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「風のあるところで撮りましょう」と近くの公園に出て。後ろに映っているのは、今回のパンフレットでデザイナーを務めた吉岡秀典さん(祖父江慎はアートディレクション)
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vol.349
祝祭音楽劇『トゥーランドット』
祖父江慎インタビュー
“慎”の字
赤坂に誕生した「赤坂ACTシアター」。そのグランドオープンを飾るのは、『トゥーランドット』。今回のインタビューは、そのパンフレットを作り上げたブックデザイナー・祖父江慎。偉大なるデザイナーに敬意を表し、標題に「慎」の字を捧げちゃったりします――。
言葉ってカタチを持ってそうで持ってないんだよね。
作品それ自体もさることながら、類稀な才能とキャラクターで知られ、愛されている“自称”「ブックデザイナー」<注1>の祖父江慎。今回、赤坂ACTシアターのグランドオープンを飾るミュージカル『トゥーランドット』のパンフレットを手掛けたが、ほんの数ページのこの中にも祖父江らしさが詰まっていた。
「メインビジュアルは牧かほりさんのドローイングで行くというプロデューサーとの打ち合わせからスタートしました。繊細だけど大胆で、ゴージャスな牧さんの絵に感動しました。トゥーランドットは、さまざまな人間模様が織り成される物語なので、写真については『風を感じさせるように』ってカメラマンにお願いしたんです。水やら炎やら風やら“気象”な感じが似合うでしょ」
おそらく。ここまでのお話は読者にも“デザイナーの仕事”として想定の範囲だろう。ここからが本題。大胆なデザインが目を引くが、よくよく見ると、文字がちょっと違うのだ。
「文字はね、やっぱり古風に、活版初期の時代<注2>の骨格がきれいなモノを選んで使ってるんです」
つまり、古い書体を選んでいると?
「ええ、データを伝えるところは読みやすい書体で、内容を伝えるところは時代を感じさせる古風で骨格の美しい書体を選んでいるんです。このアオリ<注3>(パンフレット観音開きの右外側)は、やや女性的な感じを出すために、横組みにすると縦に長くて優しく、美しい書体なんです」
先ほどから再三上がっている“骨格”という言葉だが…?
「文字の形のことです。日本語の文字は、第二次世界大戦を境に仮想ボディー<注4>優先の文字が広く使われるようになったんです。負けてる戦争だと紙もインクも物資不足で少なくなってくる。そうすると小さい文字が使われるようになるんです。日本は戦中からずーっと仮想ボディー優先で小さい文字が続いているんですけど、最近になって文字が大きくなってきていますね。これ実は文字が昔の大きさに戻っているんです。最近、古い書体の復刻版が人気ですが、これは単にかっこいいということだけじゃなくて、その大きさにふさわしい書体デザインになっているからだと思うんです」
その極みが『トゥーランドット』という題字である<注5>。
「この書体は明治5年前後の廃藩置県のときに一瞬だけ存在した若松県で使われていた布令書の文字なんです。しかも木版から金属板に変わる時期のもので、多分木版を彫っていた人が銅版を掘り起こした文字なんです」
たかが書体、されど書体。文字への偏愛がこれほどとは。そしてまた、祖父江の文字への愛は表現への愛でもある。
「書体って、どういう内容を誰に伝えるかによって変わっていくものなんですよ。そんなに難しいことじゃなくて、例えば手紙を書くときに、ラフな感じで書くのと、丁寧に書くのと、相手にとって受ける思いが違うじゃないですか。言葉って決まったカタチを持っていそうで実は持っていないんだよね。言葉もそうですけど、伝え方によって変わる。印刷が完全に工業化してからはルールがムダに固くなってきちゃって、組み方だってこうじゃなきゃダメ、書体はこうじゃなきゃダメ。でも内容はいろいろなんです。なんでも決まってたんじゃ、どんどん伝えづらくなっちゃいますよ。自由さのなかでそれぞれが工夫して、伝える内容に応じて、文字のカタチも並べ方も変えるのが当たり前のことなんじゃないか、という気がしてますですよ(笑)」
(本紙・土屋季之)
| <注1>「装丁」とは一般的に本の表紙回りの全般のデザインを指すが、祖父江のように本の大きさや形、本文や中身まで扱うのはやや“一般的な装丁”とは異なるため「ブックデザイナー」と語っている。「全部ひっくるめて“装丁”でもいーのかもねぇ…」。<注2>金属活版は、明治初期から昭和後期にかけて幅広く使われていた。<注3>アオリとは、大づかみな内容を伝える宣伝文のこと。<注4>日本独自の発想で文字がすっぽり入る仮想の四角のこと。この四角いっぱいの形になると“仮想ボディー優先”、余白が大きくノビノビとした文字を“骨格優先”という。<注5>パンフレットの題字
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祝祭音楽劇『トゥーランドット』
“アジアのトゥーランドット”として甦った本作は、演出に宮本亜門を迎え、作詞に森雪之丞、衣装はワダエミ、そして久石譲が全曲を書き下ろしたという豪華な製作陣に、出演者も、北京オリンピックの開会式でテーマ曲を歌う候補にも選ばれている台湾の歌姫・アーメイ、岸谷五朗、中村獅童など国内外の実力者が揃った。
【東京公演】3月27日(木)〜4月27日(日)【会場】赤坂ACTシアター【料金】S席:1万3500円、A席:9500円【予約・問い合わせ】チケットスペース:03-3234-9999(www.ints.co.jp/)
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