
vol.357
MSがヤフー買収から手を引く 独自戦略でグーグルを追撃
ソフトウエア世界最大手の米マイクロソフト(MS)は3日、インターネットサービス大手ヤフーに対する買収提案を撤回すると発表した。MSは提案から約3カ月の膠着打開を目指して、総額446億ドル(約4兆7000億円)の買収提示額を約50億ドル上積みしてぎりぎりの交渉を続けたが、合意に至らなかった。MSによる買収提案は、検索連動広告で約6割のシェアを握るグーグルを、2位のヤフーと3位のMSが手を組んで追撃する狙いだったが、買収頓挫でグーグルの背中は遠のき、年間10億ドル(約1040億円)と試算されたコスト削減計画も水泡に帰した。
来日したMSのビル・ゲイツ会長は7日、東京都内で記者会見し、インターネットサービス大手のヤフーの買収提案について「それぞれが独立した方向を追求すべきだという結論になった」と述べ、ヤフーに対する再度の買収提案に否定的な見解を示した。また、検索市場で米グーグルに依然として引き離されていることに関連し「(検索ツールの)新技術を近く披露する」と述べ、新技術などを通じ同事業の巻き返しを図る考えを示した。
MSは、1株当たり31ドルという当初の買収提示額をこのほど33ドルに引き上げ、ヤフーとの大詰めの交渉に臨んだ。しかし、ヤフーは37ドルを要求。MSは多大な負担を強いられるとして最終的に買収を断念した。
ヤフーはMSが今年2月に発表した買収提案額、446億ドルを「過小評価」と拒否。MSが通告した4月26日の合意期限を過ぎ、MSは敵対的買収も辞さない構えだったが、その場合、ヤフーの人材流出が進み、提携効果が得られないと判断した。
一方、ヤフー側はMSによる買収断念について、MSが企業価値を「過小評価しているという確信は変わらなかった」との声明を発表。ヤンCEOは「改革に集中できる」とMSの撤退を歓迎する考えを示した。
ただ両社とも、ネット事業の中心となった検索サービスでは首位のグーグルに水を開けられており、MSの買収撤回はヤフーにとっても“いばらの道”が続くことを意味する。
ヤフーと、MSのネット事業「MSN」はともに、さまざまな情報やサービスを原則無料で一元的に提供し、広告収入で稼ぐ「ポータル(玄関)サイト」のビジネスモデルが中心だ。
これに対し、グーグルは精度の高いキーワード検索と、検索結果に関連した広告を的確に表示する機能を組み合わせて躍進。検索を最も価値が高いネット・サービスへと昇華させ、無料コンテンツを並べるポータル型ビジネス時代の終焉を告げた。
ヤフー経営陣は今後、MSによる買収を上回る企業価値や株価の向上策を求められる。しかし買収提案直前から約5割も跳ね上がった株価は米国市場で急落する可能性が高い。低迷する業績の急速な改善も難しく、株主が経営責任を問う場面も予想される。勢いを増すグーグルに対抗するためには、MS、ヤフーとも他社と手を組むことが近道。今後も両社を軸に、ネット関連業界では買収、提携といった再編圧力が続く。近い将来、再びMSがヤフー買収に乗り出す可能性も否定できない。
(ビジネスアイ)