
vol.353
聖火リレー各地で抗議行動
チベット情勢の緊張が続く中、6日、2012年五輪開催地であるロンドンで50キロのコースを約80人がつなぐ北京五輪の聖火リレーが行われた。厳戒態勢が敷かれたコース沿道では人権団体など1000人以上が激しい抗議活動を展開、聖火を奪い取ろうとした活動家ら35人が逮捕された。
午前10時半に「サッカーの聖地」と呼ばれるウェンブリー競技場を出発した聖火は、市民ランナーや名物の2階建てバスによってトラファルガー広場やロンドン五輪開催予定地などを移動し、最終地点のノース・グリニッジを目指した。
コース沿道のデモ隊がチベット“国旗”を掲げて「チベットに自由を」「中国はチベットから出ていけ!」と叫ぶ中、警官隊が聖火ランナーを厳重に取り囲む形で伴走。しかし沿道からは聖火を消すための薬剤が投げ込まれたり、興奮した人権活動家らが警官隊に取り押さえられるなど混乱が続いた。抗議活動の標的にされていた傅瑩駐英中国大使はコースを一部変更してリレーに参加した。
7日にはパリでデモ隊の激しい妨害にあった。仏当局は混乱を避けるため少なくとも3回、聖火を消してリレーを中断。フランス通信(AFP)によると、リレーは約3分の2を進んだ国会議事堂前で打ち切られ、終着地までバスで運ばれた。この騒ぎで負傷者も続出し、28人が逮捕された。
約3000人の警察官が厳戒態勢を敷く中、聖火は7日昼過ぎにエッフェル塔を出発。凱旋門やシャンゼリゼ大通りなどを五輪メダリストら約80人がリレーし、約28キロ先のシャルレティ競技場を目指した。
聖火の周囲には数百人の警備員を二重三重に配置し併走。その外側をオートバイ65台が守り、上空にはヘリコプター、セーヌ川には警備ボートが行き来した。
沿道のデモ隊は叫び声をあげ、「天安門1989−ラサ2008」などと書かれたプラカードを掲げて中国の人権弾圧に抗議した。デモ隊と警官隊はリレー開始から200メートルで衝突し、安全上の理由で聖火が消され、混乱が収束するまで伴走するバスの中に移された。こうした衝突は少なくとも3回発生した。AFPによると、主催者側は、バスの中に、3月にギリシャで採火した炎が保管されており、聖火の正当性に問題はないことを強調した。
シャンゼリゼ大通りでは、機動隊の大型車両に守られた聖火が近づくと沿道から大ブーイング。一部地域では、警官隊が催涙弾を使用した。沿道の警察官らは、デモ参加者が掲げる“チベット国旗”をたたむよう指導。支援者らは怒りをあらわにして各所で騒然となった。
サンフランシスコ直前でコース変更
[サンフランシスコ ロイター]北京五輪の聖火リレーを翌日に控えた米サンフランシスコで8日、大勢のチベット支持者が中国政府への抗議デモを行った。デモ参加者の多くはチベットの旗などを掲げ「中国は恥を知れ」などのスローガンを繰り返し、中国領事館の前でも抗議行動を行った。
一方、サンフランシスコのニューソム市長は、すでに聖火リレーが行われた英仏両国の当局者らと連絡を取って抗議行動への対応方法について協議していることを明らかにした。パリやロンドンでは激しい妨害に遭った聖火リレーだが、同市長は「このイベントにかかわる困難への警戒は怠っていない」としている。
米国で唯一の聖火リレー中継地であるサンフランシスコには、大勢の人権活動家が集まった。
夜に行われた集会には、米俳優のリチャード・ギアさんや南アフリカのデズモンド・ツツ元大主教も姿を見せた。
しかし、9日になると、主催者側が混乱を回避するため土壇場になってリレールートを全面的に変更し、待ち構えていた多くの中国人サポーターや抗議者を戸惑わせた。
青いユニフォームに身を包んだ長身の中国の警備関係者らに囲まれた最初のランナーは聖火を高く掲げ従来の出発点をスタートした。
だが、ほどなく一団は水辺の巨大な倉庫へと消え、1時間後に倉庫から3キロ以上離れた幹線道路に姿を現し、見物客らを驚かせた。
チベットの旗を持ったカリフォルニア州の高校教師(30)は「卑劣だと思う。市内を聖火リレーできないのなら、誰も五輪を応援しないということだ」とコメント。また、シリコンバレーで働く中国人エンジニアは「裏切られた気がする。リレーは、中国が五輪を開催することを世界に示すものだと思うからだ」と語った。
サンフランシスコは中国系米国人が多く、多くの人が聖火リレーを誇らしげに待っていた。