今週のTOKYO HEADLINE
vol.353
(2008.04/14-04/20)
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Sports vol.353

フォーミュラ・ニッポン開幕記念特集

その興奮、日本最高峰。

日本モータースポーツの頂点に位置する、フォーミュラ・ニッポン。ここでは世界レベルのドライバーたちが1年を通して熱いバトルを繰り広げている。「日本最速」の称号をかけた戦いは、轟音と常軌を逸したスピードの中で極上のドラマを生み出し続けている。これまでなじみが薄かった人でも、サーキットに一度足を運ぶだけでいい。他のあらゆるスポーツとも違う、無類の興奮をそこでは体感できるはずだ。

モータスポーツジャーナリスト
高橋二郎氏がフォーミュラー・ニッポンの熱POINTをナビゲート

  今シーズンのフォーミュラ・ニッポンはレースを盛り上げるための大改革が行われ、期待のニューフェイスも続々と参戦するなど、例年以上の盛り上がりを見せることになりそうだ。モータースポーツ好きならずとも見逃せない、フォーミュラ・ニッポンの2008年。その見どころを、モータースポーツジャーナリストの高橋二朗がナビゲート!

PROFILE 日本モータースポーツ記者会会員。英Autosport誌の日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1989年にはインディ500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。

1.サーキットでは「人間」を見るべし

 モータースポーツは本当に「百聞は一見にしかず」のスポーツです。私は思うんですが、サーキットというのは異次元の世界で、ゲートに入った瞬間から日常とは違うことが始まるんです。一般社会ではあんなに大きな音を出して、あんなスピードでコーナーを曲がることなんてしないですよね? それをプロのドライバーが見せてくれることによって、一般の人では絶対にできないことを疑似体験できるんです。
 数あるモータースポーツの中でも、フォーミュラ・ニッポンは、真の「日本一速い男」を決める価値あるシリーズです。ここではF1に行ってもおかしくないレベルのドライバーたちがしのぎを削っていて、非常に競争力のあるレースを繰り広げています。
 また、フォーミュラ・ニッポンはミハエル・シューマッハーが認めたレースシリーズでもあるんです。彼はF3000選手権と呼ばれていた1990年に一戦だけスポット参戦(2位表彰台を獲得)をしたのですが、きっとその一戦でどれだけコンペティティブなシリーズかが分かったんでしょうね。後に弟のラルフがF1へ行く前に修行をしたいと言った時、ミハエルは迷わず「日本に行ったほうがいい」と勧めたんです。こうしてラルフは「フォーミュラ・ニッポン」の名称になって初年度のチャンピオンになり、F1にステップアップしていきました。当時はラルフと服部尚貴が最終戦までタイトルを争っていて、両者リタイアという結末でラルフが王座を手にしました。そんなところからも、フォーミュラ・ニッポンのレベルの高さが分かっていただけると思います。
 フォーミュラ・ニッポン最大の魅力は、ドライバーの戦いがクローズアップされているところです。統一のシャーシ、エンジンを使っているのでチームのレベルは拮抗している。そうなると、役者であるドライバーの戦いが重要な意味を持ってくるんです。
 モータースポーツは、そんな「人間」の力を見られることも面白さのひとつです。マシンは速く走るために高度な機械を使っていますが、それをコントロールするのは人間。そういった部分はなかなかテレビなどでは伝わらないので、一度サーキットでレースを見れば、きっと何かを感じていただけるはずです。
 もしサーキットに足を運ぶなら、できれば金曜日の公式練習から見てほしいですね。金曜日の練習走行ではドライバーが限界を超えた走りにチャレンジしていたりと、予選、決勝ではできないさまざまなトライをしているんです。チーム全体の動きから雰囲気の良さが分かったりもするので、公式練習からレースを見れば、モータースポーツを戦う「人間」の魅力に気付いていただけると思います。
2.ノックアウト方式の予選は見ごたえアリ

 これまでフォーミュラ・ニッポンでは45分×2セッションの予選を行っていましたが、今シーズンからはノックアウト方式になります。 
 これはF1と同じ方式の予選で、20分間の第1セッションで上位15台が第2セッションに進みます。その後10分間の第2セッションを行い、上位8台が第3セッションに進出。そして最後の第3セッションでポールポジションが決まります。
 この間、F1開幕戦でライコネン(フェラーリ)がマシントラブルで第2セッションに進めなかったことがありましたが、そういった危険性があるからノックアウト方式は見ものですね。セッション中のどこでスパートをかけるかという戦略性も順位に関係してきますし、予選から各チームの戦いは見逃せないですよ。
3.「パドルシフト」導入でレースが変わる

