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ayuがある意図を持って選曲したこれまでのベスト盤と違って、発売順に並んだシングル・コレクション。ということで、シンプルにどんな曲があったっけ? と、全43曲に身を任せてみた。デビュー当時の楽曲には、今聴くと未成熟さが見えたりもするんだろうな、などと思いながら。が、それはまったくの見当外れ。ayuは最初から、歌詞を書くセンスも、書くべき理由も、きっちり持ち合わせていたのだと思い知らされた。 1曲たりともその領域を侵されているものがないというのだろうか。軸のブレないイチローのフォームのスローモーションのように、浜崎あゆみという確かな軸をめぐる表現の変化が、きれいに軌跡として見えてくる。歌の根底にあるのは、時は移り行くもの、世の中ははかないものという心の静けさを伴う世界観だ。だからこそ、生ある刹那に何を注ぐべきか、どんな美しさを求めるべきか。ayuは常にそのことのみを言葉にしてきた気がする。 初期の曲をたどって思い出されるのが、CD-1収録の「vogue」「Faraway」とCD-2の1曲目「SEASONS」。熱心なファンでさえもう忘れているかもしれないが、ayuはこの3曲を自ら「絶望3部作」と呼んでいた。「白あゆ/黒あゆ」のジャケットで話題となったセカンドアルバム『LOVEppears』をきっかけに、浜崎あゆみが一挙に産業となったころの作品だ。周りの期待というプレッシャーと創作における自分の理想とのギャップに、当時のayuは混乱をきたしていた。後になぜ「絶望3部作」なのかを語りながら、現場からの逃亡劇など、数々のエピソードを明かしてくれた。 しかし、この大きな壁を越え、初にして驚くほどのクリエイティビティを見せたツアーを遂行してから、ayuは一気にたくましくなる。CD-2の2曲目「SURREAL」の「背負う覚悟の分だけ可能性を手にしている」は、「浜崎あゆみ宣言」と言ってもいい。あの凄みのある歌詞は、その後のayuの生き方を象徴するものだ。「M」から「Voyage」までの連続10曲の作曲にCREA(ayuのペンネーム)が登場している点も興味深い。音源制作により深く関わったことで、ayu自身の音楽的技量が驚異的にアップした時期とも言える。 3年連続レコード大賞という史上初の快挙となった「No way to say」で始まるCD-3の時期になると、活動の中心はツアーとなり、その佇まいは孤高の女性ロッカーといったものになっていく。「No way〜」を最後に賞レースを辞退したことも手伝い、より純粋に創作意欲のかきたてられるものへと突き進んでいけたのではないだろうか。「talkin' 2 myself」、「Mirrorcle World」という最新の2曲における言葉の冴えは、前述の「SURREAL」の「覚悟」を体現し続けている証とも感じられ、あらためて浜崎あゆみという軸の強靱さに感動する。 ボーナス・トラック収録の「Who...」は、シングルではないが、ライブでアンコールのオーラスに演奏される確率がいちばん高い人気曲。ツアー未体験の方は、ぜひオーラスがこの曲のツアーDVDを見つけて、観ていただきたい。「これからもずっとこの歌声が あなたに届く様にと」という歌詞が、より胸に届くようになるはずだ。 DVDといえば、同梱されているDVDは本当に激レア。特に2003年、ZEPP TOKYOで行われたファンクラブ会員限定ライブの模様は必見。デビュー曲「poker face」やセカンド「YOU」を、こんなふうにラインアップに入れているのは、後にも先にもない。ダンサー顔負けの本格的なダンスを見せるようにになったのも、このタイミングからだったと思う。ayuの歴史をたどる上で貴重な映像だ。 なんにせよ、 この10年間の仕事は、質、量ともに驚異的。その軌跡は、浜崎あゆみの生命力そのものと言えるだろう。 (本紙・藤井美保)
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