逃走17年 オウム・平田信容疑者が大晦日に出頭

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 平成7年2月に東京の目黒公証役場事務長を拉致して死亡させたとして、逮捕監禁致死容疑で特別手配されていたオウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)が昨年12月31日午後11時50分ごろ、丸の内署(東京都千代田区)に出頭。指紋から本人と確認され、翌1日早朝、警視庁捜査1課が逮捕した。平田容疑者は16年10カ月にわたり逃走していた。警視庁は、残る特別手配容疑者の菊地直子(40)、高橋克也(53)両容疑者=いずれも地下鉄サリン事件の殺人、殺人未遂容疑など=の潜伏先や未解明のままになっている一連のオウム事件について何らかの事情を知っているとみて、その供述に関心を強めている。

 警視庁によると、平田容疑者は一連のオウム事件について「報道で知っていた」と供述。潜伏先などについては説明せず、「他人に迷惑がかかるから言えない」と逃走支援者の存在をほのめかしているという。7年3月の警察庁長官銃撃事件=22年3月に公訴時効=については「私は犯人ではない」と関与を否定した。

 平田容疑者は脱会した元オウム信者をケアし支援している滝本太郎弁護士がブログで出頭を呼び掛けていることを知り、面会を希望。2日に接見した滝本弁護士によると、「長官銃撃事件が時効になり、間違った逮捕はあり得なくなった」などと出頭理由を説明。また3日には「罪のない人があんなに犠牲になったのに、自分が生き延びていることが理不尽だと思った」と東日本大震災が出頭のきっかけになったと語ったという。

 麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(56)については「教祖の死刑は当然」と答え、教団への帰依を否定した。だが、今回の逮捕で麻原死刑囚への刑の執行が先送りされる可能性があり、それが目的ではないかとの見方もある。

 死刑について、法務省は共犯者が公判中の場合、刑を執行しない運用をしてきた。死刑囚が取り調べを受けたり、共犯者の公判で証人尋問が必要になる可能性があるためだ。

 一連のオウム裁判は平成23年12月にすべて終結。麻原死刑囚ら13人の死刑が既に確定した。平田容疑者ら特別手配容疑者3人の存在は「共犯者の逮捕前に法務大臣が命令した死刑執行は適法」との判例から、終結の時点で「麻原死刑囚の執行の状況は整った」(法務省幹部)とされた。

 だが、平田容疑者の逮捕で、終結したオウム裁判が「再開」される見通しとなった。平田容疑者が関与したとされる目黒公証役場事務長事件では死刑囚13人のうち麻原、中川智正(49)、井上嘉浩(42)の3死刑囚の有罪が確定。平田容疑者が起訴されれば、3人の証人尋問が行われる可能性があり、刑の執行も裁判が終わるまでは見送られる公算が大きい。

 一方、今回の平田容疑者の出頭において、警察の情報収集体制と現場の警察官の怠慢ぶりが浮き彫りとなった。

 平田容疑者は最初、警視庁大崎署に出頭しようとしたものの署内への入り方が分からなかった上、自分の手配ポスターも見つからず、署員の姿もなかったため「捜査本部ではないのかな」と思い、同署への出頭をあきらめたという。

 大崎駅へ戻る途中の公衆電話から、警察当局が教団特別手配容疑者の情報提供を求めるフリーダイヤルに電話すると、話し中でつながらなかった。電話は約10回したという。

 その後、「平田信の担当はどこか」と自ら110番。指示された警視庁本部に向かった。同日午後11時35分ごろ、本部庁舎前で警備の機動隊員に「平田信です。出頭しにきました」と告げたが、悪質ないたずらと判断され、丸の内署や近くの交番に行くよう促されたため、歩いて丸の内署に行き名乗り出た。その際「僕って背が高いでしょ」と玄関前にいた女性署員に言うと、「嘘? 本当にそうなの」と驚かれ、署内に引き入れられたという。