
vol.353
日銀総裁人事 白川氏所信聴取「内外ともに多くのリスク要因を抱える」との見方
日銀総裁への就任前日の8日、白川方明氏は所信聴取で、日本経済について「内外ともに多くのリスク要因を抱える」と慎重な見方を示した。“市場との対話力”が問われる総裁として、どんなメッセージを発信するのか。市場関係者はその発言に耳をそばだてた。
景気認識
「先行きは当面減速するものの、その後は緩やかに成長する可能性が高い」
国内景気の現状について、「世界経済の減速やエネルギー、原材料価格の上昇による中小企業の経営環境の悪化」という下振れ要因を挙げ、足元では、減速しているとの認識を示した。
さらに最大のリスク要因として、米国のサブプライム住宅ローンに端を発する「深刻な国際金融市場の動揺」を挙げた。特に、米国経済の現状については、「1930年代の大恐慌以来の深刻さ」との強い危機感を示した。
ただ、日本経済の先行きについては、「緩やかに成長する」という従来の日銀の判断を踏襲。サブプライムショックの影響についても、「日本の金融市場で混乱は生じておらず、相対的に安定を保っている」と述べ、日本経済の足腰の強さを強調した。
金融政策スタンス
「予断を持つことなく、見通しの蓋然性と上下両方向のリスク要因を注意深く点検する」
金融政策に精通した日銀マンらしく、福井俊彦前総裁と同様に“言質”をとらせない安定した発言が目立った。
政策運営については、「経済の先行きは常に不確実性に満ちており、幅広く情報収集に努め適切な政策決定を図る」と語り、リスクの点検を重視する姿勢を強調した。ただ、「足下の動向だけでなく、中長期的なリスクについても十分な目配せをする」と指摘。インフレや市場の規律の緩みなど、超低金利を長期間放置することによる副作用を念頭に、日銀マンの悲願である金利正常化にも意欲をみせた。
副総裁からの緊急昇格や50代と若いことを理由に、指導力を不安視する声があることについても、「政策委員会の議長として必要なリーダーシップを発揮する」と反論し、気骨を見せた。
日銀の独立性
「金融政策決定の権限を与え、物価安定の実現に専念させる考え方が金融政策の独立性。中央銀行の行動を律する重要な原則だ」
政治の都合で総裁が空席になるという「究極の独立性の侵害」(エコノミスト)で日銀の信任が大きく揺らぐなか、“繰り上がり総裁”の白川氏が政府・与党に毅然とした態度で臨めるかを不安視する声は多い。
これに対し、「歴史を振り返ると、景気や財政、為替レートに対する短期的な配慮が優先された結果、経済が混乱した事例は事欠かない」と強調。京大大学院教授時代に著書「現代の金融政策」をしたためた学者の顔をのぞかせながら、金融政策がゆがめられることの弊害を強く警告した。
(ビジネスアイ)