
vol.347
イージス艦事故で防衛省が海保に無断で航海長を聴取
海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、防衛省が、海上保安庁の捜査前にあたごの当直士官だった航海長をヘリコプターで省内に呼びつけ、事故に関する聴取を行っていたことが26日、分かった。
防衛省が当直士官の航海長をヘリで東京都新宿区の省内に呼んだのは事故から約6時間後の19日午前10時すぎ。約1時間にわたって聴取し、再びヘリであたごに戻した。
26日午後に会見した吉川栄治海上幕僚長は「自分の判断で航海長を呼んだ。19日午前10時前に(海自の)横須賀地方総監部から横須賀海上保安部に連絡して了承をとった」と海保側に事前連絡したことを強調。防衛省幹部は「聴取内容も一部伝えた」としているが、海上保安庁と第3管区海上保安本部(横浜)は「そうした事実は確認していない」と否定した。
さらに、海上幕僚監部は19日深夜にも、海保側に通告しないままあたごに戻った航海長や乗組員から電話で事情聴取しており、海保を所管する冬柴鉄三国土交通相は26日の会見で「捜査権限がある私どもの了解を得てやるのが筋」と述べ、防衛省の対応に不快感を示した。
また、航海長をヘリに同乗させる際、第3管区海上保安本部に対し「けがをした隊員に付き添わせる」と説明していたことも分かった。海上幕僚監部の幹部は「だましたと言われたら謝るしかない」と認めた。
この問題で、防衛省の増田好平事務次官は27日夜、海保側に事前に通報はしたものの、了解は得ていなかったと釈明。海保が正式に報告を受けたのは、航海長への聴取終了後に海幕が海保警備課長に入れた「あたごの航海長から今事情を聴いている」との連絡だったことを認めた。増田氏は海幕による聴取のほかに石破茂防衛相が直接、大臣室で航海長から1時間にわたって聴取を行っていたことも明らかにした。石破氏による聴取には増田氏、斎藤隆統合幕僚長、吉川栄治海上幕僚長ら同省・自衛隊幹部10人以上が同席し、海幕による聴取終了後に約1時間行われたという。石破氏は27日の衆院予算委員会分科会で、結果として海保側に無断で航海長を聴取したことを認めた上で陳謝した。
また、あたごの乗組員が漁船の灯火を最初に視認したのは衝突の「2分前」ではなく、「12分前」だったとの情報を、防衛省が20時間公表していなかったことも25日に判明。あたごの乗組員が、漁船の灯火を最初に視認した時間について、石破茂防衛相に報告があがったのは19日午後8時半ごろ。当初は「不確定だが9分前」との報告で、その後の確認で「12分前」となり、最終的に情報が公表されたのは20日夕となった。
この問題で、石破茂防衛相は26日午後の衆院安全保障委員会で、最初に事情聴取を行った航海長が「2分前」と述べたため、情報の追加確認に時間がかかったと釈明。石破氏は公表遅れについて隠蔽意図を否定するとともに引責辞任はしない考えを表明した。