戌井昭人インタビューあうるすぽっとプロデュース『季節のない街』脚色・演出

 10月にあうるすぽっとで上演される『季節のない街』はキャストからスタッフに至るまで、「よくこんな座組が実現したものだ」ともいわれるほどの異色の顔触れが揃った公演だ。そのなかでも異能っぷりでは1、2を争うであろう脚色と演出を担当する戌井昭人に話を聞いた。
 戌井は鉄割アルバトロスケットという劇団を主宰し、小劇場の世界では知らない者はいない存在。もっとも世間的には作家としてその名を知る人も多いだろう。先日発表された芥川賞では3度目のノミネートで、見事に……今回も受賞はならなかった。その一連の流れは8月12日に『情熱大陸』で放送されたので、“あーあの人!”と思う人も多いだろう。そう、あの人です。

「新潮社の施設で缶詰しましたって、相当偉そうじゃないですか。でもホントの理由は、編集の人に、“パソコンで原稿を書いてるとエロ動画ばっかり見ちゃうから、パソコンのつながってない環境があるといいのにな”って話をしたら、“それならいいところありますよ。ランもないしネットもつながらないですよ”って。そこに1週間も行ってたら動画も見ないし、“じゃあ行かせてください”って。でも週刊大衆とか買ってましたけどね(笑)。ホントの理由は結構しょぼい(笑)」

『季節のない街』は山本周五郎原作の貧民街の庶民の暮らしを通して『本当の人間らしさ』とは何かを問う作品。登場人物は人間味にあふれ、ひとくせもふたくせもある魅力的な人たちばかり。演じるキャストもそのまま作品から出てきたような個性的な人たちばかり。

「“何これ?”とはよく言われます。あうるすぽっとのプロデューサーの方ともいろいろ話し合って最終的にこのキャストになりました。飯田さんはこの界隈ではちょっとしたスターみたいなもんじゃないですか。山本さんは飲み屋のおっさんの知り合いで、鉄割をこの前見に来てくれた人。映画に1回出たことがあるんだけど、今回が初舞台なんです。江本さんは毛皮族は見たことがあって、客演している舞台も見たことがありました。江本さんも鉄割は見てくれたことがあって。面識はあったんですけど、真剣に話したことはなかったんですが、この前お会いしまして、“好きにやってください”と言っていただきました」

 音楽を渋さ知らズの不破大輔が担当する。

「不破さんとは1999年に風煉ダンスという劇団の『悪漢』という野外公演のときにお会いしました。そのときは1カ月間横浜の空き地でテントを張って泊まり込んでセットを作っていました。あの時は“俺、何やってるんだろう”とか思いながらやっていたんですが、今になってみるとあれがあったから不破さんなんかとも今回やれるんですよね」

 戌井は1995年に文学座付属研究所に入所。研究生に昇進するも退所し1997年に鉄割を結成。1999年といえば、そんな時代。なんのつながりで風煉に出演?

「渋さが好きで、あの人たちに一度鉄割を見てもらいたいと思って招待状を送ったんです。人数が多いと聞いていたんで50枚くらい一気に送ったんですね(笑)」

 招待券を一気に50枚送る人はそうそういない。

「そうしたら不破さんが来てくれたんです。ところがその日は満杯で、受付が帰しちゃったらしいんです。後から“ヒゲの変なおっさんが来て帰しちゃったんだけど酒置いてったわ”って言うんで、その酒を見たら『不破大輔』って書いてあった。“おまえ…これって…、帰しちゃったのこの人?”って(笑)。そのあと今回美術を担当してくれる、風煉ダンスの笠原さんも見に来てくれたんですが、それも風煉の音楽の相談で不破さんに会っときに“出演者がまだ集まっていない”という話をしたら、たまたまそこに鉄割のチラシがあったらしく、“こいつらどうだ”って推薦してくれたらしいんです。まだ見てないのに(笑)。それで呼ばれたという」

 ふと気がついて、戌井に今の肩書きを尋ねると「作家・鉄割アルバトロスケット」と返ってきた。

「鉄割はずっと続けていきたいと思っています。体力の続く限りは。以前は2回公演も平気だったんですけど、けっこう動くじゃないですか。人生であんなに動くことそんなにないんで、動けるようにしていたいなって思って、ボクシングジム行ったり、走り出したりしてる人がいます。作家としては、脚本はつながりのある人から頼まれれば書くこともあると思います。小説は自分の中から出てくるものをこれからも書き続けていきたいと思っています」

 芥川賞は俗に6回まではノミネートされるというから、あと3回。いや次作で受賞するかもしれないか。戯曲も手掛けるとなると岸田戯曲賞という話も出て来るかもしれない。なにかと周囲は騒がしい。しかし現在のスタンスは守り続けていきたいという。

「もうちょっと若ければ、この状況に浮かれて遊んだり、いろいろしたいんですけど、40歳になってそんなになってもしようがないじゃないですか。このまま続けていくことがいいことなんだなって何年か前から思い始めているので、変な動きもしたくないんです」

 鉄割の公演では自ら稽古場を取ったり、チラシを発送したり、劇場入り後に自ら大工道具を持ち建て込みもする。

「今回は俺、とんかちやらなくていいんですよね。そんなことがあっていいのかって思ってますよ。ちょっと手持ちぶさたになってしまうかも(笑)」
(本紙・本吉英人)

『季節のない街』
【日時】10月4日(木)〜8日(月・祝)(開演は木19時、金土月14時、日13時/18時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売)
【会場】あうるすぽっと(東池袋)
【料金】全席指定 一般 3500円/学生2800円(入場時に学生証提示)
【問い合わせ】あうるすぽっと(TEL:03-5391-0751 〔HP〕http://www.owlspot.jp/
【原作】山本周五郎【脚色・演出】戌井昭人
【音楽】不破大輔
【出演】江本純子、飯田孝男、中村彰男、金子清文、古屋隆太、宇野祥平、中島教知、伊藤麻実子、山本ロザ、池袋遥輝(子役)/坂口芳貞 ほか