帰り道がちょっと怖いかも? 佐々木蔵之介らが『幽霊たち』

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撮影:加藤幸広

 ブルー、ホワイト、ブラックと色の名で呼ばれる人たちが、舞台上をせわしなく行き交い、すれ違い、追いかけ、隠れ、時には酒をあおり、眠ってしまう……。佐々木蔵之介が主演する舞台『幽霊たち』が渋谷・パルコ劇場で上演中だ。
 現代アメリカを代表する作家、ポール・オースターによる同名の小説を舞台化したもので、ある男を監視することを依頼された探偵を軸に展開するストーリー。依頼主から部屋も生活費も用意されたものの、観察する相手はというと、毎日本を読み、タイプライターを打つだけ。そして、探偵はその男を延々と観察するしかないのだ。依頼主が「もういい」というまでは。
 見ていると、何やらソワソワする作品だ。セットや配置されている家具に着目すると、上演時間の大半、舞台の上の景色はそう大きく変わらない。それなのに、物語の場面は、ぐるぐるサクサクと次々に変化、そのスピード感を味わっているうちに、ハラハラやドキドキ、切なさややり切れなさ、絶望そして希望と、感情の波が入れ替わり立ち代りやってくる。見ているほうも何だか心が落ち着かない。そんな自分を見られているようで……。
 前半のスピード感から一転、後半はズドンと重いものがのしかかってくる。ゆったりとしたテンポが、佐々木演じる探偵ブルーの背負ったものの重さを効果的に表す。
 ポール・オースターは、作品を通じ、自己について、そして生きる意味について説く。今回それを舞台に仕上げたのが演出家・白井晃。台本は作らず、稽古をしながら、佐々木や奥田瑛二らキャストとともに作品を作り上げたという。
 7月3日まで同所で。