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「それで波に乗れるところまで行きたいと言ったら、東京だと1時間以上かかるって。しかたなくあきらめた(笑)」 社会派からラブコメまで幅広い作品に出演、最近では『サンキュー・スモーキング』での印象的な演技で、改めて評価を受けた実力派。今回は超大作『ダークナイト』で、バットマンから信頼を受ける正義の人、ハービー・デントを演じる。 「実はこの映画のスタッフやキャストのほとんどが、インディペンデント映画出身者なんだ。だから彼らといると “いかにも大作映画の現場にいる”という感じはしなかった。でももちろん、すごいカーチェイスがあったり、いろいろな小道具があったり、そういうものはさすが大作感があった。一番お金がかかったのは、シカゴの街を全部閉鎖して撮影したことだろうね(笑)」 インディペンデント出身者ならではの良さを感じたところというと? 「それはやはり、素晴らしい俳優たちだよ。なかでも今回、みんながずっと言ってたんだ“ヒースがすごいことになってるらしいぞ!”って。僕が病院のベッドに横たわっているところにヒース・レジャー演じるジョーカーがやってくるという、僕とヒースが対峙する唯一の場面。あの撮影をした日は僕にとって最高に幸せな一日だった」 実はアーロン、ジョーカーのメイク誕生の瞬間に立ち会っていた。 「実はリハーサルのときに、僕たちは一緒にトレーラーの中でメイクアップをしてたんだよ。彼は彼の、僕は僕のメイクを試行錯誤していたんだけど、となりでヒースが自分のメイクにいろいろ注文を出していたのをずっと聞いていた。お互いにジョークを言いながら、意見を出し合ったりしたのを思い出すよ。ヒースは、常にI-podを持ってて、トレーラーの中にも音楽が大音響で流れてたっけ(笑)。とにかくクリエイティブな熱気が流れてた。俳優にとってみれば、メイクアップはとても重要で、メイクをすることで声やしゃべり方に変化が起こってくるんだよ。それをお互いに感じながらメイクを仕上げていった。本当にクリエイティブで、楽しかったね」
「僕らは、デントとトゥー・フェイスをまったく別個のキャラクターとしてとらえていた。ハービーは、自分がトゥー・フェイスのような人物になるなんて、その瞬間まで想像もしなかっただろうね。彼が考えていたのは、将来大統領になって、レイチェルと結婚し子供を作って幸せな家庭を築く…そんな未来像だっただろう。あれだけの怒りを感じたのは、そんな未来像があそこまでバラバラに崩れてしまったから」 近年のスーパーヒーロー映画には、実力派俳優が多数起用されている傾向があるが。 「まず言えることは、アメリカンコミックが原作であればすでに認知度があるから、ある程度の成功は見込まれているわけだ。だから誰でも出てみたいよね。監督のほうは予想を超えるポテンシャルのある作品を作りたいと考え、それを実現できる名優たちを起用する。そういうわけで、ロバート・ダウニー・Jr.やエドワード・ノートン、そして本作のキャストたちのような名優たちが出たりする。これら一連のスーパーヒーロー作品の中には、とても知的なものとアクションがうまい具合に合わさっている。つまりみんなの思いが一致する作品でもあるんだ。だからこそみんなが出たいと思うし、それなりの人が集まるんだと思うよ」 そんなアーロンが求めるものは“どんな人物と一緒に仕事ができるか”。 「今回の俳優たちとはすごい信頼があって、相手がちゃんとやってくれるか、というような心配が一切なかった。例えば僕とヒースの、病院でのシーン。正直あの日、僕はどうやって演じようか何も考えてなかった。僕はただベッドに横たわっているだけなんだから、ヒースにリードしてもらって、合わせればいいだろうってね。リハーサルでヒースが、どう体を動かすか、どう内面を表現するかを作り上げていくのを見て、どんどん信頼が高まっていった。相手がどんな演技をするかが分からなくても、信頼から生まれる息の合い方というものがある。例えば僕が手を上げたらそれを彼がパッとつかむ。“ああ、これいいね!”“じゃ本番もやろう”ってね。互いに信頼し合った俳優同士によっていい演技が生まれる、それが最高の現場なんだ」 きっと、ヒースも“一番印象的なシーン”の1つに、アーロンとの場面を上げたのではないだろうか。 「君が直接彼にそれを尋ねることができてたら…ね。彼がここにいてくれたら、どんなにいいかって思うよ」 共演者とのケミストリーを一番に考えるアーロンだけに、撮影終了後に不慮の死を遂げたヒースへの思いは尽きないようだ。これからもその思いがアーロン・エッカートを“現場主義”の名俳優へと導き続けるに違いない。 (本紙・秋吉布由子)
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