
vol.356
原油価格の高騰+暫定税率復活 ガソリンが一気に160円台へ
国民不在の与野党の小競り合いの末、30日、衆院の多数を握る与党が押し切り揮発油税の暫定税率が復活した。原油高騰もあり、レギュラーガソリンの価格は5月から1リットル160円前後に。「混乱のつけを国民に回すことになった」。会見した福田康夫首相はそう話したが、ガソリンスタンド(GS)も消費者も、まさに政治に翻弄された形だ。
GS激戦区として知られる東京都世田谷区。“駆け込み給油”の車列は日付が変わっても途切れることなく、幹線沿いの各店舗は終日、利用客の対応に追われた。日付が変わった途端、値上げに踏み切る店も。しかし、わずか1カ月での価格激変に、どの店からも聞こえてくるのは悲痛な声ばかりだ。
政治への不信を訴える声は強い。エネオス系列のGS店長は「先週末から給油台数はいつもの3割増しだが、結果的に今月は約150万円の損失。コロコロと値段が変わり困るのは消費者や経営者。私たちには何の得もなかった1カ月」と憤る。
他店との価格競争に対応しきれず、経営難から営業をやめる店も。都内で3店舗を展開していた独立系GS会社の社長は「40年間経営してきたが今月いっぱいで撤退する。薄利多売の業界で、残っていくのは安くガソリンを仕入れられる大手だけ」と力なく話した。
一方、利用者も安いガソリンを求めて右往左往した。日付が変わる直前には「間に合うのか」と店員に詰め寄る客も。世田谷区のGSを利用した会社員(43)は「待っている間は落ち着かなかったが、値上げ前に給油できてよかった」と話した。
駆け込み需要で大わらわ
29日、全国のガソリンスタンド(GS)でガソリンの駆け込み需要が発生し、石油元売り各社に、30日配送を求める大量の注文が相次いだ。新日本石油には平日の1.7倍超、出光興産には昨年の2倍近い発注がされるなど、元売り各社は対応に追われた。
新日石には、30日に配送を求めるGSから「通常の平日比で7〜8割増」の注文が殺到。同社の配送能力を超えたため、配送量の削減や先送りなどの調整を余儀なくされた。また出光は前年同月比で1.9倍の受注。ジャパンエナジーも配送能力を30%近く超える注文があった。「28日が1.3倍、29日は1.55倍となっており、駆け込み需要は鮮明」(出光)という。
元売り各社は「29、30日は前年同日比の40%程度の駆け込み需要がある」(新日石・中村雅仁常務)とみて、通常の1.2〜1.5倍程度の配送体制を整えていた。だが、東京都江東区の新日本石油系列のGSでは午前中から給油待ちの車列が途切れず、通常1日2回のタンクローリーによるGSへの配送を3回に増やして対応した。
第一生命経済研究所の試算では、暫定税率復活による1世帯当たりの負担増は全国平均で月1838円。原油高による3〜7円前後の卸価格引き上げが加わると、家計の負担額はさらに増えることになる。