
vol.355
野村証券社員ら3人がインサイダーで逮捕
野村証券(東京都中央区)の中国国籍の社員が業務を通じて知った企業のM&A(合併・買収)などの情報を悪用してインサイダー取引をしていた疑いが強まり、東京地検特捜部は22日、証券取引法(現金融商品取引法)違反(インサイダー取引)の疑いで、同社社員の 瑜容疑者(30)、 容疑者の知人の蘇春光(37)、蘇容疑者の弟の蘇春成(25)の3容疑者を逮捕した。 容疑者は昨年12月まで野村証券の東京本社に勤務し、M&Aなどを扱う企業情報部に所属。現在は香港に赴任していたが、同社は同容疑者を22日付で解雇した。不正取引は約20銘柄で利得総額は約4000万円に上るとみられる。
調べでは、 容疑者はソフトウェア開発会社「富士通デバイス」について、平成19年4月ごろ、大手電機機器メーカー「富士通」が株式交換で完全子会社化するという情報を得て、蘇容疑者らにデバイス社株の購入を指示。事実公表前の同5月8日から24日までの間、富士通デバイス株7000株(約1169万円)を購入した疑い。株価は公表後に高騰し、 容疑者らが高値で売り抜け、490万円の不正利得を得た。
3人はこうした不正な売買を東証1部上場企業を中心に少なくとも21銘柄で行い、約4000万円の利益を得ていたとみられる。製紙業界最大手の王子製紙が18年7月、北越製紙に仕掛けた敵対的TOBの情報も事前に入手し、北越製紙株などを買い付け、売り抜けて不正な利益を得ていた。
監視委の調べで、こうした不正取引はすべて 容疑者が蘇兄弟に指示。兄弟の実名で開設された証券口座のほか、さらに複数の実在留学生の口座を使って取引は行われていた。口座はいずれも野村以外の会社に開設され、不正が発覚しないよう隠蔽を図ったものとみられる。
インサイダー取引は、
容疑者が企業情報部に在籍していた昨年12月まで約2年間続けられ、香港異動後はパタリとなくなっていた。
容疑者は京都大卒。留学生の親睦組織などを通じて、兄弟のうちの兄と知り合ったとみられる。
22日夜、謝罪会見した野村の渡部賢一社長によれば、 容疑者は18年2月に入社。M&Aの提案書を作るなど補佐業務に従事。勤務態度はまじめだった。
渡部社長は、企業情報部員の株取引を禁じていたことなど対策を取っていたことを強調し、誓約書も2回書かせたことを明らかにした。しかし、証券マンとしての最低限のモラルが破られてしまった現実に、「私たちは今朝、調査を受けたばかりで全貌がわかりません」「慚愧に堪えません」と、渡部社長の口は重かった。ただ、自らを含めた責任については「事実確認を待って考えていきたい」と述べるにとどめた。