
vol.356
夫殺害事件の歌織被告に懲役15年
東京都渋谷区の外資系金融会社社員、三橋祐輔さん=当時(30)=の切断遺体が見つかった事件で、殺人と死体損壊・遺棄の罪に問われた妻の歌織被告(33)の判決公判が4月28日、東京地裁で開かれた。河本雅也裁判長は「犯行時には精神障害を発症していたが、責任能力に影響はなかった」として歌織被告の完全責任能力を認め、懲役15年(求刑懲役20年)を言い渡した。
河本裁判長はまず、関係者の証言などから「犯行前まで祐輔さんのDV(配偶者間暴力)は続いていた」と認め、犯行前にDVはなかったとする検察側の主張を退けた。
次いで、責任能力の判断は「鑑定結果だけではなく、動機や犯行前後の行動などを総合的に検討し、裁判所が判断を行う」とし、鑑定結果に拘束されないとの考えを示した。
河本裁判長は鑑定結果について「信用性に疑いを差し挟む事情はない」として、被告が犯行時に「短期精神病性障害」を発症、幻視・幻聴が生じていたと認定した。しかし、犯行時の幻視・幻聴は犯行を誘引するものではなかった▽犯行動機は理解できる▽犯行後に隠蔽(いんぺい)工作をしている−などの点を指摘。「精神障害は責任能力に影響を与えるほどではなかった」と判断した。
最高裁は今月25日の判決で、精神鑑定について、従来の判断枠組みを維持しつつも「否定する合理的な事情が認められない限り、十分に尊重すべきだ」との初判断を示している。この最高裁判例と、鑑定の結論を否定した今回の地裁判決の整合性については、疑問を呈する声もある。
歌織被告の弁護人は「精神鑑定を尊重すべきだとした25日の最高裁判決に反しており不当」と話した。