
vol.349
参院で「武藤氏不同意」日銀総裁は白紙
19日に任期切れとなる福井俊彦日銀総裁の後任人事をめぐり、参院は12日の本会議で、政府が提示した総裁に武藤敏郎副総裁、副総裁に伊藤隆敏東大大学院教授を起用する人事案を民主など野党4党の反対多数で不同意にした。白川方明京大大学院教授を副総裁とする案は同意された。
衆院は13日の本会議で武藤氏らの人事案を同意したが、同意人事に衆院の優越規定はない。
自民、公明両党は12日、国会内で衆参の幹事長・国対委員長会談を開き対応を協議。14日に予定していた衆院の同意議決を13日に前倒しし、その後両院協議会を開く方針を決めた。この直後、自民党の大島理森国対委員長は民主党の山岡賢次国対委員長と都内でひそかに会談し、政党間協議を打診した。だが、山岡氏は「与党が武藤総裁案に固執する限り協議に応じない」と突き放した。
政府が武藤氏を総裁に充てる人事案を再提出すれば、野党が過半数を占める参院は、同一議案を審議しない慣例「一事不再議」を盾に人事案をはねつける公算が大きい。19日までに自民、民主両党が合意するのは難しく、暫定的に白川氏が総裁代行に就任する可能性が出てきた。
福田康夫首相が意地をかけて提示した日銀人事案だが、不同意は想定内のはずだったにもかかわらず、民主党を過大に期待したツケは大きく、自滅した感は否めない。首相は同夜には記者団に「正直言って、どうして今度の提案がよくなかったのか理由がよく分からない」と民主党を厳しく批判した。
一方、民主党は「経済に悪影響が出る」との世論の高まりに戦術の練り直しを迫られる。衆院解散・総選挙で政権交代を目指す小沢一郎代表にとって、総裁空席を招き世論の非難が強まれば、政権奪取も遠のきかねないからだ。しかし、今さら武藤氏を容認するわけにはいかず、同党幹部らは武藤氏に代わる新たな候補を政府に提示させようと、福田康夫首相と小沢氏の党首会談や政党間協議の可能性に言及した。
白川氏が代行濃厚も… 国際的信用低下に拍車
戦後例のない「総裁空席」の可能性が一段と高まっている。新総裁が決まらないまま白川方明京大大学院教授が副総裁に就けば、そのまま総裁を代行する見通し。国際的な金融市場の混乱への対応とともに、総裁不在という異常事態に対しても、白川氏は難しい舵取りを迫られる。
たとえば不測の事態が起きた場合、白川氏が総裁代行の立場で機動的に政策を運営できるかは不透明だ。
さらに、来月中旬にはワシントンで先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれ、総裁代行として白川氏が出席する見通し。サブプライム問題の混乱が世界に広がる中、G7は主要国の協調を確認する重要な場となる。
本来なら日銀新総裁のお披露目となるはずが、世界第2の経済大国の中銀総裁不在という異常事態は、日本に対する国際的な信用低下に拍車をかけそうだ。