
vol.347
“スーパーパワー”に愛される男 映画『ジャンパー』主演
ヘイデン・クリステンセン
宇宙史上最強のフォースの持ち主に続き、今度は空間を瞬時に移動できるスーパーパワーを持つ男。俳優、ヘイデン・クリステンセンがまた新しい力を手に入れた。今、最もパワーを引き寄せる(?)男に、最新主演作『ジャンパー』について聞く。
好青年そのものだ。スッキリとした髪も、ネイビーのニットからのぞくタイも、清潔感にあふれている。さらに、外見だけじゃない。挨拶を交わしたあとも、立ったままでなかなか腰を下ろそうとしない、控えめな雰囲気。好感度もアップする。そのまま互いの顔を見ること、数秒。「まあ、座りましょう」といった時の飾らない笑顔に、ノックアウトされた。これもまた、スーパーパワー?
世界中がどんな動きにも注目する、ヘイデン。大ブレークのきっかけは、映画『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』だった。この作品で、アナキン・スカイウォーカーを熱演。その後の「ニュースの天才」では記事を捏造する若きジャーナリストを演じ、作品ごとに演技派俳優としての地位を固めてきた。そして、最新主演作として選んだのが、『ジャンパー』。
「すごいスペクタクル作品だし、脚本を読んですぐ演じてみたいと思った。ただ、出演を決めた最大の理由は、ダグ・リーマン監督の作品だったから。いい作品を何本も作っているし、いつか会ってみたいと思っていたんだよね。彼の素晴らしさは、撮影を通じて、再確認させられた。ただ素晴らしいっていうだけでなくて、優れたストーリーテラーであり、コミュニケーターでもある。毎日現場に行くのが楽しくてしようがなかった。最高の監督だよ」
『ジャンパー』は、特別な能力を持った男のストーリーだ。ヘイデン演じるデヴィッドは、ある事件をきっかけに、自分が行きたいところへ瞬時に移動できる“ジャンパー”であることに気づく。彼は、その力を使って楽しんだり、悩んだり、戦ったりしながら、成長していく。
「デヴィットは、結局、ヒーローになりたくないヒーローなんだ。言い換えれば、とても正直な人間。彼は自分がスーパーパワーを持っていること知って、“さあ、世界を救いに行こう”ってコスチュームやタイツをはいたりせずに(笑)、自分のために力を使う。それって真実のリアクションだよね」
主人公の正直さは、作品そのものも正直にしている。作品のなかで、ジャンパーたちは、リオデジャネイロ、ロンドン、フィジー、キリマンジャロと気ままに移動。カイロでは、スフィンクスの上でランチとしゃれこむ。なかには一瞬で過ぎ去るようなシーンもあるが、すべて現地に赴いて撮影した。
「残念ながらスフィンクスの頭の上に登ることはできなかったけど、世界中を旅した。日帰りでパリ撮影なんてこともあったし、確かにタフだったけれど楽しかったよ。ブルースクリーンの前に立てば済むような時代だけれど、その場所に行かないと感じられないこと、そこにいるからこそ生まれてくるものってたくさんあるからね」
ローマではコロッセオで対決シーンを撮影。かつてグラディエーターが戦った場所で、古えのファイターたちのスピリットも感じたと笑う。もちろん日本にもやってきた。新橋、渋谷、お台場、秋葉原をドライブしている。
「シルバーのメルセデスベンツで、ジェイミー・ベル演じるグリフィンとドライブするんだ。実際は、役の扮装をしたスタントドライバーとなんだけど(笑)。僕も車を運転するのが好きだから、横でクレイジーなテクニックを見ているのは楽しかったね」
ヘイデンいわく、いろいろな見方ができる作品だという。
「エンターテイメントでありつつ、たくさんの興味深いアイデアが挿入されているスマートな作品。見る人すべてが分かってくれるとは思わないけれど、ジャンパーとパラディンの対立と現実の世界で起こっていることに関連付けて見ることもできる。それがリーマンの賢さなんだ。ただ、それに固執することなく、楽しんでもらえればいいね」
究極の力を得た、いたって普通の1人の少年が成長していくさま。「スター・ウォーズ」シリーズでスーパーパワーを得てしまった本人にも重なる。
「僕は永遠にアナキンの影からは抜け出すことはできない。それは仕方がないことだと思っている。人が僕に対してどういった印象を持ち続けるかはその人次第であって、僕が変えることなんてできないしね。だから僕は、自分が楽しめる役や役者としての成長できるような役をやっていくだけだよ」
まだ27歳。役者としても、一個人としても、ますます油が乗ってくるとき。取材後に交わした力強い握手に、ヘイデンの確かな未来を感じた。
(本紙・酒井紫野)