 今シーズンは「パドルシフト」というハード面での大きな変化がありました。従来のシーケンシャルシフトではシフトアップ、ダウンの時に片手運転していたところを、パドルシフトによってハンドルを握ったままシフトチェンジが可能になったんです。
 すでにパドルシフトの効果は出ていて、開幕前のテストでも秒単位でラップが速くなっています。正確にシフトチェンジができるようになったことはもちろん、ドライバーがフィジカル面で楽になったことで、レース終盤の戦いにも変化が生まれるでしょう。鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎなどは特にシフトチェンジが多いサーキットですが、パドルシフトの導入によって、コーナーでの攻防は昨シーズンとは如実に変わってくると思います。
4.1大会2レース制&リバースグリッドでレースは激化

 現時点では第5、6戦になりますが、ここで決勝日に2度の決勝レースを行う1大会2レース制の導入が予定されています。この時に注目なのが、GP2というカテゴリーでも採用されているリバースグリッド方式です。この方式では、第1レースの上位8台の順位を2レース目に逆転させて、第2レースのスターティンググリッドにします。つまり、優勝したドライバーは8番手、8位のドライバーはポールポジションからのスタートとなります。
 これによってゲーム性が高まる効果が期待できますし、レースはより戦略性が高まります。また、単純に第2レースでは一番速いドライバーが後ろにいるわけですから、2レース目での追い抜きバトルがこれまで以上に激しくなることは間違いないでしょうね。
5.「ベテランvs新人」の戦いは盛り上がり必至

 今シーズンはルーキーが5人も入ってくるという珍しい年になりました。フォーミュラ・ニッポンを走るドライバーの中で、最年長が本山哲(Team LeMans)の36歳。一番若いのが平手晃平(T.B.N.)の21歳です。「ベテランvs新人」の構図が盛り上がりを見せることになりそうですね。
 ベテランの注目といえば、やはり“Mr.フォーミュラ・ニッポン”といわれる本山は外せないでしょう。彼はこれまで4度チャンピオンを取っていますが、それでも最近では楽に勝てなくなってきています。今シーズンはこのところ静かだった名門ルマンに戻りますから、彼が帰ってまたトップに返り咲くことができるかが見ものですね。そんな本山に続くのが、昨シーズンは優勝のない中でシリーズチャンピオンになった松田次生(TEAM IMPUL)、そして現在最速といわれている小暮卓史(PIAA NAKAJIMA)、さらに“日本一速いフランス人”、ブノワ・トレルイエ(TEAM IMPUL)といったところが第一グループになるでしょう。
 ルーキーで注目したいのは平手と伊沢拓也(ARTA)の2選手ですね。平手は自動車免許がなくても競技ライセンスを取れるようになった第一号世代のドライバーです。彼は国内ではフォーミュラ・トヨタぐらいしか出ていないので、どういう形で日本のトップフォーミュラの戦いに挑んでくるかに注目したいです。
 そして伊沢は海外経験もありますが、フォーミュラ・ドリームから出てきた選手。平手がトヨタなら、伊沢はホンダに育てられたドライバーといっていいでしょう。彼はF3で上位に入って、去年はSUPER GTにも抜てきされている。この2大メーカーの育成プログラムから出てきた2人には期待が集まっています。
 ただ、ルーキーは序盤で苦しむと思うんですよ。テストではいいタイムを出していますけど、彼らが戦う相手はどのサーキットでも目をつぶって走れるような猛者たちですから。それにレース後半、自分がどうなっているのか、タイヤがどうなっているのか、マシンがどうなっているのかは体験したことがない。そういう意味でルーキードライバーの精神力も試されるシーズンになるでしょうね。
NEXT RACE
Rd.2 5月10、11日(土、日)鈴鹿サーキット http://www.mobilityland.co.jp/suzuka/
フォーミュラ・ニッポン最新情報は… http://www.f-nippon.co.jp/をチェック!


井出有治 Special Interview

井出有治が、完全復活をかけた戦いに臨む。日本屈指の実力派は、変革イヤーのフォーミュラ・ニッポン開幕を前にリラックスムード。その穏やかな表情はまるで、この先に待つ激闘の日々を心待ちにしているかのようだった。

「これまでの経験を生かしてチームを作り上げていきたい」

――昨シーズンは表彰台が第5戦の鈴鹿で1度。今年は完全復活への期待がかかるシーズンになります。

「去年はなかなかシングルに入れるところまで持っていくことができなかったので、今年はもっと高いレベルで走れるようにしていきたいですね。チームの雰囲気はすごくいいので、今シーズンは僕も期待しています」

――新しいシーズンはどんな意気込みで臨まれますか?

「今年はARTAの体制もけっこう変わったので、そういう部分も含めてチームを作り上げていく感じになりそうです。自分はこれまでいろんなチームでやってきたので、その経験を生かしたいですね」

――今シーズン行われたさまざまな改革の中で、井出選手にとってやりやすさを感じるものは?

