ大きな才能が飛び出したことを確信させてくれる。




(本紙・秋吉布由子)

『4ヶ月、3週と2日』監督:クリスティアン・ムンジウ 出演:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ他 コムストック・グループ配給/1時間53分/3月1日より銀座テアトルシネマ他にて公開 http://www.432film.jp/


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