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18年に渡る不遇の時代を経て、その大学病院内科医は世紀の発見をする。三上博史にとっても、鈴木という主人公の役作りは難しかったということだ。
「イントロダクションとなる1話では作り切れなかったんですが、2話の台本があがって、見えてきたものがあったんですよ。それまでしがない内科医だった男が、ガンの特効薬を発見したことで急に有頂天になるんですね。一夜にして世界が変わることで、彼は想像もしていなかった夢を見てしまう。自分はもう誰にもへつらわなくていい、海外での研究だってできる。そこから逆算することでやりやすくなっていったから、2話が僕の中では一番ポイントになったかもしれないですね」
三上の役を作り上げる話には引き込まれるものがある。なめらかな声と柔和な表情の中にも、役者への愛情がほとばしる。
「撮影中に、雑誌の対談で初めて脚本の井上由美子さんと話しをする機会があったんですけど、そのときに井上さんが僕の役を“鈴木君”と呼んだんですよ。そうか、鈴木君なのかと。そのころはまだ最後の微調整で悩んでいた時だったから、これはすごいヒントだと。鈴木でもなければ、鈴木先生でも鈴木さんでもなく、井上さんの中では鈴木君。どこか大人になりきれていないところや情けないところを頭の中に描きつつ書かれているんだなと分かったので、あとは楽に作っていくことができましたね。ひとつの色に決めず、シーンごとにピースをはめていけばパズルが完成するように、すごくお茶目になったり、人がよくなったり、悪くなったり、罵倒してみたり、フォローしてみたり。普通テレビドラマではこんなにばらけたことはやらないだろうっていうくらい、ばらけられるだけばらけて演じる。それが2話ではすごく出てると思いますね」
監督の河毛俊作氏から聞いた、「今回はアル・パチーノじゃなくてダスティン・ホフマン」という話も頭の中に残っていた。それが三上の中で「鈴木君」という言葉とつながった。
「いろんなところで話をこそっと聞いては、あ、そうなんだと。でも、難しいですよね。とってもデリケート。役者って、誰にでもできて誰にでもはできない難しい仕事なのかと最近また思い始めてますね」
すべてのガンに効く特効薬を発見するという大前提に関しても、三上はさまざまに考察をめぐらせる。
「モチーフは何でもよかったと思うんですけど、“こうであったらいいな”というところで終わらせたくなかったんでしょうね。ガンの特効薬を見つけたことは素晴らしいが、果たして人類はそれで幸せになれるのかと。今回、井上さんはそこまで描こうとしてると思うんですよ。これで寿命が20年延びたとして、100歳まで幸せに生きる覚悟をどれだけの人がしているのか。願望というのは、なぜ欲しいか、なぜそうしたいのかまで描かないと意味がない。なぜ長生きしたいのか、なぜ宝くじに当たりたいのか。お金が手に入っても不幸になることもあるからね。労働意欲もなくなるし、時間もつぶれない。それも辛いですよね。それに理由が分からなければ神様だって当てようがない(笑)。そういうことを考えながら見てほしいですね。そうすればドラマももっとおもしろくなる」
撮影はまだまだ佳境。「今は忙しくてプライベートは何もできないね」ということだが、リフレッシュ法を聞くと、「時間ができたら山の中にこもる」ということだ。
「1カ月とか山の中にこもって、地元の人とお酒を飲んだりするんですよ。海も好きだけど、山にいると四季を感じるのがいいんですよね。苔が緑になっていったり、唐松が雨みたいに落ちていったり、霜が降りた中を、ダウンを着ながら散歩したり」
ところでパンドラの箱である。ドラマの鍵でもあるが、箱に残っていたのは希望なのか絶望なのか。三上博史はこう思っている。
「それが希望であれ絶望であれ、どちらでもいいように思いますね。僕なんか自分勝手な人生だし、すべてを受け入れた上で、あ、これもよし、という境地に立てたらいいかな。だから、何が残っていてほしいとも思わない。個人的には中庸ということにすごくひかれていますね」
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