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vol.347
(2008.03/03-03/09)
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写真:加藤大毅
INTERVIEW vol.346

黒色綺譚カナリア派

赤澤ムック

 現在、いやずいぶん前から小劇場ブームといわれて久しい。テレビをつければ小劇場出身の役者の進出は目覚しく、作家、演出家の他分野での活躍も多く目にする。そんな小劇場界のなかで一際異彩を放つ劇団がある。「黒色綺譚カナリア派」、率いるは「赤澤ムック」。

プライベートなんて芝居の犠牲になって当然

 2003年に旗揚げ以来着実にそのシンパを増やし、番外公演を含めば9回目の公演にして、今回、青山円形劇場に進出する。

「運が良かったんだと思います。同系統のライバルがいなかった。もっともライバルがいなくても勝てないときはあるわけですから、それを差し引いても運が良かった」

 この劇団、一言でいうなら「アングラ」そして「耽美派」。

「劇団を旗揚げする段階で、このジャンルは薄かった。逆にこういう系統の劇団が多かったら、歌って踊ってというスタイルでやっていたかもしれない。でも一番自分がやりたいと思ったことと、隙間が合致したというのがとても運が良かったと思うんです」

「現代口語演劇」が主流を占める昨今の小劇場界を見回すと、確かに隙間ではある。

「例えば口語演劇が好きな人でも、そればかり見ているわけではないと思うんですね。いろいろお芝居を見ようとする中で、『耽美系』を探していたら、カナリア派にぶつかって見に来たという人も多いと思うんです。アングラのイメージで観客を引っ張ってはいますが、実際に見てもらえば、ただのアングラじゃないんだという印象を与えられているとは思うんです。そして、そんな話を人づてに聞いて来て下さる観客が増えたんじゃないかな」

 現代の空気感とは一線を画す脚本、繊細でありながら大胆なまでに華美な舞台セットに魅入られる観客は多い。

「今は演劇っぽい演劇があまりないと思うんです。私は野田秀樹さんのお芝居が好きなんですが、例えば野田さんが創るような、舞台という特性を生かした演出、舞台でしか成立しない作品というものが小劇場の中では減ってきている。流行もあるんでしょうね。懐古ではなく、せっかく舞台をやってるのにって、もったいなく思うんです」

 アングラとか耽美派というのはある程度、主宰の人間性や力技みたいなものが大事だったりする。カナリア派の舞台では役者、スタッフ、そして客席にまで、赤澤イズムが行き渡る。

「完全なる非日常『作品を鑑賞する感覚』を客席に作るようにしてます。劇場を美術館のイメージで。決して踏み込めない圧倒的な空間を。劇団員を心酔させるのにも死力を尽くしてますよ。脚本にとっては1番最初の観客ですし、『面白い!』と思ってやってもらわなきゃ、人へは伝わらない。公演の劇評を、良いものだけ抜粋して読ませたりね(笑)」

 芝居にかける想いは並々ならぬものがある。

「人でなしなんですよ。プライベートなんて、芝居のための犠牲になって当然だと思っています。芝居のためなら何をしても許されるってね。周りはいい迷惑ですよ。親は既に泣き疲れて開き直ってます。親族が死んだ時も死に目にあえてません。稽古優先でした。そんな若いころを過ごしてしまったんで、こりゃ最後まで貫かなきゃなって思っています。日々の後悔は、自分へのプレッシャーになりますから。すべては作品のために。ついでに、友人らに不義理をしても『こりゃ遊べなくて当然だわな』と納得してもらえるように(笑)」

 赤澤は時に冗談めかして「口語演劇なんてなくなればいいのに」なんて発言もしたりする。時折見せるこの“激しさ”に同志的シンパシーを感じる演劇人も多い。多分、観客もこの“生きざま”を見に来ているのかもしれない。だからというわけではないが、古きよき小劇場ブームを支えた年代の人や若い人でもそういう時代を知る人が多くやってくるという。

 最後はこんなつぶやきでこのインタビューは終了。

「最近、『ムックって恋人いらないよね』と言われてます。ひどい偏見だ!人並みに結婚願望だってありますよ。結婚生活や、出産を経験をすると、一皮むけそうじゃないですか、作風が。あれ、結局、戯曲の事しか考えてませんね(笑)。もちろん幸せになったってハングリーな欲望は消えないだろうし、それが消えて無くなるような幸せなら、いらないと考えちゃうんです。だけど私は欲しいと思うものすべてを手に入れたい。矛盾していますね」




(本紙・本吉英人)

第八回公演「葦の籠〜アシノカゴ〜」
青山円形劇場 3月19〜23日

 大雨の昼下がりに子供と妻を失った男は茫然自失なままたどり着いた町外れの川原で出会った、幼き男娼の少年とその祖母である老婆を失くしてしまった妻とわが子に見違える。少年と老婆も喜んで男の妄想に取り入るのだが、似非「家族」は倒錯を決壊させ現実へ還り、その狂想は、男の妄想を拒絶する渦となる。  足を滑らせれば浮かび上がれぬ濁流轟く川原劇。

【日時】3月19日(水)〜23日(日)(開演は水金19時、木土14時/19時、日13時/18時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売)【会場】青山円形劇場(表参道)【料金】全席指定3800円【問い合わせ】黒色綺譚カナリア派(TEL . 090-8461-4699 〔HP〕http://www.kokusyoku.com/)【作・演出】赤澤ムック【出演】大沢健、下総源太朗/升ノゾミ、牛水里美、斉藤けあき、山下恵、吉川博史、芝原弘、中里順子、赤澤ムック(黒色綺譚カナリア派)/眞藤ヒロシ、宮地大介、伊藤新、星耕介、湯田昌次、尾崎宇内、立元竜生、堀越涼、佐々木富貴子、堀川炎、渡邉とかげ


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