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グランドビーバーによる調査。管内はムッとする暑さと湿度で、足元はツルツル。水位は30cmほどだったが、カメラマンも安全帯を着装していても、何度か転びそうになった。手前がグランドビーバー(写真左)。分解されてトラックに積まれたグランドビーバー(写真右上)。孔内で組み立てられたグランドビーバーの機体。高さは1.8mまで調節でき、重さは200kgを超える(写真右下)
グランドビーバーの操作は、トラック内のコンソールで行う(写真左)。本体の操作とライト・カメラの操作もある。モニターに映る映像に、パネルで補修個所などの指摘を入れていく(写真右)。知識と熟練が必要な作業を、源さん(写真中央)はなんなくこなしていく
「25年やってるけど、こんなにひどいのは初めて見ました」。都内某所のマンホール(人孔・じんこう)での補修作業の現場。作業責任者を務める管清工業株式会社の阿部さんが現場の説明をしてくれる。「隣にメッキ工場があって、クローム処理で出る硫化水素の濃度が高く、そのため損傷がひどいんです。もの(マンホール)自体はそんなに古くない……20〜30年なんですがね」。マンホールのコンクリートが腐食し、部分的にすでに土が露出してしまっているところもある。「まあ、これだけひどいと逆にやりがいはあるんですけど」と阿部さんは笑う。
今、日本全体で下水道の総延長は約41万km。東京だけでも1万5000kmになる。そのほとんどがおよそ50年前に一斉に敷設された。コンクリートの耐用年数は50年。実は今、東京の下水道の多くが耐用年数の限界に近付いている。「昔だったら掘り返して交換するんでしょうけど、今はそれもできない」(阿部さん)。水道・下水道含め、ライフラインと呼ばれる“線”は道路の下に埋められている。一番上がガスで、一番下が下水道だ。その他、水道や電線・光ファイバーなどが下水道の上に埋まっているため、おいそれと掘り返せないのが現状だ。それでいてやがて一斉に訪れるタイムリミット。今、下水道の補修は火急の案件なのだ。
この現場では、損傷したマンホールを強化復元する「MLR工法」の作業を行っていた。腐食などで損傷した壁面を、鉄筋を入れたコンクリートで固め、内側に鋳型(モールド)を構築、エポキシ系MLR樹脂を注入し、樹脂とコンクリートを一体化させて強度の復元を図る。掘らずにマンホールを補修できるため、注目を集めている工法だ。この日、敷設された鉄筋のメッシュの上からコンクリートを塗る作業を朝まで行った。狭いマンホールには作業員が1名しか入れないため、作業に時間がかかるのも下水道工事の特徴。すぐ近くにもうひとつ同様のマンホールがあり、合わせて50日ほどかけて補修作業が行われる(年内に完成予定)。
こうした下水道の現状を踏まえ、東京では5年程前から幹線下水道の本格的な「調査」が始まっている。その調査を支えているのが「グランドビーバー」だ。従来の小型自走式テレビカメラでは、水量が多い個所や広範囲な調査ができなかった。その欠点を補うように開発されたグランドビーバーは、ズームカメラを搭載した大型の機体で、1.2〜4mの管径に対応。最大で2000mのケーブルを搭載し、遠隔操作で広範囲の調査が可能だ。
今月、管清工業は1970年代に地上河川から暗渠化した、高さ4.7m、幅3.7mの都内の幹線下水道を調査している。グランドビーバーはトラックと一体のシステムで、分解された機体をマンホール内に降ろして組み立て、トラック内のコンソールで遠隔操作する。住宅地に隣接するこの下水道は水量も多く、流れも速い。管内は時間帯によっても異なるが「夏は涼しく、冬は暖かい」そうで、実際に入ってみるとムッとする温度と湿度。足元はひどく滑る。人が入って調査するには難のある場所だ。こうした場所でグランドビーバーの真価が発揮されるのだ。ただし、操作とカメラを通しての目視には熟練が必要で、操作に免許は不要だが、日本下水道管路管理業協会(JASCOMA)が認定する技士(下水道管路管理主任技士など)の資格を取ることが望ましい。この日の調査を担当した管清工業の源さんはグランドビーバーでの調査キャリア5年のベテラン。「場所にもよりますけど、年々(下水道の状況が)悪くなっているのが分かる。ようやく調査ができるようになりましたけどなかなか追いつかない」と苦笑する。損傷の程度にもよるが、補修の必要が発生した場合、調査結果を都の下水道局に報告し、詳細設計を立てた後に改めて補修調査を行ってからとなるため、1年〜1年半後の着工になるという。「幹線調査でも分かる通り、下水道管理は発生対応ではなく、計画的保全の発想に変わりつつある」と源さんは言う。
高度な技術と熟練度が必要な下水道の維持管理は今、「包括的民間委託」(性能発注式)の時代に入り、民間業者による積極的な維持管理が求められるようになってきている。都内でも一部導入されているものの、本格的な導入は依然少なく、今年度内に公表予定の新しいマニュアルにのっとって、全国的に本格導入される見込みだ。自治体ではなく、会社が下水道管理の“顔”となるため「プレッシャーはあるが、やりがいもある」(前出の阿部さん)と考える会社も数多い。下水道維持管理の技術と設備を持った会社は全国で600社(うち都内は20社強)ほどある。普段意識することのない下水道だが、下水道も大きな水循環の一部であり重要なライフラインだ。“掘れない”東京の下水道の未来を支えるのは、こうした会社の肩にかかっていることを忘れてはならない。
腐食が進むマンホールの内部(写真左)。硫化水素が原因だ。鉄筋のメッシュの上からコンクリートを塗る(写真右上)。この後、きれいにならしたコンクリートの内側にモールド(鋳型)を設置し、樹脂を流し込む(写真右下)。作業責任者の阿部さんは「こんなにひどい現場は初めて」と言いながら「やりがいもある」と意欲的(写真左上端)
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