「パドルシフトは僕にとっては大きいです。フォーミュラ・ニッポンはハンドルが重くてドライバーにかかる負担が大きかったんですけど、手元でギアチェンジできるようになったのはすごく助かります。それに、パドルシフトは単純にかっこいいじゃないですか(笑)。やっぱりトップフォーミュラはシフトレバーじゃなく、パドルシフトでやることが大切ですよ」

――ルーキーの伊沢選手とコンビを組むことになりましたが、印象は?

「彼とはクルマの話をしたり、良い形でコミュニケーションができています。僕も優しい先輩だと思いますし(笑)。自分もフォーミュラ・ニッポンでデビューした年は不安でしたから、彼と一緒にいると良い意味で初心に戻れますね」

――今シーズンは他チームにもルーキーが入ってきたりと、「ベテランvs新人」の構図もあります。これまで苦労を重ねながらキャリアを積んできた井出選手だけに、意地を見せたいという気持ちは強いのでは?

「けっこう僕って楽して生きてきたように思われるんですよね(笑)。まあ、そういう気持ちの部分では誰にも負けないという思いでこれまでやってきています。それにドライバー1人では何もできないので、周りの協力があってこそ走れているという気持ちも忘れてはいけないですね」

――ところで井出選手が「すごい」と思うドライバーはいらっしゃいますか?

「コース上で“勝てない”ということではないんですけど、ブノワ(トレルイエ)はおかしくなった犬みたいな感じですごいですよ(笑)。IMPUL時代にチームメイトだった時の話ですけど、チームのミーティングで『タイヤが厳しいから最初の10周は抑えていこう、分かったかブノワ』って言われて、彼も『はい』って答えたんです。なのに、スタートしたら全開でいっちゃって。案の定、10周後にはタイヤが終わってました(笑)。レースが始まると、もうスイッチが入っちゃうんでしょうね」

――それは強烈ですね(笑)。もっと面白い話もたくさん出てきそうですが…(笑)、最後に読者の方にメッセージをお願いします。

「フォーミュラ・ニッポンは1秒の間に10台入ってくるような激しいバトルが魅力ですし、クルマ自体も鈴鹿でラップタイムが1分40秒を切ったりと、今まで以上に速くなっています。今シーズンは高いレベルのレースになると思いますので、ぜひサーキットに来ていただいてフォーミュラ・ニッポンの面白さを知ってもらえればうれしいですね」

こちらは米国最高峰! 「INDY JAPAN 300 mile」は4・17〜19開催

 日本最高峰のモータースポーツがフォーミュラ・ニッポンなら、米国最高峰のそれはインディカー・シリーズのことを指す。
 今年で92回目を迎える伝統のINDY500を頂点にした同シリーズは、シーズンの大半をオーバル(楕円形)コースで戦う。その魅力はなんといっても圧倒的なスピードだ。複雑なコーナリングがないため、オーバルレースでのマシンの平均時速は300キロを超える。また、マシンの性能差が少ないため頻繁に起こるサイド・バイ・サイド、テール・トゥ・ノーズのバトルは、ロードコースでのレースを見慣れている人には少々刺激が強すぎるぐらいかもしれない。
 今シーズンの注目は、なんといっても期待の日本人ドライバー・武藤英紀のフル参戦だ。
 武藤はフォーミュラ・ドリームでのシリーズタイトル獲得(2003年)、SUPER GT優勝(2006年)など輝かしい実績を引っさげ渡米。昨年はステップアップカテゴリーであるインディ・プロシリーズで2度優勝し、インディカー・シリーズにステップアップした。
 そんな実績もさることながら、武藤が名門アンドレッティ・グリーン・レーシング所属になったことも話題になっている。同チームに所属していたダリオ・フランキッティは昨シーズンにシリーズチャンピオンを獲得。その後、NASCARに転身したため、空いたシートに武藤が大抜てきされたのだ。そのすごさをMLBで例えるならヤンキースの松井秀、レッドソックスの松坂といったところだが、40万人の観衆が詰めかけるINDY500は文字通りアメリカの国民的行事。スケールの大きさでいえばMLB以上ともいえるだけに、武藤の活躍に期待しないわけにはいかないだろう。
 これまで誰も成し遂げられなかった「日本人初優勝」への期待度は過去最高潮。開幕戦では無念のリタイアに終わったものの、凱旋レースとなるINDY JAPANで、武藤が日本とアメリカ全土を驚かせるような快心の走りを見せることができるか注目だ。

INDY JAPAN 300 mile
【日程】4月17〜19日(木〜土)【会場】ツインリンクもてぎ【URL】http://www.mobilityland.co.jp/indyjapan/


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