
vol.350
東京スカパラダイスオーケストラ
NEW ALBUM『Perfect Future』
谷中敦・茂木欣一
インタビュー
大きく出たものだ。“パーフェクト”。しかし、その言葉がまったく遜色なく響くのが、東京スカパラダイスオーケストラ(以下「スカパラ」)のNEW ALBUM『Perfect Future』だ。来るべき“未来”、そして新しいスカパラの姿がそこにある。バリトンサックスの谷中、ドラムの茂木両名が語るスカパラの未来にかける思い――。
It's PERFECT
「去年ベスト盤が出て、その前には『WILD PEACE』が出て、明るくて強くてかっこいいスカパラっていうのはひとまずできてしまった、そういうのがあるんですね。だから、次のタイトルには、それに負けないものを考えなきゃ、と出てきたのが『Perfect Future』だったんです」
と谷中。いつもと変わらない真っすぐな強い視線で、とつとつと噛み締めるように話すその言葉には、心なしか拳を握り締めるような押し殺した強さが潜んでいるような気がする。
「今度のアルバムでは、いろいろなこだわりが結実して1枚に仕上がったんです。今までにはない細かな挑戦をたくさん積み重ねて。それぞれのアイデアを形にするのに、普段なら1日5時間で済むものを10時間かけたりして」
音へのこだわりは、今まで以上に深化している。アルバムを聞くと、一見今までと変わらないようでありながら、聞き流せない何かがそこここに散りばめられているのだ。茂木はこう語る。考え考え話す風情の茂木の言葉はいつだって思索的で刺激的だ。
「音的には、アレンジにはいっぱい時間をかけたね、うん。この10年間でいろんな方程式――こういうところにこういう落とし込みをすればいいね、っていうのがあって、ベスト盤ではそれが形になっているんだけど、今度はそれを全部排除したくなっちゃった(笑)。アレンジしている途中でも、一旦完成形に近づいたものに待ったをかけたり、ギターの加藤くんは現場にコンピュータを持ち込んで、メロディーを切り刻んで別の音を持ってきたりとかしてね。結構それが刺激的だったんだよね、うん。まず自分たちが刺激的になりたかったんだよね」
“Perfect”という言葉にはさまざまな思いが込められいてる。だからこそ、いつも以上に時間をかけたアレンジが行われたわけだ。
「僕らも未来を見据えて音楽を作る年齢になったのかなって。若ければパンクみたいに“No Future”って言ってもいいかもしれない。でも僕らがそれを言ってしまったらかっこよくない。背中を見られる年齢になってきましたからね。ちゃんと未来のあるところを見せて、聞いてくれる人にもついてきてもらいたい」(谷中)
「僕も子どもが生まれた、というのがあって、やっぱり子どもがいたらNo Futureとはいえないよね(笑)。(茂木がヴォーカルを務めた)2曲目の『女神の願い』で、“狂い始めた世界でも”という歌詞があるけど、そんな世界で子どもたちに未来を伝えるにはどうしたらいいんだろう? やっぱり僕らには音楽しかないよね。この歌詞は、僕が歌うことに決まってから谷中さんが僕だけに似合う服を作るみたいにオーダーメイドで作ってくれたんだけど、子を持つ身としては本当にピンとくる。だから軽く受け入れられたくない、という気持ちがすごく強くなって、そのために“Perfect”っていう気持ちもあるんだよね」(茂木)
アルバムを通して聞くと、そんな思いが確かに伝わってくる。まるで“勇気を知恵で”くるんだような、分厚くて優しくて、力強い音。
「そうだね、そんな思いをいかにスカパラらしく、キャッチーにポップにくるむかっていう挑戦があったね。チャレンジとポップのバランス。そこにはすごく注意を払ったね、うん」(茂木)
「パーフェクトというのは、統計的にも物理的にも本当はなかなかありえないんですよ。でも気持ち的に“パーフェクト!”って言える瞬間、強さっていうのが音楽にはある。最高だね、完璧だね、って言えて、それを信じてくれるお客さんがいて。僕は、そういう完璧にも種類がたくさんあってもいいんじゃないかってここ数年ずっと考えていたんですよ。晴れには種類がないのに、雨には種類があることでも分かるように、ネガティブな負荷がかかると歌詞って簡単にできちゃうし、ストーリーも簡単に生まれる。でもそうじゃないやり方もあるでしょ、と。明るくて楽しくて、でもさらに集中力を出していく、みたいなそういうとんでもない方向があってもいいじゃないかと。だから歌詞は、例えば絵本やマザーグースの持つシンプルで誰にでも分かる骨組み、普遍的な強さのある言葉を選ぶように心掛けました」(谷中)
聞けば聞くほど味の出る1枚。それだけに語る言葉は汲めども汲めどもつきることがない。しかし、このアルバム、ひとつ問題があるとしたらライブが大変そうということかも。
「そうなんですよ。もうその日その日でパーフェクトを目指して集中してやるしかない。スリリングでしょうね。これまでのツアーとは違ったものになるだろうし、僕らもどこまでできるかまだ分からない。でもそこのところを見に来てくれれば、きっとFutureが見られるかも(笑)」(茂木)
「どんなFutureがあるか分からないし、パーフェクトって実際できるかどうか分からない。でも、具体的な目標を持っていても人はブレちゃうんだよね。だからこそ、パーフェクトっていう目標を今年はしっかり持って、それを軸に一生懸命がんばっていきたいと思いますね」(谷中)
NEW ALBUM『Perfect Future』にこめられた思い。そして、その“実現”に向けたライブツアー。スカパラの、一筋縄ではいかない、新しい姿を見ることができるだろう。
(本紙・土屋季之)
『Perfect Future』
初回限定盤CD2枚組:3200円(CTCR-14568〜9)/通常盤CD1枚:3000円(CTCR-14570)初回限定盤のDISC 2には、2007年のヨーロッパツアー時に出演した「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の貴重なライブ音源8曲を収録。
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