
vol.355
光市母子殺害事件で犯行時18歳に死刑判決
山口県光市の母子殺害事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われ、最高裁が無期懲役の2審・広島高裁判決を破棄した元会社員の男性被告(27)=事件当時(18)=の差し戻し控訴審判決公判が22日、広島高裁で開かれた。楢崎康英裁判長は「被告は死刑を逃れるために虚偽の弁解をしており、反省の態度はみられない」と述べ、無期懲役(求刑・死刑)とした1審・山口地裁判決を破棄、被告に死刑を言い渡した。
楢崎裁判長は、殺意を否定した差し戻し審での元少年の新供述について「起訴後6年半にわたり黙っていたのは不自然で不合理だ」と指摘した。その上で「甘えたいと抱きついた。想定外の反撃に無我夢中で首を押さえた」とする妻子殺害の弁護側の主張は「変遷があり信用できない」と退け2人への殺意を認めた。乱暴目的でアパートの部屋を訪問して回っていたことも認定した。
犯行が悪質、残虐で死刑を言い渡すべき事件だとした上で、殺害までは計画していなかったことや犯行時の年齢、家庭環境について検討。いずれも死刑回避の理由にはならないと結論付け、「極刑はやむを得ない」と判断した。
事件から9年を経て4度目となる判決で、初の死刑宣告。犯行時18歳だった被告に高裁レベルで死刑が言い渡されるのは、最高裁に記録が残る昭和41年以降3人目で、近年の厳罰化の流れを反映した司法判断。弁護側は即日上告した。
「犯行時の年齢」は基準のひとつにすぎない
判決は、死刑適否の判断に関する昭和58年の最高裁判例「永山基準」の枠内で死刑判決を導き出した。ただ、永山基準の考慮要素のうち、「犯行時の年齢」を特に重視することはなかった。これまでは少年は更生の可能性が高いため、刑を軽くする傾向があった。
しかし、最高裁は平成18年、光市事件の判決で、犯行時の年齢について「死刑を回避する決定的な事情とはいえない」と言及。年齢は、他に8項目ある永山基準の中で、考慮すべき一つにすぎないことを明確にした。差し戻し控訴審判決は「被告の年齢は、犯行の質、動機などを考えると、死刑を回避するのに十分な事情とまでは言えない」と述べ、最高裁判決を完全に踏襲した形となった。
犯罪事実否認が裏目に
被告は、安田好弘弁護士らが選任された18年の上告審から、それまで認めていた犯罪事実について否認に転じた。
死後に乱暴したのは「生き返らせるため」。遺体を押し入れの天袋に入れたのは「ドラえもんの存在を信じていたから。押し入れに入れれば、ドラえもんが何とかしてくれると思った」などと新たな供述を始めた。
判決はこうした供述の変遷を「死刑を免れようと虚偽の弁解を弄しているというほかはない」と厳しく指弾した。
安田弁護士は判決後、「もう一度証拠を検討し直し、正しい判決を出すよう強く求める」と、上告審を見据えた発言をした。
そして翌日、安田弁護士は…
旧住専の大口融資先だった不動産会社に資産の差し押さえを免れるように指示したとして、強制執行妨害罪に問われた弁護士、安田好弘被告(60)の控訴審判決公判が23日、東京高裁で開かれた。
池田耕平裁判長は1審東京地裁の無罪判決を破棄し、罰金50万円(求刑懲役2年)の逆転有罪を言い渡した。安田被告は即日上告した。
判決によると、安田被告は、不動産会社社長(72)=有罪確定=らに、同社ビルの賃料差し押さえを免れる方法として、ビルを別会社に転貸して賃料を移し替える枠組みを提案。平成5年3月〜8年9月、社長らが計約2億円を隠すのを手助けした。
池田裁判長は、社長らの供述などから、ビルの転貸には実体がなく「強制執行逃れが目的なのは明らか」と指摘。
「社長らが提案を誤解したとは考えがたい」として、安田被告が強制執行を免れるために提案したと判断した。
しかし「社長らの実行行為を容易にした幇助犯にとどまる」と共謀関係は否定。その上で「弁護士として巧妙な強制執行逃れの方法を助言、実行させた悪質な犯行」と指弾した。
弁護側は約2100人の弁護団を結成し、「事件は捜査当局が作り上げた」などと無罪を主張。1審判決は「枠組みは適法な再建策だった」として無罪を言い渡していた。