
vol.354
後期高齢者医療制度の「天引き」スタート
75歳以上が対象の後期高齢者医療制度(長寿医療制度)で、保険料を年金から天引きする「特別徴収」が15日、始まった。各自治体には苦情や問い合わせの電話が殺到し、窓口には不安を訴える高齢者が多数訪れるなど、終日混乱。「4・15ショック」に備えていた職員らは対応に追われた。
東京都中野区では午前8時半の開庁と同時に、問い合わせに来た高齢者が担当窓口に詰め掛け、「なぜ保険料から天引きするんだ」「保険証が届いていない」と語気を強める場面も。豊島区では朝から電話が鳴りっぱなしで、通常業務も手につかない状態となった。
自治体側のミスも相次いで判明。千葉県船橋市では対象者外の182人の年金から計313万6400円を誤って引き落とした。埼玉県でも32人から計18万7900円を余分に徴収したほか、志木市と鷲宮町で対象外の49人から計56万7300円を誤徴収。山形県でも鶴岡市などで計36人約27万円の誤徴収が判明した。
また16日には、3月まで勤務先の健康保険組合に加入していた現役会社員の場合、新制度への移行で保険料の会社負担がなくなり、負担増となる可能性が高いことが分かった。現役会社員の保険料請求が始まる7月以降、多額の保険料を請求されるケースも想定され、新たな混乱を招きそうだ。
75歳以上の現役会社員は3月まで会社の健保組合や政府管掌健康保険(政管健保)に加入。これらの健保に加入する75歳以上は被扶養者も含め約230万人で、このうち本人が保険料を支払ってきた人は30万人に上るとみられる。
15日の自民党社会保障制度調査会の勉強会でも、制度の周知不足や保険証の大量未着など混乱を招いた厚生労働省の不手際に批判が集中。
勉強会の冒頭、大村秀章・党医療委員長が後期高齢者医療制度など医療制度改革の意義を強調した。
だが、次期衆院選への悪影響を心配したのか、出席者からは不満が続出。「支持者から毎日おしかりの声が届いているが、厚労省が説明していることは本当なのか」(平沢勝栄氏)、「大方の高齢者は保険料が下がるが、伝わっていない。野党が攻撃するのは当然なのに、厚労省はきちんと対処していない」(田村憲久氏)などの意見が相次いだ。
また「後から『こんなはずではなかった』といわれないような仕組みを作ることが大事」(木村義雄氏)と制度の見直し論も飛び出した。
厚労省の担当者は「これまでは保険証と老人医療費受給者証の2枚が受診時に必要だったが、新制度では保険証1枚で済む」などと新制度のメリットを説明するのが精いっぱいだった。